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聖女を信じて悪役令嬢を陥れ続けたら、断罪されたのは私でした  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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北街道の倉

 夕方、店仕舞みせじまいをした後に私は言われた北街道の共同倉へとやってきた。

 隣の店主から貰った紹介状を貰って。

 街道に面して作られた大きな石造りの倉庫、夕方だけれども。


「ここで仕入れているのね」


 アプリルがそう訊いてきた。

 仕事が終わったから、一緒に来ていた。


「そうみたい」


 この倉庫は荷車や商人、帳簿係などこの時間においても、ある程度のにぎわいがあるようだった。


 私はそこへ向かって歩く。


「用件は?」


 倉庫番らしき男性が訊いてきた。


「干し葡萄と干し肉などの補充をお願いしたくて……」


「登録番号は?」


 私が用件を伝えた途端、即答するように問いかけてきた。

 そんなもの、私は持っていない。


「……ありません」


 私はそう答えるしかなかった。

 一気に空気が冷えたような気がする。

 アプリルはこの様子をじっくりと見ていた。


「登録商人か、正式代理でなければ卸せん」


 倉庫番はそう答えた。


「私はニコラ・コロシェツの代理です」


「証明は?」


 言われたから、紹介状を出すことにした。


「隣の露店の署名か」


「はい。短期ですが店を預かっています」


 すると、突き返すような事はしなくなった。

 どうやら信じて貰えたみたい。


「……今は卸値が上がっている」


「どうしてでしょうか?」


 少しだけ言い淀むように、そう伝えてきた。

 値段が上がっているって。


「この街道で盗賊が出ているからな、輸送が止まっているんだ」


 そういう理由か。

 盗賊って、やっぱり元の世界で生きている場所とは違うんだ。


損失分そんしつぶん補填ほてんする必要がある」


 向こうも商売だから、ある程度こっちにしわ寄せさせる必要があるのね。

 でも無理に道理を通そうとすれば、売ってくれないかも。


「少量でも構いません。現金なら持っていますので」


 それで売ってくれるなら。


「掛けは使わんのか?」


 後払いね。

 でもそれは使わない。


「信用は、まだ持っていませんから」


 隣の店主に迷惑をかけるわけにはいかない。

 私の判断なのだから。


「通常よりも二割高くなっているが、良いのか?」


(本当に高い……でも空よりはいいかな)


 買うしかない。

 在庫が切れるよりは良いのだから。


「分かりました買います」


 私は現金として持っている範囲内で、購入していく。


「ほう、結構仕入れるんだな」


 倉庫番はじっくりと見ている。


「守りたいだけです」


 それを私は思っていることを打ち明ける。


「何を?」


「店を」


 すると、表情が少しやわらいだ気がする。


「今回だけだ」


「ありがとうございます」


 品物を袋に入れていく。


 倉庫番にお金を支払った。


「売上帳簿、次回持ってこい」


「ありますわよ」


「アプリル……持ってきたの!?」


 すると、ずっと様子を見ていたアプリルは、帳簿を取り出した。


 用意周到よういしゅうとうね。


「持っているのか。悪くないな」


 そう帳簿を見て、感想を言っていた。


 彼女には感謝しかない。


「コロシェツだが、戻ってきていない」


 帰り際、そう倉庫番はつぶやいていた。


 用事で行っているって言っていたけれど。


「盗賊の件で、ですか?」


 もしかして……そう感じた。


「運が悪ければな」


 どうなんでしょう。

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