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聖女を信じて悪役令嬢を陥れ続けたら、断罪されたのは私でした  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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守っている露店

 次の日、私は普通に露店を営業させていた。

 お客さんはいつも通り来ていたけれど、通りは警備であろう傭兵が行き来していた。

 剣の柄に手を添えたまま、周囲を見渡している。

 笑ってはいないが、おびえてもいない。

 街は、昨日より少しだけ構えている。

 盗賊の対策のためかな。

 北街道の倉だけじゃなくて、この露店街にも来るかもしれないから。

 完全に安全じゃないとは思うけれど。


「昨日、盗賊に襲われそうになったって聞いたけれど、大丈夫だったの?」


 常連になっている主婦がそう訊いてきた。


「はいっ、何とか」


 私は笑みを見せながら、返事をする。

 昨日のこと、知っているんだ。


「無事で良かった」


 主婦は私に優しく言葉を。

 でも翌日なのもあって、怖かった記憶ははっきりと残っている。

 手は震えていないけれど。

 だけど、短刀の光だけは、まだ脳裏に残っている。


「じゃあ、干し葡萄ぶどうを買っていくわね」


「ありがとうございます!」


 そしていつものように買っていった。

 嬉しい気持ちになってくる。


「昨日の件、聞いたぞ」


 続いてやってきたのは、旅人。

 話ってすぐに聞こえてくるんですね。


「まあ、ただ出会っただけですけれども」


 私は苦笑いして返事をしていく。

 この旅人は干し肉を買っていった。

 それから露店の前では少しだけ、雰囲気が良さそうに感じた。

 私に話をしたり、マッサージや商品を買っていったり。

 お昼になると、干し肉や香草袋などが売れていく。

 マッサージをしていくお客さんも並んでいて、露店は賑わっていた。


「肩もみ、お願いできる?」


 そんな時に黄色髪の女性がやってきていた。


「勿論ですよ」


 私は彼女へマッサージを。


「それにしても、凄い瞬発力ですね」


「まあね。ずっと鍛えてきたから」


 はにかみながら返事をする彼女。

 運動神経が抜群なんだ。


「昨日はありがとうございました」


「ううん、ここでずっとお店をやっていくの?」


 彼女はそう問いかけてきた。


「実は代理だから、戻ってきたらどうしようかなって」


「そうなんだ。また会えるといいね」


「私もです」


 彼女も私も笑みを見せながらそう言葉を交わす。

 そう言った彼女の言葉は、別れの挨拶みたいにも聞こえた。

 でも私は、その意味を深く考えなかった。

 マッサージを終えたら、香草袋を買っていった。


「嬢ちゃん、板に付いてきたな」


 お客さんが落ち着いたタイミング。

 隣の露店主がそう話しかける。


「えへへ……」


 照れてきて、笑みを見せながら頭をかるくかいた。

 このお店、守れているんだ。

 夕方になって、店仕舞いをしていく。

 そして宿で売上げの確認を行っていった。


「凄いですわね。こんなに売り上げるなんて」


 帳簿や現金を確認しながら、アプリルがそう言葉を。

 驚いているようだった。


「続いていますね」


 利益もはっきりと出ていて、順調な感じ。


「守れていますわね」


「そうかな……」


 私はまた顔が紅くなってしまう。

 嬉しいから。


(守れているかぁ……)


 誰かを断罪して得る安心じゃない。

 ただ、今日を無事に終えられた安心だった。

 破滅を回避して、お店を守っている。

 その姿は、乙女ゲームのヒロインじゃない。

 小さな露店で頑張っている店主、それだけだった。


「もうすぐニコラさんが帰ってくる」


 言われていたのは二週間だから。

 帰ってきたら、返す必要がある。

 だけど、これからもなんとかなりそう。

 宿から見える街の灯り。穏やかな感じで、私は落ち着く気持ちになる。

 静かな夜がこの街に広がっていた。

 それは、奪われた静けさではなく、守られた静けさだった。


 怖いことは、きっとまた起きる。

 それでも、私はこの世界(ここ)で続けていく。

 逃げるためではなく、守るために。


 この世界でも、希望を感じていた。

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