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夜の城趾
真っ暗なはずの道は、雲海の上に浮かぶ満月が照らしていた。
樫やブナが生い茂る中でも、月の光は足元までやさしく届いてくる。
かつて古墳群があったこの丘には、
いまは現代風の屋根が所狭しと並んでいる。
それでも、ところどころに残る古木たちが、
この地に積もった時間の深さを静かに物語っていた。
目を閉じると、満月の光に包まれながら、
雲の上を渡って対岸の山の城へ行けそうな気がした。
あごをそっと上げて目を開けると、
月は薄い雲に光を奪われ、
世界は静かにその輪郭を失っていく。
ふと振り返ると、そこに——
闇の底から浮かび上がるように、
かつての城が、確かに在った。




