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93話 第八位・血潮拡散②



 チュイーンと何かが回転し、内部で加速する。

 そして指向性をつけられた光が光速で対象を迎撃する。威力を上げるには加速させ、貫通力を上げることで威力向上が可能なため、それを機械のみで成すには自然と機械の大きさはサーチライトのように大きくなる。


 簡単な認識として装置が大きければ、威力に期待が出来るのだ。

 だが、戦場では持ち運びが可能な手段がなければ、即座な運用ができない。更に攻撃の速度は脅威だが、変られれば、一発限りで充填などできない。光速の攻撃を成す加速部は一度で焼き入れてしまうからだ。


 その名を《光撃兵器マックスライト》であるが、幸いなことに個数に制限などはない。


「気付かれたけど……やって――」


 屋上で三人の吸血鬼を見ている。命中したが、鮮血を防御したことで軽症で済んだが、三人がばらけることはないようだ。

 地形は彼女の思い通りに変化しているため、地形に関しては絶対有利を取れる。


「さて、狩りを始めよう――」


 そう呟き、屋上から姿を消す。

 迎撃されて地上へと落下した飛行手段は持ち合わせていないのか、分からないが地上に落ちれば、ただでは済まない。


「い・た――」


 獲物だ。

 全員が黒で武装しており、暗闇では圧倒的に迷彩となるだろうが、夜間であってもはっきりと見えてしまうシールたちには通用しない。

 一見、少女だが、敵であるなら虐殺という言葉が真っ先に頭の中に浮かんでしまう。

 特定の状況で発生する狂気を少女達は孕んでいる。


「いいの?」


「うん、いいけど、あんまり離れないでね」


 リール・レペレストは真っ先に正面の敵へと特攻する。吸血鬼という種族はその性格が優しいものであろうと必ず来てしまうものがある。

 それは血液を欲する時期、それは獣人のあの時期と似たようなものであり、種族が有する力の代償と言っていいだろう。


 それを魔物の血で補っていたが、魔物の血は三人が望む鮮血ではなかった。魔物とは既に魔の力によって犯された生物を刺し、赤い血、鮮血を好む吸血鬼には好まない。

 だからこそ同じ人型であり、その身に鮮血を宿している奴等は彼女たちにとって一番の獲物であり、即座に斬り殺してしまうほどに欲しいのだ。


「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


 短剣で首を斬られ、それはそこで生命活動を停止した。幸いにも溢れんばかりの数が存在しており、久々の鮮血に肉体と精神が高揚する。

 一瞬で見えた人間達の急所、首を裂き、血液が噴き出し、リールに降りかかる。


「ああ、ああ、いいッ!!」


 鮮血のそうだが、血肉も好物だ。

 さっきまで生きていた温度が伝わり、鮮血の匂いが瞬く間に辺りに蔓延する。

 自身の刃についた鮮血を丁寧に舐めとり、戦場であることを自分に言い聞かせて冷静さを取り戻す。


 だが、やっぱり口に入れたものは美味である。血液を保管し、熟成されるという食べ方もあるのだろうが、三人の好みは新鮮一択。殺した直後に食らうのがたまらないし、何よりおいしいのだ。

 メリットは飲食、お腹が膨れるのは勿論、直接的に彼女たちの力となるのだ。


「リール、回収するよ。身体強化に使って!!」


 シールが人差し指で空中に丸を描くように動かすと周囲に散った鮮血が蠢き、リールの背中に集約されて両翼の形を成す。

 吸血鬼、固有の特技として血液を魔力で操ることができる。

 その際に液状の血を刃、盾、身体を持ち上げられるほどの翼へと変化を遂げる。

 彼女たちの能力で血がなくとも魔力で一滴から増加させることも可能だが、魔力温存のために血があるなら、活用する。


「おい、こっちだ――」


 路地裏という狭い場所だが、地形的にはシールたちが有利だ。


「まだまだいるし、長引かせることはしないようにしよう!!」


 そうして目配せをし、シールとリールは先へ駆け、ピールは散歩のような速度で進行する。

 裏路地ということで壁が足場となる二人は壁をかけて前へ進む。

 あの落下の際に地形が変わっていることから敵の手の内であることは理解しているが、如何せんピンチはない。


「あの光は発射する際に少し、時間がかかる。光が見えた瞬間に防御をすれば防げる」


 地上はリールに任せてシールは屋上へ上った。


 その瞬間、キュイーンという音が聞こえた。


「ん?」


 この辺で一番、高い建物。

 その真ん中くらいの階から強い光が発している。


「サングディス――」


 その名を呼ぶとシール・レペレストの手に【鮮血】で象った長剣が顕現した。

 それこそが彼女、シール・レペレストが所有する神器だ。さっきは鮮血で壁を作り、防御に徹したが、あの光の攻撃を剣で凌げるのかを試したいようだ。

 いちいち防御に徹しているとその度に一歩引いてしまうから戦闘がやりづらくなる。


「ふんッ!!」


 シールに向けて光が迫り、良いタイミングで剣を振るい、青白い光を斬り裂いて二つに分かれて後方の屋上に落ちる。


「タイミングが良い、いるなら、あそこだ」


 電車に設置されていたあの機械のように無人なら、ここら辺一帯を見渡せないと正確にタイミングを計ることなんてできないだろう。

 まずの標的が決まったことでシールは一番、高い建物に走り出した。


「見えているだろッ撃てッ――」


「見えねぇよッ!!」


「どこだッ!!」


 一番、高い建物の下。

 路地裏が開けてその建物の周りは開けており、良くも悪くも雑兵の隊員たちのたまり場となっている。


 だが、狩人にとっては格好の的だ。

 彼女たちの身体能力は吸血鬼の力で身体強化を行うことで雑兵には決して追いつくことはない、身体能力を発揮する。


「さぁ、鮮血を咲かせろ!!」


 リールは剣先に自身の血液を塗っており、それを対象に刺すことで体内に含ませたことでリールのやり方ことの準備が整う。


「いたぞ――」


 ビルの入り口の前に姿を現した灰色のエプロンのような露出の高い少女は権能を発動させる。


「――〈鮮血膨張せんけつぼうちょう〉」


 その瞬間、延べ十二人ほどの雑兵が内部から血液が激しく膨張し、瞬時に血液や臓腑を巻き散らして爆散する。

 血液を操る力という性質上から生物に対して絶大な効果を発揮する。体内に血液を含んでいる生物なら、当たれば決定打か、勝利の道を切り開くことができる。


「よし……お姉ちゃんのために血を集めておこう。ん?」


 リールが姉のシールのために血を集めていると路地裏から雑兵が溢れてきた。


 だが、リールは慌てることはなく、辺りは桃色に包まれる。


「な、なんだ。これ――」


 だがもう既にピール・レペレストが力を発動しているため、手も足も出せない。次女のピールと三女のリールによって地上は制覇し、後は長女のシールに委ねられた。




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