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昼下がりの城趾
とある団地を抜けた先に、城の跡があると聞いた。
足元から視線を滑らせると、思いのほか急な坂だった。
木と土でできた階段には、どんぐりが散らばっている。
踏み外せば、布団の上を歩くように、ふかふかの土が足を呑み込んだ。
登りきった先の展望台で、風が視線を左から右へと導く。
眼下には大きな川が流れ、その周囲に広がる平地を包み込むように、
いくつもの小さな山々が連なっていた。
それは、街の地図が静かに呼吸しているようにも見えた。
現代の街並みのはずなのに、ここでは川のせせらぎが聞こえる。
聴こえるはずのない音が、なぜか確かに耳の奥に届いていた。
車も人も、家々の気配すら遠のいて、
ただ川と畑だけが、時を忘れた絵のように広がっている。
ふと、思った。
いま私の目の前にあるのは、
かつてこの城の見張りが見ていた、平和な昼下がりなのかもしれない。




