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5話 常宮みことは美しくない

5話 常宮みことは美しくない


「い、委員長、そ、それ……」

 教室に入ってきた蓮を見て、教室がざわめいた。常宮は思わず立ち上がって、その顔を指さした。怒りでなく、別の感情からその手が震えるのは珍しいことだ。

「みんなおはよう? どう? 似合ってる?」

 そう言って、自分の左側の頬を触った。ちょうどケロイドができてしまった部分だけを覆う革とゴム製のフェイスガードが、額と顎の方に回り込むように取り付けられていて、遠目で見た感じ、アニメや映画に出てくるアンドロイドや、あるいは熟練の戦士のようなスタイリッシュな印象を与えていた。

「お兄ちゃんが……えと、私の叔父にあたる人がね、医療用装具のメーカーの代表取締役をやってて、私はいいって言ったんだけど、特注で作ってくれたんだ。ちょっとかっこよくない? どう……かな?」

 蓮にしては珍しく、少し緊張と不安の混じった声色だった。見えている側の、右側の頬だけを少し赤くしている。

「……へ、へぇ。い、いいんじゃない?」

 常宮は、自分の胸に湧き上がった謎の感情をその場でうまく処理することができなかったので、適当にそう返事をしてすぐに目をそらしたが、自分の視線がその新しい「装備」に引き寄せられるのを自覚した。

「えっ、委員長、すごくかっこいいよ? それどうなってんの?」

 もっと素直なクラスメイトたちが蓮の周りを素早く取り囲み、その装備の細かい形状や仕組み、追加機能について聞いて回った。

「いつもは電源はオフにしてるんだけど、ここのスイッチを押すと、録音機能があって。あとこっちで体温と血圧の予測値が測れて、スマートフォンに数値を出せるんだ。あと一応気温とか湿度も……あと、ここをこうすると、喋る」

「蓮様。何なりとお申し付けください」

 機械音声が話始める。

「え、え。じゃあマスクさん。マスクさん。この国で委員長より美しい女はいる?」

「そこの女。蓮様になんと失礼なことを。蓮様より美しい女など、この国はおろか、世界中探してもいるわけないでございましょう!」

 蓮は困惑して「ちょ、ちょっとなんで? なんでそんなキャラなの?」と言ったが、周りの女の子たちはキャーキャー言いながら笑っている。

「すごーい! いいなぁ、私も欲しいなぁ」

「少し高いかもしれないけど、一般向けに製品化も考えているんだって」

 咳払いしたあと蓮がそう言って、マスクの電源を切った。しかし蓮の叔父は遠隔操作可能な電源スイッチと小型カメラ、録音装置をマスクに取り付けているため、本当は完全にその機能を停止しているわけではなかったのだが、蓮はそんな叔父のイカれた趣味に気づいてなどいない。


「ふぅむ。そんな血の通っていない機械などに美を感じるとは、なんと劣った審美眼か」

 安智英二は遠目で人気を集める蓮を見ながらそう言った。

「なぁ、そう思うだろう、お前も?」

 話しかけられたのは狂信者、歌貝祈瑠。彼女もまた、蓮の新装備には何の関心も抱いていなかった。

「え、私ですか? 私は、えー……私は別になんとも」

「ふむ……では、君は私と彼女、どちらの方が美しいと思うのかね?」

「えっ? いや……安智さんは、その……綺麗なお顔をされてるなぁとは思いますけど、でも河原内さんの魅力って、お顔だけではないと思うので……いや、お二方とも、私がお話しするのも恐れ多い、素敵な方だと思いますけども……!」

 そんな言い訳じみた返答に、安智はため息をついた。どいつもこいつもものごとの本質を理解していない。人の魂や心情など、ものごとの表層に過ぎない。意志も信念も覚悟も事実も結果も、全部全部、偶然と神々のいたずらがもたらした「世界の可変的な部分」に過ぎない。

「美こそが。それも、人間の肉体の美こそが、この世で最も確実であり、意味のある、最高の芸術であり、価値であると、なぜみなわからないのか。そこにこそ、すべての真実と叡智が宿っているというのに!」

 安智は急に立ち上がってそう叫んだ。もうこのクラスになってから二か月ほどたっているので、安智の奇行にいちいち驚く者はいなくなっている。いじめっ子の愛締すら、こいつには何を言っても話がかみ合わないし精神属性のダメージに対する完全抵抗を持っていることも察していたので無駄なアタックを行うのをやめていた。

「おい磯倉。お前はどうなんだ。お前は私の敵であり、この世全ての悪をその身に宿した宿命の子。逆説的に、お前は私の価値を世界に示し、その破滅によって私の栄光を証明する存在であろう。お前こそが私を憎み、私を害し、この美を奪うことを画策し、それゆえにお前の醜さは一層際立ち、私の美しさはより一層輝くのではないのか」

 磯倉は、読んでいた本を閉じて、まっすぐと安智の方を見つめた。

「お前のその物語性は高く評価するよ。美しすぎるというのも時には重荷になるだろうしな。もし俺がお前の立場なら、もう少し醜くなれるよう努力するだろうな。さすがにその顔は目立ちすぎる」

 それを聞いていた、烏恋が思わず笑いながら突っ込んだ。

「じゃあお前ももう少しその醜さをどうにかする努力しろよ(嘲笑)。目立ちすぎてんのはお前も同じだよ(冷笑)」

 返事もせず、磯倉は本をまた開いた。ふん、と変な鳴き声を発して安智も席に座り直した。


「おいお前ら座れー。ホームルームだぞー」

 担任の教師がやってきて、この日の連絡事項を伝え始めた。

「そういうわけで、来週水曜の4限目と5限目は、グラウンドで全校生徒集めてミスコン・ミスタコンやるから、候補者をクラスから男女2名ずつ出すんだぞー」

「はぁ?」

「時代錯誤すぎでしょ」

「PTAキレるんじゃない?」

「PTAはこの前解散したよ」

「つーか授業でやること?」

「文化祭もっと先だよね」

「SNSに投稿して炎上させよう」

「いいね。私アカウント54個持ってるから総動員するわ」

 生徒たちはそれぞれ好き放題文句を言う。

「うるせぇ黙れ! 死にてぇのか!」

 教師はそう叫び、黒板を思い切り殴った。そして教室は静寂に包まれた。いつものことだ。こうでもしないと、このいかれた生徒たち集まる一年B組は黙らない。ちなみに、B組のBは、BadのBという説が主流だったが、BitchのBという説も広まっている。


 まぁ私には関係ない話か。常宮はそう思って静かに後ろの席から委員長のかっこいい装備を眺めていた。あれ、欲しいなぁ。一般向けのがいつ発売されるのか、あとで委員長に聞こう、と思った。

「はい、そういうわけで、ミスタコンは安智君と磯倉君。ミスコンは河原内さんと常宮さんに出てもらいまーす」

「はぁ? いやちょっと待ってよ。私より綺麗な子なんてクラスにいくらでも……」

 ぼうっとしている間に勝手に決められて、焦って立ち上がり、クラスを見回す。女子のひとりひとりの顔をじろじろと見てみる。同性の顔なんて興味ないからほとんど見たことがなくて、顔と名前も一致していない。こいつは太りすぎ。こいつは化粧濃すぎ。つーか学校に化粧してくんな。こいつは口裂けすぎ。こいつは目四つもある。こいつは副乳が顎についてる。こいつは眉毛がまぶたの下についてる。なんでだよ。変な顔のやつしかいねぇじゃねぇか。

 あ、まともなのいた……歌貝祈瑠。あ、ダメだ。あいつは人前に立たせちゃいけないやつだ。唐突に神に祈り始めるから。

「というかさ、なんで磯倉が出んの?」

「そりゃ、ミスコン・ミスタコンと言えば、一番綺麗な奴と、一番醜い奴を同時に決める催しだからだろ。お前もう少し勉強しろ。落第させるぞ」

 担任の教師が、そんなバカげたことを言った。

「え、ちょっと待って、それじゃあ。このクラスで私が一番ブスってこと?」

「いや、その枠は河原内だ」

「いや、委員長はかっこいいでしょ!」

「えっ」

 常宮の言葉に一番驚いていたのはなぜか蓮本人だった。

「と、常宮さん、私のことそういう風に思ってくれてたんだ」

 見るからに嬉しそうな声。

「いや、ちが……いやっていうかおかしいでしょ。ちょっと火傷しただけだし、その装備もかっこいいし」

「まぁ何はともあれB組の代表として頑張ってくれ、常宮。みな、応援しような! ホームルーム終わり!」

 そう言って教室から出ていく教師。

「常宮さん、私化粧得意だから教えてあげよっか!」

 例の厚化粧女。さっそく化粧箱を鞄から取り出している。

「いや、いい。いい。いや。やめて」

「つけ目する? 最近流行ってるんだよね」

 つけ目。聞いたことない文化だ。つけまつげみたいな感じで……目玉をつけるのか。あぁどおりで目が四つ……なんでそんなことするの?

「眉毛がー」

「副乳がー」

「……早退しまーす」

 もう知ったことかと常宮はカバンを持って教室を出ていこうとしたが、目の前に立ちふさがったのは安智英二だった。

「お前はお前の美から目を逸らすのか、常宮。確かに今のお前は平凡だ。お前の顔からは、目に見えるものに対する一切の軽蔑、無頓着、美意識と自意識の欠如、受けた愛、そして与えた愛の深刻な欠乏が見て取れる。だが……お前の素質は、決して悪くない。いや、言い方を変えよう。お前がもし、私と同じだけの努力、つまるところ、お前自身の一切を美に捧げていたのならば、もしかすれば……万に一つだが、私と同じ領域、つまり美しい神と書いて美神。その領域にまで至れていたかもしれない、と私は時に思う。そうだ。今からでも遅くない。お前はそうすべきだ。素質は、その人間に大いなる義務と責任を負わせる。お前はお前の美に責任を持たなければならない。それを損なうこと、損ない続けることは、お前の罪となり、お前の本質を汚す。そして失われたものは二度と元には戻らない。そう。美が永遠でないように、そのタイミングを逃せば、お前は永遠に今のように醜いままなのだ。それは……あまりにも、むごい」

 常宮は、その意味もなく長い演説を聞き終えて、ため息をついた。

「何言っているかわからない。長いから、一言で言って」

「そなたは美しい」

 常宮は、少し考えた。率直に褒められて、それも、性格は終わってても確かに顔は、テレビに出てくるイケメン芸能人と遜色ない(というか、悔しいけど多分こいつの方が美しい)こいつに、自分の容姿を褒められて、少し嬉しかったのだ。

「しょうがないな。わかったよ。出る。でも、美とかよくわかんないから、ちゃんと教えてよ」

「ふむ。よかろう」


 そして当日。

「で、これが何の役に立つの?」

 サバイバルゲームで使うような防具一式。特に顔の部分は完全防護。まるでハチの巣を駆除する業者か、宇宙飛行士みたいな恰好。クラスメイトたちは笑顔で常宮を戦場に送り出した。

「委員長? こ、これ、どういうこと?」

「ええっと。私もよくわからないんだ。みんなは、委員長なら大丈夫って言ってくれたけど、どういう意味かわからないし……」

 グラウンドは、巨大な柵で何重にも覆われている。ミス・ミスタコンの候補者たち以外はみな校舎の中にいて、窓から顔を出して応援している。男子たちの戦いは、少し離れた場所にある第二グラウンドでやってるらしい。

「あ、A組の子たちが来たよ!」

 ずごごごごご、と道路工事のときにしか聞かないような音が響き渡る。ロードローラーだっ! 柵を破壊しながらグラウンドに侵入してきた!

「覚悟しろ。お前たち。この学校でもっとも美しいのはこの私」

「卑怯だぞー!」

「ぶっ殺せー!」

 他にも、次々と候補者たちが現れる。

 仮面をつけて両手にナイフを持った者。ナイフを舐めている。

「ふひひ。殺りがいがありそうなのばかりね」

 明らかにヤバそうな泡立つ緑色の薬品をその手に持って、ガスマスクを被った白衣のヤツ。

「ふふふ……科学が私の美を証明する」

 何匹ものドーベルマンを引き連れてやってきたお嬢様。

「オーホッホ! 私より美しい者など、この世に不要ですわー!」


「あ、あの……この状況って、どういうことなんですか」

 教室で様子を見守る女子のひとりが、ワクワクした様子のクラスメイトに尋ねた。

「あ、知らないの、歌貝さん。この学校のミス・ミスタコンではね、毎年死傷者が出ていたの。自分以外の候補者の顔を傷つけて、相対的に自分が一番美人になれば優勝できるでしょ? それにブス・ブサイクコンテストの方もそう。自分よりブスな子がいれば、一番ブスじゃなくなるから、ブス同士で醜い争いを繰り広げてたんだよね。で、それを見かねた先生たちが『どうせ戦うならそれを見世物にした方がいい』って言ってね。今みたいなバトルロワイヤル形式になったんだ。四時限目が終わるまでに、一番顔が綺麗だった人が優勝。一番ブサイクだった人も、優勝。見てる分には最高のエンタメだよ!」

「おお……神よ。お許しください。お許しください神よ」

「あぁまた始まった。この子、これがなければいい子なんだけどなぁ」



「あぁっ委員長ーっ!」

 常宮は叫んだ。正気を失った女子たちが無防備な委員長に真っ先に襲い掛かった。

「常宮さんっ! 私のことはいいから逃げて!」

「い、委員長……」

 常宮は状況を把握できず、戸惑っていた。

 蓮は、そのかっこういい新装備を無理やり剥ぎ取られ、顔に変な薬品をかけられ、ナイフで切り刻まれていく。常宮はその悲惨さに思わず顔をそむけた。委員長、ごめん。私、なんもできない。

「オマエ……タタカワナイノカ」

 そこにいたのは、巨大な壁……ではなく、とても太った女性だった。身長は二メートル近くある。その腕は、常宮の別に痩せすぎというほどでもない胴よりも太かった。

「え、ええっと……あなたは……ブスコンの参加者?」

「ア゛ア゛ア゛ア゛ー!」

 言葉にならない言葉を叫びながら、その女は、下手な凶器よりも狂気じみた腕を振り上げ……たが、すぐに降ろした。

「ダメダ……ワ゛ダジハ……人ヲ傷ツケラレナイ……」

「や、優しい怪物……」

 常宮は思わずそうつぶやいて「え、えと、ごめんね。あなた、多分そんなにブスじゃないよ」と、適当なフォローをしたあと、ぼろぼろにされた委員長を助けに行くことにした。

 グラウンドの中心部付近は、真の化け物同士の血で血を洗う争いが繰り広げられていた。委員長はボロボロの姿でグラウンドの端の方に打ち捨てられていた。かっこいい新装備は十分に頑丈だったのか外されてはいたが委員長のそばに無傷で放り出されていた。

「い、委員長……」

 蓮は気を失っていた。常宮は蓮の顔を見て、思わず口をふさいだ。どろどろに解けていて、ひどく出血をしていた。

「心配しなくていい。常宮君……と言ったな。うちの蓮が世話になってる」

「はぁ?」

 声は、その新装備から鳴っていた。

「私は蓮の叔父だ。蓮の命に別状はない。彼女の身体には我が河原内製作(株)製の生命維持装置が取り付けられているからね。ちょっとやそっとのことでは死にゃしないよ。それに顔も大丈夫。むしろ好都合と言っていい。私のかわいい姪には新製品のモニターになってもらおうと思っていたんだ。授賞式までには届けるから、彼女をそっとしておいてくれたまえ」

「な、何を言っている、の?」

「そんなことより君は君自身の身を守った方がいいんじゃないか?」

「ロードローラーだッ!」

 野太い声が後ろから聞こえてくる。重機が二人の身に迫る。常宮はため息をついて、意識を集中させ、その力を殺人重機に向けた。

「時よ、止まれ」

 再び時が動き出した時、今日一番の歓声がグラウンドに響いた。


 授賞式。なぜか半裸の安智英二。激しい戦いだったのだろう。破けた服の隙間から、輝かしいほどに発達した筋肉が己の栄光を主張している。当然顔は無傷。少しだけ、憂いを帯びた表情を浮かべている。隣にはブサイクコンの優勝者、磯倉。どうやら、他のブサイクコンの候補者たちは、どれだけ傷つけあっても磯倉よりブサイクになることはできないという共通了解のもと、無用な争いは起こらなかったようだ。

「ではミスタコン優勝者の安智君。今のお気持ちをどうぞ」

「力なくして美は守れん。だが、力だけでも足りない。知恵と謀略、そして運。何よりも、美への愛が、私を優勝へと導いてくれた。醜い者どもよ。その顔を傷つけあうのはやめたまえ。ただでさえこの世は美しいものが少なすぎる。そのわずかな美を奪い合うのは、やめたまえ……」

「はい、安智君、ありがとうございましたー。じゃあブサイクの君。今の気持ちはどう?」

「最高の気分だよ」

「最低の気分の間違いでは? はい。ではミスタコン、ブサイクコンのインタビューと授与式を終わります。次は女子のお二方」

 常宮は、うんざりとした表情を浮かべながら壇上に上がる。

「常宮さん。ライバルを全員見事に蹴散らしての優勝、おめでとうございます。圧倒的でしたね! どうですか? 自分より美しい人の美しさを破壊して勝ち取った勝利の味は!」

「これ何の意味があるの? あんたの言う通り私は美人じゃないし、どっちかっていうとちんちくりんだし……」

「はい、ありがとうございました! 今年のミスは、謙遜する姿まで美しかったですね。では……ええっと。見事ブスコンに輝いた……河原内蓮さん。お気持ちはいかがですか」

 河原内蓮のその顔に会場はどよめく。電子人皮。最近研究開発が進められていると噂のそれは、三次元世界に二次元美少女を生み出す新技術であり、多くのオタクたちから注目を浴びている技術だった。

「ええっと……いまいち状況が掴めていないのですが、でもみんなが無事でよかったです」

「……その顔は、どうしたんですか?」

 昆虫みたいな巨大な目。点になった鼻。消失した唇。冷静に考えればその顔は異形のはずなのに、なぜか私たちは本能的にそれを「かわいい」と思ってしまう。

「あぁ、おにぃ……んん。叔父の会社の新商品らしいです。ちょうど私の顔が……その……あはは。ちょっと、ダメになってしまったので、モニターにならないかと、つい先ほど頼まれてしまって。大丈夫ですかね? その、外した方がいいですか?」

「いえ、いえ! 素晴らしいお顔だと思います。なんというか、とてもかわいくて、素敵です! 河原内さん、ありがとうございました!」

 今日一番の拍手が鳴り響いた。敗れた候補者たちも「私もあれほしい!」と口々に叫んだ。男子たちも「河原内さんめっちゃかわいいな」と、評判だった。

 照れて頭をかく蓮の隣、常宮は無表情。壇から降りたあと、無表情で賞状を破り捨てた。


「私が誰よりも醜いことで、傷つく者が少しでも減ったというのは、喜ぶべきことだろう」

 自室でひとり、磯倉はそうつぶやいた。

「額縁が必要だな」

 

 あなたはこの学校でもっともブサイクな人間に選ばれました。その栄誉を称え、ここに表彰します。


 満足げに磯倉はその賞状を眺めては、この世とは思えぬ醜い顔をさらに歪めるのであった。

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