3羽
「7番でお待ちの方、どうぞ」
番号札を見る。7番だ。
「きたっ!」
「行きましょうか」
シエラの声が後ろから聞こえる。カウンターに手を着いて、ぐいと背を伸ばした。
「登録表です!お願いします」
首にかけていた登録表を、ギルドのお姉さんに渡す。
「ノア、早いよ」
エリーが苦笑いしながら僕の横に立った。
「登録表です。お願いします」
エリーとシエラもそれぞれ登録表を出した。
僕とシエラは白い石に文字を彫ったものだけど、エリーのは木に彫ったもの。
登録表は作ってもらったギルドによって違うんだ、というのは、エリーの登録表を見て初めて知った。
「かしこまりました。少々お待ちください」
職員さんが僕たちの登録表を確認して、さらさらと何かを書いていく。
そっと手元を覗き込むと、机の上に白くて薄い長方形が見えた。
「か、紙だ!」
白くて薄い紙に、黒い液体で文字を書いていた。まるで魔法みたいに、文字が生まれていく。
「初めて見た……」
「アタシも。さすが都会ね」
都会には紙というものがあるらしい、という話は、教会の先生やお店のおじさんにも聞いたことがあった。
僕がよく行っていた果物屋のおじさんは、商人が紙を持っているのを見た!なんて自慢してたっけ。
みんな元気かな。
僕のこと、応援してくれてるかな。
うさぎ使いなんて凄い!とか言って、たくさん支度してくれて、色んな人に頑張ってね!って言われて送り出されたんだよな。
立派なうさぎ使いになって、いつか見たあの噴水で、ぼくも、うさぎさんのショーができたらいいな。
そのためにも頑張らなきゃ!
そう意気込んでいると、くるっと受付のお姉さんが僕たちの方を向いた。
僕は思わず上げていたガッツポーズを降ろした。
お姉さんがふふ、と笑った。
「はい、確認が終わりました。こちら、お返しします」
エリーとシエラの登録表が返される。
「あの、僕のは……?」
僕の登録表はまだカウンターの向こう側だ。
「すみません、少々確認したいことがございますので、もう一度お待ち頂けますか?」
お姉さんは7番の番号札を差し出した。
「わ、分かりました!」
7番の番号札は、また僕たちのところに戻ってきた。
僕たちはロビーにある椅子に戻った。
「どうしたんでしょうね」
横に座ったシエラがそっと僕の肩を撫でる。
受付の人は奥に引っ込んで出てこない。
「きっと、受付の人もうさぎ使いなんて職業、初めて見たのよ」
エリーが素っ気なく言う。
「それはないよ!だって、こんな都会なんだよ!?」
「分かりませんね。もしかすると、とても珍しい職業なのかも……」
「そ、そうなのかな」
王国まで行っても、うさぎ使いに会えなかったらどうしよう。
何も役に立つ情報がなかったらどうしよう。
ぶわっと不安が押し寄せてくる。
「まぁ、大丈夫よ。気長に待ちましょ」
エリーがぽんと僕の肩を叩く。
エリーの手は温かくて、優しさが伝わってきて、心配だった僕の気持ちはあっという間に溶けていく。
「うん!」
大丈夫。
僕も、立派なうさぎ使いになれるよね。