手紙
手紙を書こう。貴方に向けて。
ペンと紙を用意して、もう準備は万端だ。だけども、ペンは進まない。スタートと言われなくても進んで良いけれども進まない。手元のペン。
沢山貴方に伝えたいことがあるのに……。
貴方へと書いた。一度走ると案外止まらないもので。続いて、大好きと書いた。愛してると書いた。やっぱり……。大嫌いと書き直した。続いて貴方への愚痴を沢山沢山書き始めた。当初の予定とは違うがもう立ち止まらない。立ち止まれない。
沢山沢山沢山沢山書いたよ。貴方への愚痴。でもね、まだ書き足りないの貴方への愚痴は。でも、それなのにね。貴方の事が恋しくて堪らないの。
「……ねぇ、どうしてかな?」
その声は途切れ途切れで上手く聞き取るのが難しい。
ペンをまた走らせた。
貴方の事こんなに嫌いなのに、なんか今だに愛しちゃってるんだけど。どうしてくれんだよ、バーカ。
手紙を持って、貴方の元に向かった。貴方に送る事は出来ないから、せめて読み聞かせてやろうと思って。スマホを片手に歩いた。
手紙だけだと寂しいと思って花束を買った。
「……久しぶり……元気にしてた?」
返事は返ってこなかった。だから私は乱暴に花束の包み紙を割いて渡した。包み紙はクチャクチャにしてポッケにしまった。
「あんたに手紙を書いて来たんだよ」
不機嫌に言った。
貴方は何も変わらず無言のまま聞いてくれる。
「貴方へ
私は、貴方が大っ嫌いです。
私との約束は守らないし、
家事はやってくれないし、
やってくれても下手くそで、
私が話してても”うんうん”って言うだけで私の話をまともに聞いてくれないし、
それなのに自分の話は聞いてって理不尽な事言うし、
遅刻ばっかして来て、
いつも私を待たせてるし、
それにそれに……
私より先に行っちゃったし……
私の事残してくし、
いっぱいいっぱいまだまだ沢山貴方の嫌いな所があるのに……
貴方が居なくて、
寂しくて、
恋しくて、
もっと一緒に居たい」
一息つき、大きく息を吸った。
「貴方の事こんなに嫌いなのに、なんか今だに愛しちゃってるんだけど。どうしてくれんだよ、バーカ。」
ヤケクソ気味に言ってやった。
手紙の文字が滲んでいた。




