許されない事だけど。
永久に続く時の中で、僕たちは一瞬だけ、
その手を離してしまったんだ……。
「時勇平気?」
「平気、平気! これ位いつもの事さ」
「……ごめんね。私がもっと強かったら。時勇に迷惑かけないで済むのにね」
「利紀が気にする事じゃないよ」
僕らは逃亡者。利紀はやってはいけない罪を犯した。
人を……殺した。
元・国の姫だった利紀は、ある日自分を殺そうとした男を逆に殺してしまった。
よく言えば、自己防衛だが……結局は、過度な自己防衛に値する。どっちにしようがな。
それを見てしまった恋人の僕は、とっさに思いついた。
この国から、逃亡しようと。僕の……隣の国に逃げれば、きっと助かる。
僕らの国は仲が限りなく悪いから、追手も来やしないだろう。と。
利紀はその案に乗った。逃げれるのなら、もう何でもいいと思ったのであろう。
「時勇。後、3キロを走り抜ければ……私達は一生幸せになれるの?」
「うん。きっと、幸せになれるよ」
「……ごめんなさい。貴方は、何もしてないのに」
「大丈夫だから。僕は君の傍に居るよ。何があっても」
そう言って、利紀の手を軽く握った。それに対して利紀は、強く……強く僕の手を握り返してきた。不安だったのか、その顔はどこか怯えているようにも見えた。
「あと、もう少しだよ! 頑張ろう」
元気づける為に笑いながら言ったら、「あ、ああ。うん」と、生返事をした後握っていた手が震えだした。
その時、複数人の兵隊が現れた。
「時勇様と利紀様ですか?」
こいつらは、敵――― 利紀の住んでた城の兵隊だ。
「……ひ、人違いでは?」
「では、そのフードを取っていただきましょうか?」
僕らは、黙ってしまった。このフードを取れば、僕たちだと言う証明になってしまうからだ。その時、利紀が僕にもやっとの思いで聞こえるような声で言った。
「……時勇。どうするの?」
僕も、返答は小声で言った。
「強行突破する。お前は急いで関所の門へ!」
利紀は無言でうなずき、2人同時に僕は兵隊に、利紀は関所の方へそれぞれ向かった。その瞬間、手が離れた。
その時、放してしまったこの手をこの後、後悔する。
数日後。僕は利紀が住んでいた城の処刑台の前に立っていた。
作戦は、失敗したのだ。
僕らが離れて数百メートル先で、利紀は城の兵隊に捕まった。関所まであと、1キロの所だった。そして、今日は利紀の処刑の日だ。僕は、戒めに処刑はされないのだ。一生、この罪悪感を背負ってゆくのだ。
「では、利紀。最後に申す事は、ありますか?」
処刑者が、利紀に聞いた。
すると、利紀は笑って
「時勇。私を自由にしてくれようとして、ありがとう。私は宇宙一、幸せ者ですよ」
と、言った。その顔の頬からは透明な雫が一つ、またひとつと、地面に向かって規則正しく堕ちて行った。
それに気づかなかったかのように、処刑者は彼女の首に縄を通した。そして―――――――――――。
「と……!!」
民衆に見守られながら、利紀は逝った。
決して胸を張って幸せな最期だったとは、言えないような死に方だった。
でも、僕らが過ごした逃亡の日々は少しだけ、少しだけだけれど幸せだった。
僕らの許されぬ恋の幸せの代償は
あまりにも大きすぎるものであった。
~end~
はじめまして!妹明です!
この度は『許されない事だけど。』を読んでいただきありがとうございました。
表現とか、あまりうまくないので分かりにくい点も多いとは思いますが、
そこは皆様の想像力でカバーしていただけるとありがたいです(^^;)
最後に。
これからも、努力していきますので、
情けをかける感じでこれからも読んで頂けると嬉しいです。