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聖女を信じて悪役令嬢を陥れ続けたら、断罪されたのは私でした  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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仕事が決まった夜

「で、サフィーはそれを引き受けたと?」


 夜に宿屋でアプリルから問い詰められていた。

 当たり前かもしれないけれど……事実上怪しいことを引き受けている状態だから。

 二週間不在となる露店の店番って。

 その人が逃げたと思われても、仕方ないし。


「うん……」


 私は肯定するしかなかった。

 下手をすれば、学院でアプリルを陥れようとした以上に危険な事だから。


「確かに仕事よ。頼まれたことを引き受けるって」


「もうお金も貰っちゃったから」


 私はニコラさんから貰ったお金を見せる。

 そこそこ纏まった金額。


「結構大金じゃない。どうするのよ」


「引き受けたからには、店番をするしかないよ」


 これで逃げたらそれこそ信用を失う。

 なら、戻ってくると信じて居るしかない。


「ええ、そうね。こうなったら、するしかないわね」


 呆れながらアプリルはため息をついていた。

 どうしようもないのだから。


「ロータス、どんな感じだったの? その人って」


「ちょっとだけ怪しい感じもありましたが、信用はある程度出来そうでした」


 ロータスの話を聞いて、少々訝しんでいる表情をしたアプリル。

 直球に近いけれども、私としてもそんな感想。


「そうだったの。まあ……頑張って」


 ちょっとだけ微笑みながら、エールを送ってくれた。

 喜んでいるのか分からないけれど……


「ねえ、借りた部分を返してもいい?」


 これだけ貰っているから、アプリルから立て替えてもらったのを返したくなった。


「そのお金は、その人物が帰ってきてからにしなさい。下手したら返すハメになるかもしれないから」


 でもアプリルは受け取らなかった。

 手を付けないようにって言っているかのように。


「分かった。アプリルは仕事、決まったの?」


「ええ。教会の掃除ね」


「あたしはお屋敷の給仕です!」


 二人ともあっという間に、決めていたんだ。

 しかもクリスタリア学院での経験が活きるような仕事を。


「良かったじゃん! メイドとしての仕事が出来るね」


「イヤミで言っているの?」


 アプリルはちょっとだけ目を細めながら、私を見ていた。


「そんな訳じゃ……」


「まあ、良いわ。明日から仕事だから」


 微笑みながら表情を戻した。


「これは頑張らないとね」


「あなたもね」


「うん……」


 まずは二週間、あのお店を守らないとね。

 不安と期待を感じながら、眠りにつくのだった。

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