9/9
9羽
いざ口に出してみると、胸が空っぽになった。
半年練習して一度もできないなんて、きっと、職業じゃない。
頭の隅では分かっていた。
分かっていたけれど、かつて見たうさぎ使いになりたくて、なれるんだと信じて、目を背け続けてきた。
僕が出来損ないなだけ。たまたま、適性がなくて、うまくいかないだけ。
幼い頃から切望していた、うさぎ使い。
初めてうさぎのショーを見たときの、これがうさぎ使いか!という感動。
僕はうさぎ使いになるんだ!と吹聴して、職業がうさぎ使いだと判明したときの喜び。
うさぎが大好きな僕にふさわしい、運命だって思った。
だからこそ、諦めることができなかった。
シエラとエリーは、きっと気付いていたんだ。
でも僕は、二人の優しさに甘えて気付かないふりを続けていた。
僕だって、うさぎのショーで人々を楽しませたかった。
ずっと旅に付いてきてくれる二人を、笑顔にしたかった。
うさぎはこんなに可愛いんだぞ!すごいんだぞ!って、世界中の人に自慢したかった。
……かつての僕みたいに、誰かに夢と衝撃を与えたかった。