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96話 第四位・裂光華戦③



「アハハハ――自分から生成された魔力を操れることくらい知らないのぉ!!」


「いや、予想はしていたさ!!」


 更にソピアは剣に力を込める。

 やはり自分の攻撃であっても命中することは出来ないらしい、軌道を変えて自分を避けて攻撃するかもしれない。

 軌道変更の演算をさせないためにソピアは力を強めてミルウェの意識を自分に向けさせる。


「甘いッ!!!」


 ミルウェは叫ぶ。


 ソピアを拮抗しながら、サリアに目を向けた。


「うそッ――」


 その一瞬でミルウェの企みをソピアは察した。

 ソピアに向かったはずだった金色の魔力は軌道を変えてサリアへと向かったのだ。

そう、ソピアが回避をしても、しなくても、どっちに転んだとしても、どちらかを絶対に潰す。

 その意思が殺意に混じる。

 駆け引き、その強さがあるからこそ、どっちに転んだとしても勝利を自分にもってくる。

 歴戦とまでいかないが、戦闘の才能はある。


 だが、さっき二つ同時に食らっても退けたのだから、二の前だろうとまだソピアの表情に余裕が残っているが、それをミルウェは嘲笑う。


「何も対策していないわけがないでしょ。魔力砲の出力、そして――」


 ソピアがサリアの方に目を向けると蔓によって捕縛されていた。向けられた魔力砲は矢の複数発射で何とかなったが、弓を引けずに縛られている。


 そして魔力砲が弓兵、サリア・レヴォルアントに直撃する。


「サリアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


 絶叫が身体から飛び出してきた。

 もうミルウェに意識を向けていないソピアは剣を弾かれて刺突を右胸に食らい、後ろに体勢が崩れる。


「斬り裂け――〈華吹雪はなふぶき〉ッ!!!」


 追撃として権能を発動して確実にダメージを負わせる。


 ガリガリと纏う鎧が削られ、肉体に届く。

 だが、殺傷能力はそこそこであるため、更なる追撃として刺突四連撃を加えて腹部を思いっ切り蹴り飛ばし、花と蔓の地から落とす。


「はぁ、はぁ……何とか、なったかな?」


 別に負けるつもりはなかったが、少し想定を超えていただけのことだ。

 一人は重傷か、一人は致命傷だ。

 どっちにしろ、自分の攻撃を諸に食らった時点で勝利はこっちに傾いている。


「さてと……」


 ふと、後ろを向いて戦場の後を見る。

 だが、まだ死んでいることは確認していないため、深呼吸をしながら顕現している花々から魔力を吸収して魔力補給を行う。

 ミルウェは所謂、剣士の体質ではない。

 その意味はソピアより魔力量は優に超え、部隊の中ではシリウスを凌駕し、ルイカと同等の魔力量を持ち、ルイカに関しては竜種の因子を有しているため、元々生物として性能の高い竜に比肩するポテンシャルを誇る。


 その強さを気付いたのは三年前だ。

 精鋭部隊の一角として採用される前、この組織に加入する理由は間違いなく自分の中に『才能』があったからだ。

 能力において『才能』があったから、自分は今、ここにいるのだ。


「ここで終わるわけにはいかない……生きるために必死なんだ」


 キシキシッと音が耳に入る。


「冷たい――」


 それは下からいつの間にか蔓が凍り付いている。氷を有しているのはサリア・レヴォルアントだけだ。

 咄嗟に彼女の方向を見る。たち煙で見えないが、魔力と冷気を感じる。


「まずは貴方からやろう」


 ザァンッ!!!

 それと同時に大きな斬撃音が響き、ミルウェが顕現した花と蔓の大地が崩れる。


「ッ――――」


 自分が形成した地形が崩壊し、芝生のフィールドへ無事に着地する。


「はぁ……はぁ……」


 あの剣撃は見事に直撃していたため、血を流したソピアが立っていた。

 その身体から立ち上る魔力量、さっきまでとは明らかに違うことにミルウェは思考を巡らせる。


 そしてあることに気付く。


「まさか――」


 そう、『能力』だ。思えば、さっきまで光属性の斬撃や身体強化しか使っていなかった。

 確かに単純な炎、水などの能力も存在し、あの出力からサリア・レヴォルアントは能力を使っていたが、ソピアは使っていると勘違いしてしまうほどに基礎性能が高い。


「嘘……能力なしで……」


「ふん、私の才能は剣術だから――」


 いや、兄であるソージ・レスティアルも光属性を扱うが、それは能力から出力していることは情報で知っている。なのに妹のソピア・レスティアルは光属性の能力を持たずに初手から能力を発動した自分と渡り合っていたことになる。


 それにその強さは兄より能力なしの存在性能は間違いなく、高い。遺伝によって兄が持つ光の能力を受け継ぐはずだったが、それがなかった。

 頭が切れる彼女なら、その違いに気付き、兄以上に努力を重ねたのだろう。

 その結果、兄より速く剣技を習得している。


 だが、そんなソピアでも能力は所持していた。


「じゃあ、その能力は何?」


「この力は【純潔】……文字通り、なにものにも犯されない力。自分の魔力と併用することで傷の治癒、身体強化、攻撃に組み合わせることで私は強くなる」


「【純潔】……ふ~ん、でもそれがどうしたの? まだまだ格は私の方が上。気付いていない? 階位が一つ違うだけでそれは大きな差なんだよ? もうちょっと頭を使わないと~」


 能力の階位は通常と呼ばれる三段階の中でも一番下、神に近い力を持つ『熾帝』、神の力を振るう『神冠』が存在する。


 そもそも能力を持った全員が『神冠』に慣れるわけではない。魂の強度、容量の違い、己の体質的に届かない者、死ぬ気の努力で成せる者、無理やり到達した者、最初から到達している者……あらゆるケースが存在する。


 この世界、この宇宙の分かりやすい力の形であり、指標であるのが『能力』なのだ。


「……貴方こそ頭を使ったら? まだまだこれからだよ?」


「チッ、すぐに叩き潰すから大丈夫、大丈夫!!」


 能力の格の差でソピアとサリアは押されてしまったが、お互いが耐え抜いて第二ラウンドが始まる。




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