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聖女を信じて悪役令嬢を陥れ続けたら、断罪されたのは私でした  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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安定した露店

 私達は商品を仕入れて、宿へ帰ろうとする。

 空に明るさは残っているけれども、夜風が冷たくて、少し震えが起こる。


「あっ……」


 荷車の車輪に血痕けっこんがあった。

 あの荷車も被害に遭ったのかもしれない。

 車輪が削れていて、無理に停めようとしたのかな。


「……ニコラさん、大丈夫だよね」


 ふと、気になってしまう。

 私が代理でいるけれど、ずっとという事にならないよね。


「”運が悪ければ”という言い方が引っかかりますわね」


 歩きながら私達は会話をしていく。


「そうだよね」


 少しだけ笑みを出して、不安を抑えようとする。


「もしも戻らなかったら?」


 私はまた誰かの場所をうばうことになるのかな。

 代理のはずなのに、その席に慣れてしまう自分が少し怖かった。


「北街道、昨日封鎖時間があったって聞きました」


 手伝いのためにロータスもやってきて、仕入れた品物を運んでもらっている。


「結構深刻な状況ね」


「あたし達も気をつけないと」


 そう思いながら気をつけて帰ったからか、この日は何事もなく戻ることが出来た。

 でも、危険と隣り合わせなんだろうね。


「仕入れたのって凄いですね」


「まあね、また手に入れられるか分からないけれど」


 苦笑いしながら、ロータスの言葉に返事する。




 数日後、仕入れの甲斐かいもあって、品切れになることはなく露店を続けられていた。

 でも、また仕入れられるかな。

 まだ日数はあるけれど。

 断られたりしないかな。

 それが気がかりだったりする。


「どうしたの?」


 ほんのちょっとだけ、聞き覚えのある感じで聞こえて、考え事をしていた頭を切り替える。

 黄色髪の女性が露店の前にやってきていた。

 先日も来ていましたね。


「肩もみ、良いかな?」


 微笑ほほえみながら問いかけてくる。

 嬉しそうにしている。


「勿論良いですよ」


 私は彼女にマッサージを行っていく。

 結構身体はしっかりとしているね。

 特に脚の筋肉が締まっている。

 立ち上がる時の重心移動も無駄がない。

 まるで、走ることに慣れている人みたいだった。


「前も来ていただきましたね」


「だって、気持ちいいんだもん。ガチガチになりやすくて」


 彼女の言っているとおり、肩に固さがあった。

 どこかでやったことのあるような、感触だけれども。

 気のせいだよね。何人もマッサージをしてきたのだから。


「ありがとう」


 しばらくほぐしていって、女性は嬉しそうな表情をしていた。


「また来てくださいね」


「もちろん!」


 彼女ははにかみながら、香草袋も買っていって、お店を後にした。

 常連さんね。彼女も。

 それから何人も商品を買ったり、マッサージをしたりで、忙しくなっていく。


「サフィー、干し肉三つ!」


 いつの間にか、名前で呼ばれるようになっていた。

 朝は旅人、昼は主婦、夕方は帰りがけの職人。

 売れ筋も少しずつ分かってきて、次は何を仕入れたら良いのか考える余裕まで出来ていた。


「商品売れているんだな?」


「はい!」


 落ち着いたタイミングに、隣の露店主がそう話しかけていた。


「良かった。紹介状を渡した効果があったみたいだな」


「ありがとうございます」


 にっこりとしながら、店主に答える。


「本当、盗賊は増えているからな」


 店主はそう空を見ながら口を開いた。


「北の橋の先だ。昼間でも襲われるらしい」


 そんな情報が来ているんだ。


「顔を隠して、商人だけを狙う。慣れてる連中だ」


 店主の声は低く、冗談めかしてはいなかった。


「そうみたいですね……」


 あの車輪を見ていたら、そう遠くないところにあるのが分かる。

 襲われないようにしないと。

 私はそう心を引き締めたのだった。


 破滅はめつを避けるために奪っていた頃とは違う。

 今は、守るために立っている。

 それだけは、絶対に手放さない。

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