騎士団長の初恋-後半
自分の気持ちに気がついた俺は時間が出来る度にレイの所に行った。
王都に帰るまであと1ヶ月、なりふり構っていられない。アランとアンナは俺の事を残念な目で見ているが気にしない。
しかしだ。
なんだこの鈍感女!!
これだけアピールしてるのに、レイは優しくしてくれるが、絶対に恋人に対してのものではない。
アラン達にも男らしい所を見せろと言われたが、すればするほど子供扱いされている気がする。
先日だって、アランと午後の演習の予定を話しながら、医務室に傷薬を取りに行った。最近レイの事でイライラして、手加減が出来ないのか、団員達の生傷が絶えない。少しは申し訳なくなり、先に薬を用意する事にした。
そうしたらイライラの原因がアンナとお茶を飲んでいた。しかもレイの手作りクッキーもある。
「団長、私たちは訓練で必要な傷薬を取りに来ただけですよ。すぐに戻らないと」とアランが言うが、俺はクッキーを食べたい。レイのテーカップを奪ってお茶を飲んだが、間接キスだなと思ったらドキドキしてしまった。俺はガキか?
「まあ、王都に帰ったら、団長のご両親も今年こそは結婚をして貰うと言うでしょうから、それまでにご準備されておくのはいいかと思いますがね」とアランが余計な事をいう。
レイを口説き落とせなかったら、もうずっと砦に閉じ込めておきたいとか不穏な考えも浮かぶ。
夕食の後、俺はアランとアンナに拘束されて2人の部屋に連れてこられた。
アンナ呆れた顔で俺を見る。
「あんた何焦ってるのか知らないけど、どんどん変になってきてるわよ。口開けてクッキーもらうとかガキなの??」
「しょうがないだろ、俺は女を口説くとかした事ないんだよ、いつも向こうから寄ってきたから!」
「まあ、あんたの為に私が色々聞いてやったぞ。レイは結婚願望もあって、子供も欲しいんだって。好きなタイプはレイの事を大切にしてくれる人で背が高い人がいいらしい」
それを聞くと俺は嬉しくなった。俺だって十分に条件を満たしている。
「たーーーだ、この条件をあんたに伝えておくって言ったら、団長には結婚適齢期のお兄様とか弟さんがいるのか?って聞いてきたから、あんたはそう言う対処に全く見られてないね」と言われてがっくり来てしまった。俺のアピールは全く伝わってない。
次の日の朝、外壁に侵入を試みた跡があると朝の巡回をしていた団員から報告があった。
今年は雪がかなり深く、隣国からこちらに抜けてくるのも容易ではない。かなりの手馴れかもしれない。
「よし、演習通りに外を捜索するグループと砦の中を捜索するするグループに分かれろ。俺はレイとアンナ先生の安全を確保しだい、捜索に加わる」
俺はキッチンにいたレイを医務室に連れて行き、アンナとレイには部屋には鍵をかけて出ない様に言う。
砦内の捜索に加わり、アランからの報告を聞く。
「どうやら、内部に侵入している様ですが、武器とかには目をくれず、応急処置用の薬箱が荒らされてます。そして雪の上の足跡から女の2人組ではないかと予想されます」
以前にも隣国の村から、食料などを探しにきた女がいたな。子供の為命をかけてきた母親だった。
俺はハッとした。
薬を探しているなら、医務室に行く可能性が十分にある。
俺は医務室に向かって走り出した。
近づくと隣国の言葉で叫ぶ声が聞こえる、そして医務室のドアが開いている。
くそ!!間に合ってくれ。
俺はドアを蹴破る様に開けた。
初めに見えたのは、アンナがレイの首に包帯を巻いている、そして血の跡が首筋に見える。大した事はなさそうだが、あの美しい首に傷がついたと思っただけで、怒りが倍増した。
「お前ら、俺のレイに何をした!!!」と2人の女を蹴散らした。
一瞬で動けなくなった2人に剣を向けたがレイに止められた。「わーー団長、無駄な殺生はやめろ!」と言うが、俺はレイにもムカついていた。
「レイ、俺は鍵をかけて中に籠ってろって言ったよな、なんでこいつらが中にいて、首に怪我をしてるんだ!!」と怒鳴ってしまった。
俺は急病人が出た聞き、心配でついドアを開けたといいながら、大泣きしているレイを抱きしめたまま離せなくなってしまった。
目が覚めた侵入者2人には薬を持たせ、団員に隣国の国境まで連れていく様に指示した。
そして今、俺とレイ、アンナ、アランで俺の執務室にいる。
アンナが「明らかに隣国の言葉なのに、レイがドアを開けようとするから焦ったわ」と言った。やっぱりレイが開けたんだなとジロリとレイを見ると。
「でも普通に話している言葉に聞こえたよ」と必死にレイは説明してる。
俺は少し考えて、
「レイは俺たちの言葉も母国語に聞こえると言っていたな、レイお前は本当はどこから来たんだ?」
初日に聞かなくはいけない事だったが、俺がレイの胸を見た事で全てが有耶無耶になっていた。
話を聞く限り、どうもこの世界から来たようには思えない。
しかし突然来たという事は突然いなくなる可能性もある、レイが居なくなったら俺はどうなるかわからない。
早く王都に帰って、この様な事例がないか調べなくては。
と考えてていたら、なんか聞き捨てならないことが聞こえた。
「ここに来てからは色々驚く事があったけど、まあ異世界だからしょうがないよな。隣国でさえ、あんなに容姿が違うなんてさ。さっき話をするまで、女だと思わなかったし」
「い。。今、なんて言った?」
「ん?やっぱり色々違うんだなって」
「いや、その後、隣国の」
「あ、あの2人のこと?髪型は角刈りだし、言葉も乱暴なので男と思ったんだよ」
おい待て、あいつらは頭も短いし、どう見ても女だったろ。俺は隣国の言葉がわかるが、女らしい話し方だった。俺だって顔が女っぽいから、男らしくするために髪を伸ばしてるのに。
待てよ。。あいつらが男に見えるって事は。俺はどう見えるんだ??
何か嫌な予感がするが勇気を搾り出して聞いてみた。
「へ?アシュリー団長?俺の世界では絶世の美女と言ってもいいと思うぞ」と聞いた瞬間、俺は床に崩れ落ちた。
アンナとアランが大笑いしてる。
「アシュリーを女だと思っていたんですか?」とアランが床に転がりそうな勢いで笑ってる。いい加減にしろお前。
俺は立ち上がって、シャツを開いて、レイに胸と腹を見せた。
「俺は男だ!!!下も見せてやろうか!!と叫んだ。
レイは顔を真っ赤にさせてパニックになっている。
なんでこうなったのか、色々な実験をした結果。
レイは文字を読むときは問題はないが、俺が男性らしく話せば話すほど、レイには女性が話すように聞こえるらしい。
通りで反応が薄いはずだ。
レイは自分の言葉が男っぽく俺たちに聞こえることにもびっくりしていた。
レイの髪の毛が長いのも、ボーイッシュにしてた訳ではなく、レイの世界では女性の方が髪が長いそうで。
フィルやビルは男の容姿で女の子言葉遣いをしていて、いわゆるそっち系だと思ってたらしい。だからあいつらに対する危機感がなかったんだな。俺に対しても。
俺は言葉遣いと顔に違和感がなかったので、女だと思われていたし。
「え?じゃあフィル達が言っていた、団長にそっちの気があるって、男性同士の恋愛と思ってたってことですか?」とアランはもう笑いすぎてくるしそうだ。
やっぱりあいつらが噂を流してたのか、後で説教だな。
「大体お前も鈍感すぎるだろう、あんなにハグしたり、膝に乗せたりして気が付かないってなんだ?名前聞いてわかるだろう」
「いや、俺は女子校に行っていたので、あれぐらい普通で。アシュリーって俺の世界では女の子の名前だったんだけど、男の名前なのか?」
そうなのか。まさか名前でも気づいて貰えないとは。
そしてレイは俺が何でレイが女だったと気がついたのか聞いてきた。ここは正直にいうべきだな。
「。。。。。いや。初めて会った日に、俺ががまだいるのに、上着を脱いだだろ。あの時に見えたんだよ。おまえ着痩せするだな。あのボリュームはなかなかない」と言ったら。
「ぎゃーー団長のスケベ」レイが叫んだ。
俺はまただんだんムカついてきた。俺がどんなに我慢したと思ってるんだよ。
「という事で、俺はお前に十分に俺が男って事をわからせてやるよ」と言いながら、俺はレイを肩に担ぎ、俺の部屋に向かった。
レイは何か叫んでて、色んな奴らに見られたがもうどうでもいい。
次の日の朝、レイを起こすと何か困惑してる。
「あれ、団長さんの声が男の人みたいになってる」
「俺にもレイの声が女みたいに聞こえるぞ」
「え?治ったのかな?よかったー」
「どうやら、俺が男ってのは証明できたみたいだな」
さあこれから、忙しくなるぞ。王都に帰ったら、両親に紹介して。もう離す気ないしな。
俺はレイを抱きしめて。
「この世界に来てくれてありがとう」と言ったら。
レイも「私の事を好きになってくれてありがとうございます。。。。が。。」
「が?」
「でも、性別とか大事な事は初めから言ってください!!」
俺はニヤッとして、次からは必ず言うよって言いながら、レイにキスをした。
(完)
最後まで読んでくださってありがとうございます。
短編で書けると思ってたのですが、思ったより長くなりました。
言葉をひっくり返すのが難しい。特にレイの男言葉が難しかった。




