聖女の奇跡
試験勉強で集中していたある日の昼休み。
陽光が降り注ぐ学院の中庭。突然一人の生徒が崩れ落ちた。
ざわめきが広がり、生徒達は慌てて集まる。
「誰か、先生を呼んで!」
「顔色が真っ青だわ……」
皆、恐怖と動揺で立ち尽くすだけだった。
でも、その輪の中を白銀の髪が揺れて歩み出る。
「お任せください」
静かな声。
グルナさんが倒れた生徒の傍らに膝をついた。
彼女はそっと生徒の額に手を添え、やわらかに微笑む。
「大丈夫、少し休めば元気になります」
不思議なことに、触れられた瞬間から生徒の呼吸が落ち着き、苦しげだった顔が和らいでいく。
驚きの声が漏れ、誰もが息を呑んだ。
「……すごい、さっきまでぐったりしていたのに!」
「奇跡……まるで聖女様だわ……!」
やがて生徒は意識を取り戻し、か細い声で「ありがとう」と呟いた。
その手を包み込みながら、グルナさんは柔らかく微笑む。
「お礼はいりません。皆で支え合うのが、学院に通う者の務めですもの」
その姿に、周囲の生徒達は自然と頭を垂れていた。私も倣って頭を下げる。
尊敬と憧憬が、一斉にグルナさんへ注がれている。
(……こんなの、まるでゲームの”聖女イベント”みたい)
私は胸を熱くしながら、その光景を見つめていた。
それと同時に、試験で絶対に落としてはいけないという気持ちになる。
(このまま何も出来ないままじゃイヤ。私はヒロインなのだから……!)




