二コラの帰還
順調に露店は営業していった。
売上げも在庫も安定していて、順調にこの街で過ごしていた。
昼下がり、人通りが落ち着いてお客さんも少ないタイミング。
少し考える余裕が出てきた。
「もう二週間かぁ」
短いけれども、ニコラさんの言われていた期間はもう来てしまった。
あとはニコラさんが戻ってくるのを待つばかり。
そうなると、お店は返さないといけないけれども。
「久しぶりだな」
男性の声がした。
「いらっしゃいませ」
お客さんだと思って、いつものように返事をしていた。
もう慣れちゃったな。
「いや、客じゃない」
「え?」
そう言われたため、私は一瞬狼狽えてしまった。
ギルドの人かなと思ったけれども、様子が違っている。
少し服が汚れている感じで、包帯を巻いている場所も。
「悪いな、戻るのが遅れた」
申し訳なさそうにしながら、私を見つめていた。
その声は軽く言っているようで、どこか掠れていた。
長く歩いてきた人の声だった。
「ニコラさん?」
もう一度見てみると、二週間前に会った男性の姿だった。
確かに雰囲気が少しだけ違っているかもしれないけれども、完璧にそうだった。
「店、守ってくれてありがとうな」
「生きていて良かった……」
安堵感が私の胸に広がっていく。
ついにやりとげたような感じが。
店を守れた、というより。
約束を守れた気がした。
「運が良かっただけだ。色々とあったがな」
「盗賊に……?」
ニコラさんの持ち物は袋を持っているだけで、それ以外には無さそうだった。
「ああ。しつこかった」
疲れたような表情を見せていた。
それでも露店を見ながら感心しているようだった。
商品の並び、袋詰め、看板。
一つ一つを確かめるように視線を走らせる。
「……続いているのか」
意外だという気持ちもあるみたい。
私も同様だけれども。
「はい。何とか」
にっこりとしながらニコラさんに返事をする。
「本当に、何とかって顔じゃねえな」
少し呆れながら呟いているようだった。
「勝手に仕入れもしました。すみません」
違っていたら申し訳ないけれど。
「いや」
ニコラさんは軽く首を横に振っていた。
「怒らないんですか?」
「止めていたら、ここは空っぽだったろ」
「……はい」
その指摘に対して、私ははにかみながら答えた。
「改めて、守ったな」
ニコラさんは一度、真剣な表情をして、私を再び見つめ直していた。
その一言は、軽いはずなのに、胸に重く落ちた。
「え……」
「逃げなかった。それで十分だ」
嬉しそうにしているようだった。
「こいつがやってたんだよ。店」
隣の店主がニコラさんに伝える。
「へぇ……そうか」
補足するような感じだったけれども、面白そうに私を見ている。
「よし、これからを店が終わったら話そう」
頷きながらそう提案した。
「はい」
私はそれに同意したのだった。




