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5 魔王ザラの申し出を断る

 数日後、大魔法師マーリーの捜索隊が組織され、姫軍師フーカがその隊長となり宮廷魔法師となったイワンが副官となった。

 出発前にナオト国王が彼女を呼び出し、内々に言った。


「北川さん。イワンのおかげで僕の体の鉄化は止りひと安心ですが、このように両足が鉄で自分だけで歩けないままでは、国王としての重責を果たすことができません。マーリーに両足を元に戻してもらい、これから始まる魔王ザラとの戦いについてアドバイスをいただきたいのです。」


「佐藤さんはこちらの世界に転生した後、魔王ザラに会ったのですか。」

「はい。転生して直ぐに、僕の目の前にザラが現われました。」

 それから彼は、その一部始終を話し始めた。


 ………


 佐藤直人は胸に強烈な痛みを感じて眼を覚ました。そこは、中世ヨーロッパに戻ったようなレトロな広い部屋で、広い天幕を張られたベッドの中に横たわっていた。


(ここは、どこだ?終電間際で急いで10階フロアーから階段を下り、ようやく1階に着いたと思った瞬間、心臓を容赦なくわしづかみにされたような強烈な痛み、それからの記憶がない………)


 彼がそう思ったとほぼ同時に、部屋の全ての窓が乱暴にバタンと開き、強烈な風が外から吹き込んだ。


「あら!あら!あら!」


 窓際に、黒づくめでスタイルがいい、とても美しい女性が立っていた。絶世の美女と言ってもよかった。ほとんど人間と変わらないが、2本の角を生やし背中には翼がある魔物だった。


「いつの間に転生が行われたのかしら。散々いじめてやった前の国王が消えて、転生者が国王になっているわ。これからは、あなたが私の戦い相手になるのね。失礼、自己紹介していなかったわ。私は魔王ザラ、歴代最高の魔力をもつ魔王の中の魔王よ!あなたは誰?」


「………」


「そう。今転生して意識を取り戻したばかりなのね。ところで、あなたの中には5の数字がついた過酷な運命が見える。たとえばこういうことね。」

 

 魔王はそう言うと、呪文をとなえて彼を指さした。

「5の数字に呪われた者よ。その体も混乱に見舞われよ!」

 

 その後、彼は両足の感覚が全く無くなったので確認すると、完全に鉄になっていた。さらに、鉄になった部分は生き物のように他の部分に進行しようとしていた。

 驚いた彼に向かって魔王が言った。


「その暗黒魔法はたいしたことないわ。でも、何もしなければあなたの体は5年後に完全に鉄になる。人間の魔法師に、完全に解除できる者がいるから捜しなさい。今日はこの程度にするわ。あなたは、この異世界に転生してフランツ国王になったのよ。スキルを確認すると、かなりの能力ね。せいぜい私を楽しませて。」


「私はナオトだ。」


「あら話せるのね。それによく見るとすごいイケメン!………一つ提案があるわ、あなたが自分の国を魔族に差し出し私に降伏するのなら、あなたの過酷な運命を切り開いてあげてもいいわ。私の夫にしてあげてもいい!私と一緒に、魔族として永遠に生きるのよ。」


「折角のお話ですが丁重にお断りします。国王として国を守る義務を果たし、過酷な運命が待っていたとしても、自分で切り開くつもりです。それと、僕には好きな人がいます。頭がよく、とても優しくて、いつも僕を助けてくれる。それと、あなたより数段美しい。」


「ほ、ほ、ほ!その女と会うのが楽しみね!これから、あなたの5年後の悲劇に向かって楽しく戦いましょう!」


 そう言って、魔王ザラは姿を消した。

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