13 獣人族との交渉4
ブルーが話し始めた。
「獣人族の族長会が開催され、まず私がスパイとして、フーカ様について収集した情報と意見を述べました。もちろん、人と獣人、そして動物との橋渡しになれる方で、共存と繁栄を目指しているのは本心。交渉相手としてすばらしい方だと報告しました。…」
「…しかし獣人族の間には、人間に日の光が差すこの世界から追い出され、魔界に住まなくてはならなくなったという悪い感情があります。それで、族長達の中には、フーカ様のお話がとても信じられないという意見が多く出されました。ところが、私がある体験のことを話したら、族長会の空気が一気に変わりました。」
「どのような体験を話したのですか?」
「子猫の姿になった時、フーカ様が私にさわり、その胸に抱きなでていただいたと話したのです。その話しをみなさんにしたら、会場の中があまりの驚きで完全に沈黙しました。歴史が始まって依頼、動物に対してそのようなことをした人間はいない。皆無だからです。」
「子猫にさわり胸に抱きなでることが、そんなに驚きだなんて。私は人間の歴史史上初の快挙をしたということですね。でも、これからは何千何万の人が日常的に行うような世界に変えていきたいと思います。」
「フーカ様、今日は獣人族に伝わるおいしいお茶を御用意しました。交渉が始まるまでみなさんで飲みませんか。」
「喜んでいただきましょう。そうそう、今日きっとブルーに会えると思って、この間あげることができなかったビスケットを持ってきました。一緒に食べましょう。」
………
きっかり正午に、獣人族の代表者の2人がテントに入ってきた。大魔法師マーリーも仲介役として同行していた。獣人族は2人とも、身長が2メートルを超えるような大男だった。
全員が交渉の席に着くと、マーリーがそれぞれの出席者を紹介した。
「こちらがフランツ王国の代表、姫軍師フーカ様、それと宮廷魔法師イワン様です。そしてこちらが獣人族の代表、レオ様、それとティグル様です。」
4人がそれぞれあいさつを交わした。
レオが言った。フーカにはライオンのように見えた。
「姫軍師のお考えは我々獣人にとって、とてもすばらしいものだとは思います。しかし、非常に疑問に思うのは、他の人間達が我々をどう思っているかということです。」
「レオ様のおっしゃるとおり、確かにほとんどの人間は現在、獣人の方々や動物達を嫌悪しています。しかし、その嫌悪感には理由がありません。たぶん、物心ついた子供の頃からそのような嫌悪感を刷り込まれているだけだと思います。…」
「…私はその嫌悪感を変えてみせます。あなた方のように力強い獣人のみなさんには尊敬を、かわいらしい獣人のみなさんには安らぎを、早く走り空を飛ぶ獣人のみなさんにはあこがれを感じることが絶対にできるはずです。私は、別のある世界で、多くの人間達がそのような感情をいだいていることを知っています。」
ティグルが言った。フーカにはトラのように見えた。
「現実的なことを伺いますが、もし、今回の魔王軍との戦いにおいて、我々獣人がフランツ王国の味方をしたとすれば、魔界でひっそりくらしている我々を、この世界のどこに迎えていただけるのですか。」
「そのことについては、ナオト王と慎重に検討しました。フランツ王国の南には大森林と高原が広がり、ほとんど人間が住んでいない広大な土地があり、そこに移住していただきます。人間と平等な権利を有する、フランツ王国の正式な国民になっていただくという条件付きではありますが。」




