16 戦略を立てる2
宮廷魔法師イワンが、決意を込めた真剣な顔で言った。
「姫軍師様。良いことを思いつきました。私が魔法を使い、オリンピア街道に亜空間の入口と魔法の迷路を造ります。そうすれば、さきほど申し上げた問題点はなくなります。」
「魔王軍が街道を進行したタイミングで、亜空間の入口を開ければいいのですね」
「はい。」
「大切なことを確認したいのですが、亜空間の迷路はいったいどれほど保つのですか。」
「魔法で一時的に作られたものですから、長くてせいぜい1日くらいだと思います。さらに、オークや獣人の象族のように、力の強いものから何回も打撃を加えられると崩壊してしまう可能性もあります。」
「亜空間の迷路の出口は、この世界のどこにでも自由に設定できるのですか。」
「私の魔法力次第ですが、理論的にはどこにでも出口を設定できます。」
「高い空の上、深い海の底、暑い火山の火口…それらを出口とすることで、できる限り魔王軍の数を減らすことができたら良いと考えています。後は全てイワンに任せます。よろしくお願いします。」
「はい、わかりました。御期待に添えるよう精一杯がんばります。」
………
姫軍師フーカは国王ナオトに、魔王軍との戦いのための戦略について報告していた。
「陛下、10万もの大軍である魔王軍がダリル平原に降り立ち、オリンピア街道を進行した時、迷路のようにいくつかの亜空間の入口を作り、そこに迷い込ませることで魔王軍の戦力を分散させます。」
「迷い込ませた後はいったいどうなるのだ。」
「はい陛下、宮廷魔法師のイワンから、亜空間の迷路が存在できるのはせいぜい1日だと聞いております。また、オークや獣人が打撃を加え、崩壊してしまう可能性もあるそうです。」
「それは解決しなければならない、大きな課題だな。」
「説明を続けます。迷路の出口を高い空の上、深い海の底、暑い火山の火口などにして、急いで迷路から出ようとするオーク、ゴブリン、獣人族の数を減らすことを考えています。」
「最終的には我がフランツ王国の勇敢な兵士5千人が、剣をとり戦わなければならないのだな。ところで、魔王軍を構成するオーク、ゴブリン、獣人族の内、獣人族5千人がこちらの味方に回ってくれると聞いたが。」
「申し訳ありません。獣人族の大部分3万人ほどは魔王軍に残ることになり、私の力不足で5千人しかお味方いただけませんでした。」
「姫軍師の責任ではない、むしろ5千人も味方になってくれたことの方がお手柄だ。」
「最終的にどれほどの数の魔王軍が残り、人間の兵士がオーク、ゴブリン、獣人族と戦わなければならないのか、予測は大変困難ですが、こちらの兵力をかなり上回る可能性が高いと思います。」
「剣、槍、弓矢など武器の用意も大切だな。」
「はい、この国の鍛冶師を動員して出来る限りの準備を進めておりますが、なにぶん手作業なのでなかなか進みません。品質を保つことがとても難しいのです。それで、今、この国以外から優秀な鍛冶師を雇い入れようと努力しています。しかし、正直申し上げてなかなか見つかりません。」
「重大な問題だと思う。フランツ王国として、優秀な鍛冶師を雇い入れるための報酬は惜しまないつもりだ。それに加えて、現在働いている鍛冶師の報酬を上げることとする。」
「陛下、ありがとうございます。」




