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4 鉄化魔法の侵攻を止める

 姫軍師フーカが言った。

「何ができるのですか。」

「暗黒魔法の一部なら解除できます。それで、陛下の体に鉄化が広がるのを止めることができます。」


「大魔法師から魔法の杖を授けられた、優秀な弟子ならできるかもしれませんね。陛下、イワンには今まで日が当たりませんでしたが、こういう若者の中には、力を貯めてほんとうに実力がある者が多いです。チャンスをあげてはどうでしょう。」


「フーカの言うとおりだ。イワンにお願いしよう。」


「大丈夫です。お任せください。」


 イワンが手を回すと、いつの間にかその手は魔法の杖をつかんでいた。


「もともとナオト国王の体の中には、鉄の要素が多く含まれています。魔王ザラは暗黒魔法を使い、鉄の要素が他の要素を敵として戦い制服してしまうよう、強い暗示をかけて混乱を生じさせたのです。私は今から鉄の要素にかけられた暗示を解き、混乱を無くし元の調和のとれた体に戻します。」


 そう言うと、両足の付け根に魔法の杖を近づけて一周させ、無詠唱のまま魔法を発動させた。

 すると、腰に向けて少しずつ生き物のように広がろうとしていた鉄化の進行はぴたりと止った。


「終わりました。」


 ナオト国王は自分の両足の付け根をじっと見て言った。

「見事だイワン。」


 続けて彼女が言った。

「すばらしい魔法ですが、同時に物事の真理を的確につかんでいます。医学にも近い考え方がありますね。」


 2人から賞賛されたのに、イワンは厳しい表情で黙っていた。

 その様子を見て彼女が聞いた。

「イワン、あなたは見事に陛下のお体が鉄化されるのを止め、お褒めの言葉をいただきました。けれど、なんでそのような厳しい顔をしているのですか。」


「陛下、姫軍師様、ほんとうに申し訳ありません。私は自分の不甲斐なさを嘆いているのです。確かに鉄化の進行を止めることはできました。しかし、暗黒魔法を完全に解除して、陛下の両足をもとどおりにすることができません。マーリー先生にできることが私にはできないのです。」


 イワンのその言葉を聞いて、彼と彼女は微笑んだ。


「イワン。君がどんなに有能な若者であっても、年月をかけてその道を極めた達人のレベルに一気に追いつくのは難しいんだ。だからこの世界だけではなく、平行する他の世界でも、若者は無限にやってくる毎日を努力して過ごし、先人に追いつき追い越すのを目指すのさ。」


「陛下、その言い方。現実社会の佐藤さんに戻っている。」

「あっ、しまった………イワンよ、私は決めたぞ。そなたを宮廷魔法師とする。」

「えっ。ありがとうございます。」


「ところで、イワンに聞きたい。大魔法師の優秀な弟子であるそなたが、なんで今まで城下で花屋を営んでいたのだ。誰にも知られなかったのか。」


「数年前にお城に出向き、マーリー先生の推薦状を提出させていただきました。担当のお役人から、後で連絡すると言われましたが、今まで何の連絡もありません。」


「陛下、ほんとうに有能な若者を採用することはとても難しいことです。既に高い地位にいる者が自分の地位を守るため、採用の話しをつぶしてしまうこともあるでしょう。」


「我が国が栄えるためにはゆゆしき問題だな。家臣に意識改革を求め、私はアンテナを高くすることにしよう。」


「年齢バランスを考慮して採用計画をたてることが必要ですね。全ての年齢層がその特性を活かし支え合う組織にしていくことが重要です。」


 彼女は思い出した。

(佐藤さん。転生前にオフィスで似たような話をよくしましたね。)


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