聖女の教室
「ねえ、今度の試験はどうかしら?」
次の試験が近づいたある日、グルナ様が私の事を心配していた。
前のカンニング疑惑があってから、グルナ様も気にかけているのね。
「難しいかもしれません……」
勉強をしているけれども、流石にアプリルから教えてもらったら、またカンニングって言われるかもしれない。
モニカだってバカじゃないし、もっと巧妙な手を使ってくるかも。
だから一人で勉強をしないといけない。
十分に頭の中に詰め込めるか不安だけれど。
「でしたら、わたしが教えてあげましょうか?」
「本当ですか!?」
それだったら、絶対に言われない。
グルナ様から教えてもらったっていえば、誰だって疑うわけない。
モニカだってグルナ様が不正をしているって言えば、モニカが破滅するだろうし。そんな事を言われたくないと思う。
「お言葉に甘えて……」
「ふふ、勿論ですわ」
という事で、私はグルナ様と一緒に図書館で試験勉強をすることにした。
「サフィー、ここう考えると答えにたどり着けますわ」
丁寧に導くグルナ様の声。
その一つ一つの言葉が、宝石のように胸に積み重なっていく。
「わぁ……そうなるんですね」
私は素直に感嘆の声を漏らす。
とても丁寧で、分かりやすい。
これだったら試験でも高得点を取りそう。
すると近くの生徒達が「グルナ様に教わるなんて羨ましい」「やっぱり聖女ね」と囁き合った。
頬が熱くなる。
(アプリルに教えてもらったときは、疑われただけだったのに……グルナ様だと、褒められるんだ……!)
心の中で、その差は残酷なほど鮮明だった。
「ありがとうございます」
「良いの。貴女が試験で上位になれるなら、いくらでも協力してあげるから」
私に教えてくれた事も苦になっていなくて、微笑みながら私へ無償の慈悲を見せていた。
それが私には嬉しくてたまらない。
「嬉しいです!」
ふと、近くにアプリルがやってきた。
掃除道具を持っていて、掃除をするためにやってきたみたい。図書室でも他の場所はあるはずなんだけれども。
「邪魔よ。アプリル・ブラチスラバ」
グルナ様はアプリルに冷たい目を見せている。
私には絶対見せない、氷のような視線を。
「いえ、わたくしは順番通りにしておりますので」
「でしたら、他の場所をしなさい。勉強の邪魔をするつもりなの?」
「勿論そんなつもりはありません。失礼します」
アプリルはグルナ様の言葉に屈したみたいで、私達から離れた場所を掃除している。
時々私達を見るように振り返りながら。
「サフィー、良かったら明日、王宮の庭園で殿下達とお茶会が開かれるの。可愛いサフィーは、来るかしら?」
「殿下が来られるんですか!?」
ついに王子の好感度が直接上げられるチャンス!
これは絶対に行かないと。
「ええ。勿論、貴女も好きにお話しして良いからね」
「是非とも行かせていただきます!」
断る理由なんてない。
むしろ行きたい理由がたくさん浮かんでくる。
これよこれ、グルナ様を信じていたからこのチャンスがやってきたのよ!
やっぱりグルナ様を信じるのが正解ね。
「さて、お勉強の続きをしましょうか」
「はい!」
私はグルナ様と一緒に勉強を続けていく。
この日、グルナ様との勉強が熱中しちゃったから、夜中近くになるまでになっちゃったけれど。




