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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
黒魔法の会社に就職しました編

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12 犬耳社長のお話

日間1位本当にうれしいです! これからも皆さんに楽しんでいただけるよう努力します!

「いやらしい系、だと……!?」


 俺のほうも真顔になって聞き返してしまった。


「そ、それって、その……セルリアといいことして、朝になったら干からびてる的なやつでしょうか……?」

 セルリアの前でこういうこと言うのは気恥ずかしいが、サキュバスだからセクハラにはならないだろう。


「あっ、別に命に関わる要素なんてものはないですよ。キモイ・キタナイ・キケンの3Kには該当しないように気をつけていますから。ただ……その……なんというか、性的なことって、人によってはその時点でキモイとかキタナイって認識されるものなので……」


 社長もちょっと言いづらそうだった。


 それはそうだよな。

 少なくとも人前で気楽に話をして許される話題ではない。

 もしかしたら、それだけで避けられたり、軽蔑されるかもしれない。


「黒魔法の一部には、使用者が伝達者に性的なことをやって、継承させていくものがあるんです」

 いかにもありそう。魔女がサバトの夜に裸で踊りまわってるイメージだ。


「そういうものも、別の代替手段を考えてはいるんですけど、これは身体接触がある分、生贄のようなものと比べると、代用も難しくてですね……まだ必要な部分が残ってます」


「それって、やらないときついものなんですかね……?」


「黒魔法の熟練者と正式な作法に則って、魔法使いがえっちいことをすれば、三十五種の黒魔法を覚えることができます」

「すごく効率がいい!」


 三十五種って、魔法学校の二年目までのカリキュラムの魔法合計数より多い。もちろん、プロの魔法使いは百種以上使える人もいるが、それでも一度に三十五種を追加するというのは無茶苦茶だ。


「効率は私も本当にいいと思います。もともとは伝承に費やす時間を節約するために行われたものなんですけど、業界からセクハラに利用される危険が高いという指摘などもありまして、両者がはっきり合意してる時にしかこの方法はとらないことにしてます」


 そこから先も社長はとにかく丁寧に説明してくれたが、こういったことが義務付けられているらしい。


・この方法で魔法を覚えるのを拒否したからといって給与や昇進に響くことをしてはならない。それを理由に解雇したりしてもならない。


・相手との継承過程について、ぺらぺら口外してはならない。


・ほかの魔法の教育方法を用意しておかないといけない。


・ハラスメントについて訴えたり、相談できる場所を事前に継承者に教えておかないといけない。


 内容が内容だけに黒魔法業界も神経質になっているのは、だいたいわかった。

 でも、ここまで気にしているということは、業界の風通しがよくなってきているというのは間違いないようだ。


「こういうことなんだけど、フランツさんは大丈夫ですか? 怖いならやめておきますよ」


 一応というか、セルリアのほうをちらっと見た。

 使い魔ということになってるけど、俺としてはセルリアは恋人も同然だ。


「セルリアが浮気みたいなことはやめてほしいって言うなら、やめておきたいんだけど、どうかな? 率直に聞かせてほしい」


 だけど、セルリアは微笑んで、


「わざわざわたくしのことを考えてくれるだけでもうれしいですわ」


 そう返事をした。


「ご主人様の成長は使い魔としても誇らしいことですわ。ぜひ、やってくださいませ」

「その言葉を信じていいんだな?」

「それにサキュバスが浮気はダメとかいうのも、どこか矛盾していますし――あっ、もちろんわたくしはご主人様の使い魔ですから、浮気なんてしませんわよ!? ご主人様ひとすじですからね!」


 そのあわて方がすごくかわいかった。社長がいなかったら、キスしようとしてたかもしれない。


 ここは仕事のためと割り切るか。


「わかりました。社長、俺としては、うねうねしたタコみたいな生物と変なことをしたりするとかでなければ……やろうと思います」


 インプといやらしいことをするぐらいなら我慢しよう。


「そうですか。わかりました」

 俺の言葉に社長も少し緊張が解けたらしく、表情がやわらかくなった。そういう顔になると、自分より少し下の、犬耳の女の子にしか見えない。


「それじゃ、フランツさん、よろしくお願いいたしますね」

「はい、それで、どこで誰とどういうことをするんでしょうか?」


 事前に確認しておかないと、さすがに怖い。


 ケルケル社長は自分の胸に左手を置いた。


「それは、私ですけど」

「ええっ!? 社長とですか!?」


 声が裏返った。


「はい。この方法を使うには、教える側もそれなりの熟練者でないといけませんからね。社長である私が行うことにしています」


 さっきの話だと、そうなるか。社長をやってるぐらいだから、会社内で一番黒魔法に通じているだろうし。


 そこで、社長はちょっと照れたように左の人差し指で頬をぽりぽりとかいた。


「あの……こんな犬耳の、しかも五世紀生きてるような奴は嫌だっていうんだったら、そこは代役を立てるとか考えますが……私でよいでしょうか?」


「も、もちろん。むしろ、喜んで」


 こんなかわいい社長がダメだなんて男はいないと思う。


「それと、私、胸も小さいですけど、そこもよろしいですか? 巨乳以外認めないとかいうこともないですか?」


「いえ、全然問題ないですから! そんなところで差別しないですって!」


「わかりました。では、夜に研修室で行ないますので、それまでどこかで時間でもつぶしておいてもらえますか? 本でも読んでおいてもらってもけっこうですし」


 社長、それは落ち着かなくて、本なんて頭に入りませんよ!


 空いている部屋で黒魔法に関する本を読んでいたけど、やっぱりあまり頭に入らなかった。


「ご主人様ってじらされるとこうなるんですわね」

 セルリアが何か言いながらメモをとっていた。


「今後の参考にいたしますわ」

 そんな変な部分、学習しないでほしい……。


「ですが、これで黒魔法使いとしての基礎がすべて手に入るようなものですわ。頑張ってきてくださいね」

 セルリアに応援されてしまった。

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