2羽
「滞在許可証の発行?銀貨15枚だよ」
ようやくたどり着いた大きな街。
入り口には衛兵さんがいて、門を出入りする人間を絶えずチェックしている。
「お願いします」
シエラが銀貨を衛兵に渡した。
エリー、シエラ、僕のぶんだ。
衛兵はそれを受け取り、代わりに3枚の紙切れを出す。
「期限は5日。失くすんじゃねぇぞ」
「ありがとうございます!」
僕たちはそれを1枚ずつ受け取った。
エリーはポーチに入れた。
僕とシエラはお揃いの首掛けポーチに入れた。
大きな街に入るときは滞在許可証を貰う。
貰うのは難しくないけれど、失くすともう一度お金を払って許可証を貰う必要がある。
このポーチは、僕が失くさないように、って、シエラが用意してくれたんだ。
「エリーのポーチも用意しなくてはいけませんね」
「いいよ、アタシは。あるし」
「エリーのはお揃いじゃないじゃん」
エリーのポーチは、彼女が元々持っていたもので、肩から斜めにかけるタイプだ。
「エリーが気に入るものがあれば、どうですか?」
「うーん……それなら」
「後でお店を見に行こうね!」
嬉しくなってぴょんとエリーに飛びついた。
エリーはびっくりして僕を押しのけた。
どこからともなく「あらあら」なんて声が聞こえて、エリーの耳が少しだけ赤くなった。
シエラはそんな僕たちを見てふふっと笑った。
「エリー、ノア」
ギルドに着いたみたいですよ。
その声に振り返る。
風がシエラの髪を揺らして、きらきらと輝いた。シエラの後ろには立派な建物が立っていた。
「わぁっ!」
こんな立派なギルドは初めてだ。
「随分大きなギルドねぇ」
「素敵ですね。入るのに気後れしてしまいます」
「ギルドはみんなの建物だから、堂々と入って良いんだよ!」
ぼうっと立っているエリーとシエラの手を引く。
今までに入ったどんなギルドよりも大きなギルド。わくわくする!
シエラはクスリと笑って、行きましょうか、とエリーを見る。
エリーはしょうがないなあ、と笑って手をほどいた。
「行くよ」
「うん!」
大きくて豪華な扉を引く。結構重かった。
エリーが一緒に引くと、かんたんに扉が開いた。
エリーは狩人だから、力持ちなんだ。
「こんにちは。当施設のご利用は初めてですか?」
僕たちはびっくりした。
扉を開けたところに職員さんが立っていたのだ。
「はい、そうです」
「それでは、あちらのカウンターで手続きをお願いします」
職員さんが差した先には、登録受付、と書かれたカウンターがあった。
その横に、依頼受注、納品など、いくつものカウンターがある。
どのカウンターも深みのある茶色の木でできていて、おしゃれな感じだ。
「すごい……」
「このような大きなギルドは初めてですか?」
「はい。その……田舎から来たもので」
「この一帯で一番大きな街ですから。街案内もございますので、職員にお声掛けくださいませ」
「ありがとうございます」
それを聞いて改めて、長い旅をしてきたんだなぁ、と思った。
「王国ってここよりも都会なのよね」
エリーの言葉にハッとする。
そうだ、僕たちが目指してる場所は、もっともっと都会なんだ!
「こんな所でびっくりしてる場合じゃないね」
「そうですね、行きましょうか」
シエラが木でできた札を取る。
それには7番と書いてあった。
「すごい仕組みね」
どうやら自分の番になると番号が呼ばれるらしかった。
「さっき、3番だったから……、あと、4人?」
「待ってる人みんな、アタシたちみたいに田舎から来てびっくりしてると思うと少し気が楽になるわね」
「もっと都会から来た人もいるかも知れませんよ」
「うっ……そ、そういう人もいるのか……」
エリーはがっくりと項垂れた。