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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
年末は犯罪の季節編

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153 強盗団と遭遇

 結局、メアリがざとすぎたせいで、観光するどころではなくなってしまった。

 この街の中に得体の知れない奴が最低一人は紛れ込んでいるのだ。


 街を散策すると、たしかに大きな倉庫を持っている大商人の屋敷がいくつもある。ここを狙う奴がいてもおかしくないだろう。


「フランツはどうする?」

 メアリが何でもないことのように聞いてきた。


「どうするって、どういうことだよ?」

「わらわたちは、はっきり言ってオーガルの街と何の関係もない一般人だよ。この街のためにひと肌脱ぐ義務なんてないよね。気にせず、どこかの宿に泊まってぐっすり眠るというのでもいいよ。わらわはそれでフランツが意気地なしとか全然思わない」

 メアリ、どうも煽るような言い方をしてくることが多いんだよなあ。


「それに、仮に強盗団が本当にいるとしても、今晩、事件を起こすかはわからないしね。三日後にやるのかもしれない。強盗団を見張るために何日もこの街に留まってると帰省どころじゃなくなるでしょ」

 なるほど……。それは問題だ……。

 どこの街でも多かれ少なかれ事件は起きてるし、それを俺とメアリで全部解決することなんてできない。俺たちは正義の味方じゃないし、どこかで手を引く必要はある。


「じゃあ、一日だけ。今晩だけ、ちょっと監視するってことでどうだろ? 一日ぐらい徹夜しても、どうせ明日、移動の馬車で寝落ちするだけのことだ」


「うん、じゃあ、今回の落としどころは、そこに決定だね」

 メアリはこくりとうなずいた。

「ちなみにフランツは絶対に無理しないでね。ていうか、フランツは寝ててもいいよ。相手が凄腕の強盗団なら、詠唱してる間に殺されるなんてこともありうるし」

「た、たしかに……」


 見て見ぬふりでいきますと言いづらい雰囲気だから受けてはしまったが、考えてみたら魔法使いがどうにかできる範囲を超えてるのでは……。

「でも、男としてメアリだけ見張りをさせるのも悪いから、俺も参加する……」

「ふふふ、そのへん、フランツは男らしいね。じゃあ、わらわのそばから絶対に離れちゃダメだよ」

 もしや、これって俺が足手まといになってるだけのパターン……。


 しょうがない。メアリが超巨大なゴーレムみたいな姿をしてるなら任せてもいいけど、見た目は可憐な妹キャラなのだ。そんなメアリに強盗団見張れっていうのは、鬼畜の所業に感じる。

 できれば、強さと見た目は一致してほしいな。ああ、家にゴツいゴーレムみたいなのがいたら嫌だから、やっぱり可憐なメアリでいてもらおう……。


「フランツ、悩み多き顔をしてるね。十代ならまだ青春がかぶってるもんね」

「悩みが多いという点には間違いはないな」



 その夜。俺とメアリは夜遅くまでやっている酒場で時間をつぶした。

「うん、やっぱり水がおいしい土地はお酒もおいしいね」

 店の人が、こんな子供が飲んで大丈夫かという顔をしてたけど、メアリはしっかり大人なのでそこらへんの心配はない。子供に飲ませて悪いことしようとしてるとかでもない。


 むしろ、悪い奴を見つけて、とっちめてやろうとしている。


「うぅ……飲みすぎて酔ってきちゃったかな……」

「いや、酔って動けないのは困るぞ! ほどほどにしろよ!」

 店員に水を持ってきてもらって、がぶがぶ飲ませた。


「いやあ、水みたいにするする飲めるお酒だから、かなり進んじゃったよ」

「今夜はとくに気をつけてくれよ。メアリが酔いつぶれたらその時点で作戦終了だからな」


 そして十一時半頃に俺たちは店を出た。

 向かうは倉庫などが多かった商人の屋敷が並んでいるエリアだ。

 居酒屋があったエリアと比べると、人気も少ない。夜中まで営業するような業種じゃないだろうからな。


「さてと、適当なところに隠れておこうか」

 塀から通りのほうにはみ出ている手ごろな木を見つけると、メアリは飛び乗った。これじゃ、どっちが物盗りかわからないな。


 俺そんなにジャンプ力はないので、メアリに引っ張って木に乗せてもらった。これは黒魔法の業務管轄外の仕事だから、やむをえない。


「果たして、強盗団なんて来るのかな」

 昼はメアリの態度にびくっとしたが、今日事件が起こるかというと、なんとも言えない。

 強盗団のほうももし捕まったら厳罰だろうから、相当慎重にやるだろう。無理をせず中止ということだってありうる。


「そこはわらわもわからないよ。けど、この街の空気からして、何かありそうだよ」


 そして、薄暗い通りに誰かがやってくるのが見えた。

 それは頭巾で顔を隠したあの悪徳抜きらしき人物!


 あいつ、本当に強盗団の一味だったのか……。


 しかし、まだそいつは犯罪をやったわけじゃない。歩いてるだけだ。俺たちも待機するしかない。


 その悪徳抜きは路地にさっと身を潜める。

 やはり機会をうかがってるな。まさか、俺がこんなところを目撃することになるとは……。


「気配が急に増えた」

 ぼそりとメアリが言った。


 たしかにぞろぞろと小走りで覆面をした連中がどこからともなく集まってくる。

 さらに、商店の裏口らしき扉が、内側から開けられた。

「よし、用心棒の仕事ご苦労」「さあ、がっぽり盗みましょうぜ。倉庫のカギもあります」

 そんな声がする。


「ああ、用心棒として仲間を商店に入れておいたってことか……」

「これは塀伝いに行ったほうがいいね。フランツはわらわから離れないようにしてね」


 俺たちはその屋敷を目指して走る。


 けれど、そんな俺たちより早く何者かがその開いた扉のほうに走っていく。


 それはあの悪徳抜きだった。

 まさか、俺たちのことに気づいたか?


 俺の肌にぞっとするほどの寒気が走った。

 その原因はあの悪徳抜きだ。恐ろしい空気が出てる!


 俺がわかったぐらいだ。メアリもすぐに厳しい目になる。

「殺気のかたまりみたいなのを発してる。フランツは不用意に動かないほうがいい。かなりやる奴だよ」


 メアリが出なきゃいけないような強敵か……。


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