表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/54

脳内に祝福の鐘が鳴り響く



 オスカーと契約結婚をして26日目。



 今朝もまた、シャルロッテは足取り軽くダイニングへと向かう。


 もはやお互いに習慣として馴染みつつある「おはよう」の挨拶と、最近少し弾むようになった食事中の会話。

 オスカーはティトリー(人参に似た野菜)が苦手というちょっと可愛らしい弱点がある事も知った。



 けれどこの日は、そんないつもとは違う始まりだった。



 挨拶をして、席について。


 食事を始めて少ししたら、オスカーがシャルロッテに質問をしたのだ。



「明日の予定は何かあるか?」


「予定、ですか?」



 シャルロッテはきょとんと聞き返した。

 オスカーは気まずそうに視線を逸らす。



「・・・結婚式の予定を無理にねじ込んだしわ寄せで、ずっと執務に追われていた」


「はい、ずっとお忙しそうにされてましたね」


「結果、君を妻に迎えたのに、放ったらかしになってしまった」


「え?」


「明日の午後だけだが、予定を空けられた。だから、君の予定はどうなっているかと」



 シャルロッテは目をぱちぱちと瞬かせた。



「それはつまり・・・明日の午後は、私と一緒に過ごしてくださるという事ですか?」


「・・・君さえよければ」


「・・・っ」




 ―――これはもしや、いえ、もしかしなくても、私とデートしてくれるつもりなのでは・・・っ?




 リーンゴーン、リーンゴーン、リーンゴーン・・・ゴーン・・・ゴーン・・・



 シャルロッテの頭の中で、祝福の鐘が鳴り響いた。







 放ったらかしとオスカーは言うが、これまで朝は約束通り、食事は全てシャルロッテと共にしてくれた。


 他は確かに少なく、夕食は3回で昼食は1回きりだが、予め言われていた為、シャルロッテは全く気にしていなかった。


 それに、オスカーは知らないだろうが、同じ屋敷に住んでいると思いもよらない時にオスカーの姿を見かける時がある。


 窓越しとか、後ろ姿でとか、馬車を乗り降りするところとか、本当にただ遠目に見かけるだけ。でもシャルロッテはそれをご褒美タイムと称し、喜んでいたのだ。



 だから、別にそんな気遣いなどする必要は・・・




 ―――と断るなんて、オスカー大好きなシャルロッテが、勿体ない事をする訳がない。



 シャルロッテは、食事中という事も忘れて立ち上がった。



「ありがとうございますっ! すごくすごく嬉しいです!」


「あ、ああ」



 若干引き気味でオスカーが頷くと、ハッと我に返ったシャルロッテが慌てて椅子に座った。



「えと、すみません。嬉しすぎて我を忘れました」


「・・・そうか」



 その後、食事を再開したものの、なぜかいつもよりも会話はぎこちなく。



「何がしたいか考えておいてくれ。君の希望に合わせる」



 先に食べ終わったオスカーは、そう言うと席を立って足早に部屋を出て行った。



 いつもはもう少しゆっくり食べるのに、明日の予定を空ける為に忙しくされてるのね、などとちょっとズレた事を考えながら、シャルロッテは幸せな気分でパンケーキの最後の一切れを口の中に入れたのだった。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ