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11 獣人族との交渉2

 大魔法師マーリーに、獣人族との交渉の場を設けることを依頼してから数日後、姫軍師フーカが宮殿の庭園を歩いていると、侍女や庭師達が大勢で何かを追いかけていた。さらに、大きな声が聞こえてきた。


「あの動物、あっちに行きました。」

「すばしこくて、なかなか捕まえることができません。」

「みんなで輪になって囲んでしまうんだ。」


 とても気になり彼女が近づくと、ちょうど、逃げていた動物を輪の真ん中に追い込んだところで、物騒な言葉が聞こえてきた。

「弓矢で殺してしまえ。」


 急いで彼女が輪の前に出て確認すると、それは子猫だった。

「殺す必要はありません。これは可愛い子猫ではないですか。」

「姫軍師様。動物に名前はなく、少しも可愛くありません。動物はこの人間の世界にいてはならないのです。」


「やめてください。」

 そう言うと彼女は輪の真ん中に出て行き、子猫に近づいた。子猫は興奮してうなっていたが、彼女は優しくなだめた。


「子猫ちゃん、大丈夫よ。私は何もしないから、お出で………」

 転生する前の彼女は大の猫好きで、田舎の実家に猫を数匹飼っていた。子供の頃から猫と良く遊んで、猫の気持ちを理解できるほどだった。


 彼女が手を差し伸べると、子猫の興奮は収まり安心な場所だとわかった彼女の胸に飛び込んできた。

「この子は私が飼うことにします。ほんとうにおとなしい性格ですので、みなさん、いじめないでください。」


 彼女はその子猫を抱きながら、自分の部屋に帰って行った。

(猫という名前を知らなくて、全く可愛いと思わないなんて。この世界が異世界だと初めて強く思ったわ。転生する前の世界で猫は大人気で、SNSでも猫の写真だけでよくバズったことが多かったのに。)


 抱いていた子猫を下ろすと子猫に言った。

「少し窮屈かもしれませんが、しばらくはこの部屋の中にいてくださいね。」

 それを聞いた子猫は大人しく、スフインクスのように座った。


「かわいらしいわね。あら、あなたの目は青色なのね、それによく見ると体毛も青がかっている。決めた、子猫ちゃんの名前は『ブルー』にします。そのものズバリですね。」

 彼女はそれから、戸棚のどこかに置いてあったビスケットを餌にしようと探し始めた。


 ビスケットを見つけたので、子猫にあげようと振り返った瞬間、そこに小さな可愛らしい女の子が経っていた。

「えっ!あなたは誰ですか。いつの間にそこにいるのですか。」

 

「姫軍師フーカ様、私が誰だかおわかりになりませんか。」

 彼女が女の子をよく見るとなんとなくわかった。

「もしかして、子猫ちゃんですか。」


 女の子が笑いながら言った。

「そうです。さきほど『ブルー』という名前をいただきました。これからもそのように呼んでください。」


 彼女が鑑定能力を使うと、女の子の本当の正体が判明した。

「今は人間に擬態している獣人ですね。」

「そうです。人間、獣人、子猫、それぞれの姿に変化することができます。」


 ブルーは彼女の目の前で、3つの姿に変化した。

「驚かせてほんとうにすいません。実は私は、姫軍師フーカ様がどのようなお方なのか、獣人族の族長の命を受けてスパイとしてこの宮殿の中に潜入しました。」


「私のことをどのように報告しますか。」

「人と獣人、そして動物との橋渡しになれる方だと、共存と繁栄を目指しているのは嘘ではない。交渉相手としてすばらしい方だと報告します。」


 それからブルーは子猫の姿になり去ろうとしたが、言い残したことを子猫のまましゃべった。

「フーカ様。次にお会いした後ずっと、私をおそばにおいてください。『ブルー』という名前素敵です。」

「はいブルー、楽しみにしています。」

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