15 戦略を立てる
「ふーっ、兵力差10倍か………」
宮殿にある姫軍師の執務室で、机の前に座っていたフーカの口からため息とともにひとり言が出た。転生する前の北川風香は歴史に強い興味をもち、特に過去の戦争の歴史についてはよく知っていた。
彼女のその知識が、かなり絶望的な結論を導き出していた。
「『寡をもって集をうつ』ね。でも、10倍の戦力差を逆転した歴史の例は非常に少ないわ………」
ネガティブなひとり言ばかりが口から出た。机の上には、10万の魔王軍が降り立つと予想されるダリル平原からオリンピア街道を経て、王都イスタンに至るまでの地図が広げられていた。
彼女が真剣な表情で考え事をしていた時、フーカの膝に子猫が乗ってきた。
子猫の姿のままでブルーが話しかけた。
「姫軍師様、ものすごく大きな責任を背負われて大変ですね。少しの時間、考えるのを止めて休みませんか。」
「そうですね。ブルー、心配してくれてありがとう。」
地図をちらっと見て、ブルーが言った。
「これは、魔王軍の侵攻経路ですね。」
「はい。10万の軍勢が通ってくる道です。」
「この道はとても広い道ですね。いっそ、たくさんに区切って迷路のようにしてしまったらどうですか。」
「あ!!!名案です。迷路では単純に直進ができす、さらにすばらしいのは少人数で動くしかないことです。迷路で魔族の戦力を分散させて、そこをたたく。すばらしい戦略ができました。」
「そんなにほめていただくと照れてしまいます。おいしいお茶があります。少しの時間、戦争のことをお忘れになりブレイクするため飲みませんか。おいしいお菓子もありますよ。」
「いただきます。でもブルー、是非お願いがあります。」
「何でしょうか。」
「もう少し子猫の姿で私の膝に乗っていてくれませか。あなたの美しい毛並みをなぜてモフモフしたいものですから。」
「はい。もちろん良いですよ。」
………
姫軍師フーカが副官である宮廷魔法師イワンと打ち合わせをしていた。
「ダリル平原に降り立つ魔王軍を、オリンピア街道を迷路化して少人数に分散させてから、戦いを仕掛けようと考えています。イワンはどう思いますか。」
「とても良い考えだと思います。しかし、問題点が2つあります。1つは、魔王ザラが予告した魔王軍の侵攻まで後5か月しかありません。その間に広大なオリンピア街道全域に迷路を建設するためには、国民を総動員して建設に取りかかったとしても間に合いません…
「…もう1つは、オリンピア街道はフランツ王国の中で人や物が流れる大動脈です。工事により街道を使えなくすることは、社会・経済に大打撃を与えることになります。」
そう言った後、イワンは難しい顔で考え込んだ。
フーカも、オリンピア街道を迷路化することに現実性が乏しいことに気がついて、黙り込んでしまった。
考え込んでいたイワンの心の中に、先生である大魔法師マーリーから言われた言葉が浮かんだ。
「…おまえしかできない役割がある。おまえは、姫軍師様の戦略の助けになるようなすばらしい魔法を完成させなさい。年老いて決まり切った考えしかできない私より、成長過程のお前が、10倍の戦力差を逆転するためのピースを作るのだ。」
(魔法か………人の力でオリンピア街道に迷路を造るよりも、早く造ることができる。それと、実際の人や物の流れを止めずに済む。)
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