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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
サキュバスの自分探し編

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124 邪悪なる者へ

「さすが、先生! 男女両方に平等にセクハラをしまくってクビになっただけのことはあります!」

 そんなところが平等でも何の価値もないだろ!


 くそっ! 白魔法として攻撃できるものって、そんなに数がないんだよな……。だから、教育機関で広く教えられてるっていう面もあるんだけど……。

 まあ、いい。同じ魔法を繰り返してやる。


 ホーリーライトはよこしまな者を打ち破る魔法だ。敵に致命傷にはならないが、気絶ぐらいならそのうち狙える!


 しかし、敵も考えることは同じだった。

 ホーリーライトの詠唱と魔法陣を作りはじめた!

 俺も負けじとすぐに行動に出る。


 どちらが先に打てるか、それで勝負が決まる!


 だが、相手は本職の白魔法使いだ。詠唱慣れでは向こうがまさっている。

 わずかに敵のほうが速い!


 くそっ! これだと攻撃を受ける!


「邪悪な者よ、喰らえ! ホーリーライト!」

 男が魔法を放つ。


 次の瞬間――

 そのホーリーライトの白く輝いた光が、Uターンして男の胸に直撃した!


 まさかの逆流!?


「ぶ、ぐぅ……ぐふ……ぐふっ……」

 そのまま男にクリティカルと思われるダメージが入り――

 さらに俺の詠唱が終わって、第二のホーリーライトが用心棒の男に当たり、男は完全に沈黙した。


「勝った……。でも、なんで逆流したんだ……? ――あっ、そうか」

 邪悪な者に飛んでいく魔法なら、どう考えてもこいつに飛ぶよな……。

 絶対に俺たちのほうが正義だよな。


「さんきゅ、フランツ。術者が気絶してわらわたちも動けるようになったよ」

 メアリはぐるぐると腕を回していた。


 残った恰幅いい男が逃げようとしてたけど、思いっきりメアリの魔法の餌食になっていた。自然の摂理みたいなものだな。上級魔族に勝てるわけがない。


「な、なんとかなりましたね……」

 俺はその場に少しへたりこんだ。なかなか危ない橋を渡ったけれど、結果オーライだ。

 と、そこに次なる攻撃がやってきた。

 といっても、攻撃手段は胸だったけれど。


 リディアさんが飛び込んできたのだ。


「ありがとうね、フランツ君! ほんとにフランツ君のおかげで助かったし!」

「はい、マジでよかったです。ちょっと、胸が当たって苦しいんですけど……」

 これでもかというほどにリディアさんの胸がこちらを圧迫する。


「いいじゃん、いいじゃん! 細かいこと気にしないで! それに……」

 リディアさんの影がふっと笑顔の中に入ったように見えた。


「アイドルデビューの話もナシになっちゃったしね」

 たしかに……。

 リディアさんとしては、せっかくの夢が崩れたわけだ。そのショックはあって当然だ。別にこれは万人にとって幸せな解決ってわけじゃない。


「あの……俺がこんなこと言えた義理じゃないですけど、落ち込まないでくださいね」

「わかってる、わかってる。むしろ、私が甘い話にあっさり乗りすぎたってことでしょ。みんなは不安だから、こうやって待機してたわけでしょ?」

「はい、そういうことです」


 こんなところに偶然出くわすわけがないからな。


「次からは上手い話には気をつけるよ。七割は疑うぐらいでちょうどいいね。大丈夫、大丈夫。自分探しなんてすぐに終わるものじゃないし。だから、今は落ち込むよりはフランツ君に感謝するターンにさせてよ」


 ぎゅっと、リディアさんがひっついてきて離れない。女性陣がほかにも二人いるんだけど、ここはまあ、ぎゅっとされていてもいいだろう。


「ったく、アイドル業界ってやっぱり闇みたいなところがあるね。これで一箇所はクソな組織をつぶせたけど、きっと王都の中だけでもまだまだあるんでしょ。あ~あ、嫌になっちゃうよ」

 ぼやきながら、メアリはしっかりと倒した二人を縄で縛って、犯罪者として突き出す準備をしていた。

「そうだな。魔界よりこの王都のほうがよっぽど恐ろしいのかもな」


 有名になれるかも。ちやほやされるかも。

 そんな人間のごく普通の願望を悪用しようとする奴もいるのだ。


「白魔法もいいですわね。わたくしも覚えておきましょうかしら」

 セルリアがそんなことを言っていたけど、サキュバスでも白魔法って使えるんだろうか……?



 その日はいろいろあったんで、夜にリディアさんお疲れ様でした会をやった。

 俺も得意の焼きウインナーを作った。ウインナーの焼き加減は家で俺が一番得意だったりする。その他、小皿の料理をいくつか担当した。


「よし、次はもっと安全そうな芸能事務所に声をかけられるように頑張るし!」

「お姉様、別にアイドルを目指してこっちに来たわけではありませんわよね?」

 セルリアが妹らしく、適切にツッコミを入れた。


「そ、それはそうだけど……なんかアイドルになれるかもって浮かれた自分に腹が立つっていうのもあるし……。ちゃんとアイドルになったら、あながち間違いじゃなかったってことになるかなって……。これでアイドルになれなかったら、最初の奴らに体目当てで声かけられただけってなるじゃん……」


 その気持ちはわからなくはない。アイドルになれると喜んだ自分への気恥ずかしさみたいなのが、今のリディアさんにはあるんだろう。

「でも、サキュバスのアイドルってどうなのかな……。有利なの? それともたくさん遊んでるように見えるからダメなの……?」


「そこは難しい問題ですわね……」


 姉妹そろって「む~」と考えているみたいだけど、なかなか答えは出ないらしい。


「多くの人に愛されたいならアイドルを目指すべきですし、そうじゃないならほかの道を探してもいいのかもしれませんわね」

「あっ、そっか、そっか。少し、雲が晴れた気がする! さすが、妹!」


 うん、道が決まったみたいでよかった。

 ただ、二人が揃って俺のほうを見てきた気がしたんだよな……。


 その夜。

 セルリアとサキュバス的なことをしようとした時――

「ちょっと、お待ちくださいませ」

「あっ、なんか不都合があるんだったら、無理はしなくていいけど……」


 ドアががちゃりと開き、リディアさんが入ってきた。

「こんばんはー! 実は帰ってなかったんだよね」

 俺は目をぱちぱちさせた。この展開は……。


「今の私は、まず、しっかりフランツ君に感謝のしるしを見せないといけないなって。アイドルやるのはそれからかなって。ということで、今日はセルリアと三人で、ね?」


 俺は生唾を呑んだ。

「よろしくお願いします……」


「では、ご主人様、今日はお姉様とわたくしとで――」

「――たっぷり楽しませるからね! ふふふ、女の子が二人いないとできないことだって、いろいろあるしね~」


 その日は言葉にできないような激しい夜になりました。


芸能業界の裏側 編はこれでおしまいです! 次回から新展開です! 僕のほうのダッシュエックス文庫2巻の作業は終わりました! 9月発売予定です!

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