第1話
眠気とはおそろしいものです。何も考えずに投稿した連載一話目、しかしその時点で書き終えていた分から先に続かない、しかもミスでそのデータすらをも消去してしまうという悲劇。
という訳で小説を別の話に差し替えたいと思います。こちらは中学の時に書いたもので、話としては多少まとまりないですが、一応完結はしています。
桜舞うある日ある場所で、少女二人と少年一人は、カメラに満面の笑みを向けた。
まだ幼い彼らは、自分たちがいずれ離れてしまう事を知らなかった。離れる訳が無いと信じて疑わなかったのだ。それは彼らにとっては普通であり、疑うものですらなかったから。
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一際強い風がふいて、部屋のカーテンが私を嘲るようにその身を翻し、くねらせた。雨混じりの風を真っ正面から受けながらも私は、窓を閉めようともせずにただ揺れるカーテンをゆるりと掴む。窓から見下ろした光景に、やはり私は何も感じなかった。
「私、死にたいかも」
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ブリキの木こりは心を欲しがった。何かを感じる為の心を。誰かを感じる為の心を。
オズの魔法使いだったか。その本をはじめて読んだのは、絵本を読むにしては些か年を重ねすぎた年齢だった。確か、小学五年生の時だったように思う。有名な話なのにそういえば読んだ事がなかったな、よし、この機会に読んでみよう、とまあ、こんな感じのノリだったはずだ。 だから思ったのだ。ブリキは、もう既に心があるのではないかと。小さな子供なら、何の疑問も持たない所であるのに。或いはもう少し年齢が高ければ、子供向けだからこうなのだろうと、やはり疑問を持たない所であるのに。中途半端に物事が分かっていて、それでいて分からない年齢だったから、思った。
心が欲しい。何かを感じたい。誰かを感じたい。
そう願う時点で、少なくとも『心が欲しい』という願いは叶っているのではないかと、そう思ったのだ。
ただ、『何かを感じたい』『誰かを感じたい』という願いは、例え心があったとしても必ず叶うものではないと、私は思う。
それはまた、別の問題だ。
でも、願うだけでなく、努力すれば、きっと叶う事だとも思う。
何となく、思い出した。どうして思い出したのかは、最早覚えていない。何だったんだろう、などと思いながら私は、あれだけ考えながらも尚止まっていなかった手を、更に早く動かす。
放課後。当番が当たっていた私は、掃除中だった。集まったゴミを、友人の千恵美の持ってくれているちりとりに掃き入れる。
千恵美は、今日の掃除当番ではない。どころか、クラスさえ違う。ただ、他にいる私のクラスの当番の人達は、誰一人真面目に掃除をしていなかったので、私を待っていた千恵美が見かねて手を貸したのである。
「ありがとう。ちえ」
「なんのなんの。この程度、ほんの些事さ」
ゴミを捨てに、ゴミ箱へ向かう千恵美の背中にそう言うと、彼女はちりとりを持っていない方の手をひらひらと振りながら蓮っ葉な風に答えた。
千恵美の手伝いが功を為して、いつも長引く掃除が少し早めに切り上げられた。私と千恵美はスクールバックを肩に掛け、教室を出る。
「…んー」
「どうしたの?」
突然唸りだした千恵美に、私は言った。
「いや、もうあと一週間で卒業なんだなって、なんか、思ってさ」
「そういえば…というか、そう考えると今日の掃除、最後の掃除だったんだ」
「そうだねー」
「まあ、何とも思わないけど」「そうだねー」
千恵美は、泣けない人間だ。―悲しむという感情はあるらしい。ただ、どれだけ深い悲しみを感じても、泣くという感情は分からないと言う。
「センチレンタルな気分にはならないな」
「センチメンタルだね」
私は千恵美の言い間違いを正しつつ、センチメンタルな気分をレンタルできるのだろうか、とありもしないその言葉の意味を考えた。なんて便利なんだろう。実在すればいいのに。
そんな会話をしながら。私はまた心を欲すブリキを思い出す。
千恵美が涙を流せないように、私は怒れない。腹が立つ事はあっても、究極的には赦している。
なんだかまるで―まるで、ブリキのようではないか。心そのものはあるけれど、私と千恵美には心の一部が欠けている。意味合いは少し違っても言葉の上では似たようなものだ。
―ただし、私も千恵美も、それを欲しがっては、いないけれど―




