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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
年末は犯罪の季節編

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150 年末年始のお休み

 俺とセルリア、メアリの三人はその日、社長に年末年始の冬休みの計画表を出した。


「はいはい、たしかにいただきましたよ。今、ここでチェックしちゃいますね」

 ネクログラント黒魔法社は言うまでもなく、大変ホワイトな企業なので、年末年始の休みも余裕で九日間もある。追加の休みがほしい人はさらに休みを取得していい。


「あら、セルリアさんだけお二人の二日前からお休みに入るんですか。別行動ということですよね。意外ですねえ」

「年に一度ぐらいは帰省したほうがいいかなと思ったんですの。ご主人様もぜびそうするべきだとおっしゃってくださいましたわ」


 メアリが少しうれしそうに「今回はわらわとフランツだけでフランツの家に帰省するんだよ」と言った。

 そう、年末年始はセルリアには帰省を満喫してもらうことにした。


 セルリアは尽くしてくれる性格だから、俺と一緒にいてくれと言えばずっとついてきてくれるだろうけど、それでは実家に戻るタイミングがなくなってしまう。

 年が変わる時期ぐらい、家族水入らずで過ごすべきだと思って、俺から提案したのだ。


 それに……セルリアが俺の実家に戻ってくると、あのエロ親父が鼻の下を確実に伸ばすからな……。

 百歩譲ってそれだけならまだいい(もちろん、全然よくはない)。

 しかし、それを見た母さんが親父にイライラして、結果的に実家の空気が険悪になる恐れもある。険悪な実家に帰省するとか、普通に嫌だ……。親に熟年離婚される社会人というのは、普通につらい……。


 なので、今回、セルリアに帰省してもらうのは一石二鳥な作戦と言えるだろう。


 あのエロ親父もメアリには鼻の下を伸ばさな……いや、油断はできないな。やはり、気をつけよう。


「フランツさんはまた馬車であのルートで帰省されるんですよね?」

 社長が尋ねてきた。なんで、そんなことを聞かれたのかわからないのだが。


「はい。帰省にけっこう時間がかかるのが難点なんですよね。まあ、旅だと思って楽しみながら帰ります」


「それでしたら、オーガルという街に途中で一泊するといいですよ。清流が街を流れる、美しいところだそうです」

 オーガルか。地味だけど、観光地と言えば観光地だな。

 でも、それ以上に社長が勧めてくることに何か裏がある気がした。これまでも社長の何気ない一言に様々な意図があったりしたし。


「社長、また、意外な出会いでも仕込んでるんじゃないですか?」

「どうですかねえ~♪」

 社長、とっても楽しそうだな。

「わかりました。じゃあ、オーガルで一泊します」

「のんびりした旅もたまにはいいんじゃないかな。わらわも賛成するよ」


 ふふふっと社長は笑った。

「別に誰かをけしかけるようなことはしませんよ。ただ、フランツさんはフランツさんで『持っている人』なんで、もしかしたらニアミスもあるかもなと思ったんです」

 いったい、どういうことだろう。でも、これ以上聞くのも無粋か。


「よくわかりませんけど、普通に帰省旅行をしますよ」

「はい、もちろん、それでかまいませんから」


 帰宅したあと、ヒントがあるかなと地図でオーガル周辺を見たけど、とくに何も答えは浮かばなかった。



 そして、まず俺たちより早い仕事納めでセルリアが帰省する。

 その前夜。

「リディアさんも自分探しの途中だけど、里帰りはするのかな? もし、出会ったらよろしく」

「お姉様もこの時期は戻ってくるんじゃないでしょうか? でも、お姉様は案外強情なところがありますしね」

 たしかに自分を見つけるまでは家に帰らないとか言いそうな気もする。


「また、お姉様も入れて、楽しみたいですわね」

 その表現に俺はどきりとした。

 あの日の夜は、いや、本当にすごかった……。リディアさんもサキュバスのエリートって感じだった……。


「しばらくお別れですから、ご主人様、今夜は楽しみましょう」

 こんなことを言われて平気でいられる男なんていない。

「わかった。じゃあ、今年最高のセルリアの技術に期待しようかな」

「そう言われてはわたくしも引き下がれませんわね。とろけるような気分を味わっていただきますわよ!」


 公約どおりセルリアにしっかりととろけさせられた。なんでも、美人は三日で飽きるという言葉があるらしいけど、あれは絶対にウソだ。あるいは、その程度の美人でしかなかったんじゃないか。


 そのセルリアが実家に旅立ってから二日後。

 俺とメアリも仕事納めをして、実家へと向かうことになった。


「フランツと二人きり~♪、二人きり~♪」

 もう、出かける時からメアリはやたらとはしゃいでいる。クールな態度をとってることも多いメアリがこんなに感情を表に出しているというのはなかなか珍しい。


「俺としては二人きりを喜ばれすぎると、セルリアが戻ってきた時になんか気まずいんだけど……」

「あっ、わらわとセルリアも仲はいいよ。二人で買い物することも女子会することもあるしね。ただ、それとこれとは別ってこと。ゆっくり、しっぽりフランツと過ごすのもまたいいんだよ」


 まあ、メアリがご機嫌で悪いことは何一つないので、旅を楽しめばいいか。

 何度か、乗合馬車を乗り換えて、オーガルを目指す。少し朝早く出れば、十分にオーガルを観光できる時間はとれるだろう。一泊してまた旅を続ければ、次の日にはちゃんと故郷のライトストーンにもたどりつける。


 その途中、通過した街でメアリがあることに気づいた。


「なんだか、新年が来るってことで街がお祝いムードだったりする一方で、その逆のぴりぴりした空気もあるんだよね。これって、どういうことなんだろ」

 メアリはこのあたり、本当に鋭い。こういうところも含めて、偉大な魔族ということだろうか。


「警備員っていうか、用心棒みたいなのをよく見る気がする。警戒している視線っていうのを感じるよ。ちょっと物騒だよ」

「それはな、年末年始はお金にからむ事件が増えるからだよ。だから、商人たちは安心できないんだと思う」


 せっかくだし、一度、説明しておくか。魔界とはシステムも違うかもしれないし。


5万点突破いたしました&150話に到達しました! 本当にありがとうございます!

ダッシュエックス文庫1・2巻&マンガUP!さんのコミカライズともどもよろしくお願いいたします!

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