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こぼれ話 待ちに待った



 トーベアナ王国でオスカーがシャルロッテを捕獲してからというもの、移動は全て抱っこで船内を含めて泊まる部屋は一緒で。更に言うなら眠るベッドも一緒だった。


 そう、同衾。けれど眠るだけでそこに男女の何かがあった訳ではない。


 いや、オスカーがしっかりと腕の中に抱きしめていたから、そして眠る前におでこにちゅうしてお休みの挨拶をしていたから、何もないとは言わないのだろうか。そこは個々の判断に任せよう。



 シャルロッテ好き好きモード発動中のオスカーは、もちろん1日でも早くシャルロッテと本当の意味で夫婦になりたかったけれど、我慢するのはそれはもう大変だったけれど。


 彼の中に芽生えたロマンチックな感情が、早々のオオカミさん化に待ったをかけたのだ。



 シャルロッテとの初めての夜は、最高にロマンチックで一生の思い出に残るようなものを。



 側近レナートも、オスカーの意見に賛成し、オオカミさん化防止に協力してくれた。



 移動中に泊まったホテルで初夜を迎えても、それなりに盛り上がったであろう事は間違いない。だって、オスカーが取ったのは最上級の部屋だったから。


 けれど、一度始まってしまえば止まれる自信がなかった。オオカミさんになった後は暫く人間に戻れない妙な自信がオスカーにはあった。

 きっとシャルロッテを味わってしまったら、最低でも一週間は寝室にこもる。そう、最低(・・)で、だ。


 もう二度とシャルロッテに会えないかもしれないという不安を一年近く味わったオスカーは、会えない時間分、想いを募らせまくっているから。


 今回のトーベアナ行き、オスカーに同行したのは側近レナートと護衛ひとりだけ。

 シャルロッテの世話ができるような侍女は連れて来ていない。女嫌いはシャルロッテ以外に今も発動中だから当たり前なのだが、その他にもまた空振りに終わる可能性の方が高かったからでもある。


 もちろん、シャルロッテの逃避行に付き合っていた彼女付きの侍女アニーは、今回の帰国に同行している。だが女手はアニーだけなのだ。


 オオカミさん化したオスカーに美味しく食べられてしまったシャルロッテをアニーひとりに一週間以上世話をさせる? 答えは当然NOである。



 オスカーだけが満足するのではなく、シャルロッテにとっても最高の思い出となる初夜を。

 もう二度とオスカーから離れようなどと思わないように。むしろ自ら望んで側にいたいと思ってくれるように。



 それなら、使用人全員が協力してくれるであろうマンスフィールド邸に戻ってからが最善だ。



 それ故の『急ギ、夫婦ノ部屋ヲ、トトノエルベシ』の電文だった。










 真っ赤な薔薇の花びらがあちこちに散らされた広いベッド。

 どこからか漂ってくる甘く、けれど少し退廃的な香り。

 薄暗く落とされた灯りと、リラックスの為に用意された軽めのアルコール。

 まさか楽団まで手配していないと思うが、遠く部屋の外から聞こえてくる微かな旋律。




 ぴかぴかに磨き上げられ、可愛らしい、けれど露出度の高い夜着姿のシャルロッテと、髪を乾かす時間も惜しかったのか、まだ湿り気の残る髪のままガウンを羽織ったオスカーと。




 そろそろと、2人揃ってベッドの端っこに腰を下ろす。


 沈黙が支配する静かな空間に、ベッドが軋むギシ、という音だけがやけに響いた。




「・・・緊張してるか?」


「す、少し・・・」


「実は、俺もだ」



 シャルロッテも、オスカーもドキドキの初夜がこれから始まる。







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