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85話 第六位・黒竜戦機①



 ルイカ、彼の戦闘スタイルは拳を用いた白兵戦だ。短剣などは見当たらず、ただの素手で剣聖の家系出身であるソージと渡り合っていることにソージは驚いた。

 だが、その疑問はすぐに解消された。


「――『黒竜神冠アグレウス』」


 その言葉と共に彼に変化が起きる。

 小柄な少年、ルイカの身体の表面に漆黒の何かが生え、ゴリゴリと音を立てて身体を覆い尽くす。


 それはまるで竜の鱗だ。

 完成した姿は少年の体躯から一回り、大きくなったが、特徴はかぎ爪、竜のような角と尻尾が生えている。


 一度目の交戦では見せなかった姿、本来の力を解放したということだろう。


「まさか……」


 その姿になった瞬間、竜の匂いと同じものがソージまで漂ってきた。ソージは竜と交戦したことはないが、ビーとの出会い、何より自分が持つ《竜星剣ドラドゥーム》から漂う匂いと一致していた。


 そう、今のルイカは竜の力が備わっている。

 だが、竜が人型に変化したわけではない、ビーのような竜人での独特の匂いは隠せるはずもない、ならルイカは竜人ではない。

 が、匂いは竜のもの……まさか、能力に竜の因子が混ざっているのだろう。


 それを解放することで竜の鱗に覆われた形態へと変化することができ、その能力ゆえに素の身体能力も高かったのなら、納得がいく。


「さあ、始めようか……」


「あぁ、負けるわけにはいかない」


 例え、禍々しい姿としてもその時点で怖気づくほどに落ちぶれてもいないし、そんな気持ちで今まで剣を握ってきたわけがない。


 剣を握り、戦うという行為……その時点で常に警戒し、予測する。


 だから一度目の戦いでは剣技を一切、使わなかった。

 ただの生身の少年が襲い掛かってきたのは驚き、慣れたが、ただの身体能力だけで自分を殺そうとしていることを不思議に思っていた。

 絶対に何かあるだろうと、誰もが勘ぐってしまう状況にソージは素直に警戒心を抱き、自分の手札を隠していた。


 ソージは目の前の存在、ルイカを倒さないと前にはいけないことなんか分かっている。


 だから全力で戦う。


「ッ!!」


 お互い同時に踏み出し、光の刃と漆黒の拳が激しくぶつかり合う。

 左右の拳からの打撃、それを刀身で防ぐが、その速度はギリギリで防御を可能としている。

 最後の強烈な拳、それを防ぐが耐えられないと悟り、勢いに任せて後方へと吹っ飛ばされる。


「ふぅ~」


 自分の身体が微妙に振動するが、それを整えるように深呼吸をする。

 自分より小柄だが能力の関係上、それが本当に関係ないことだと分かる。レイムの件もそうだが、能力や魔力量で身体強化を行えば、物理的なものである体格の大小なんて比べる条件にないだろう。


 だが、完全無視はなく、白兵戦で体格の大小は微量かもしれないが、勝敗に左右されるだろう。

 単純な攻撃では決め手にならないのは感覚で分かっている。

 深呼吸の後、技を決める。


「ッ――――」


 踏み込みからの居合切り。

 狙うのは首、光の力を纏い強化した身体能力で瞬間的に間合いを詰めて聖剣を振るう。


『レスティアル流剣技』

 第一剣技――《天火閃光てんかせんこう


「ぐッ――」


 苦い声を漏らしながら、剣撃を回避して即座にソージに拳を向ける。


 だが、それのカウンターとして横薙ぎに剣を振るう。


『レスティアル流剣技』

 第二剣技――《一条光者いちじょうこうしゃ


 ガンッ!!

 両腕を狙って剣を振るうが、その竜の鱗が硬くて両断は無理だが、削ることはできる。最初の一撃が通用してもしなくても即座に次の攻撃に繋げる。

 重要なのは絶え間ない攻撃を与えて次を生み出す。


『レスティアル流剣技』

 第五剣技――《月影遊夜げつえいゆうや


 眩しすぎる黄金の光とは対照的に影、正確には月光のような暗い光を発した刀身による素早い攻防。通常の光とは違い、青白い光が空間に残る時間が長いことが特徴であるため、剣撃の速度を誤認させることができ、白兵戦では重宝されている。


 恐らく竜の因子を持つ眼であってもすぐに見破る、慣れることはできない。


「なに――」


 その刀身による連続攻撃にルイカは惑わされる。

 その隙に脅威の連続攻撃が炸裂する。


『レスティアル流剣技』

 第六剣技――《月輝燦然げっきさんぜん


 暗い光とは違う眩い光が線となり、ルイカに襲い掛かる。

 全身を噛み砕くが如く、光の剣撃が切り刻む。


「があッ!!」


 諸に食らったことで竜の鱗で身を覆っているルイカにもダメージを与えている。切り傷でなくても内部の肉体には打撃として届いている。

 全身、全方向から攻撃を受けて痺れにより、一秒ほどのルイカは静止した。


 隙だ。


「――《光来天幕こうらいてんまく》ッ!!!」


 天空から光の斬撃が降ろされた。

 単純な攻撃だが、実際の刀身より射程距離を伸ばし、遠距離から魔力の刃で敵を叩く。


「淡いな、これくらいッ!!」


 危険性は薄いと判断して馬鹿正直に受けることはせずにソージに突っ込む。


 確かに刀身の光より伸びた光の刃は刀身の形を成すことなく、淡い光で留まっている。

 だが、これは魔力消費を抑えるための技術、その光が確かなものとなる瞬間、それは敵に当たる寸前だ。


「えッ――――」


 暖かい、だが、視界が変だ。黄色に染まって、眩しい光に包まれている。


 いや、それより……。


 ガコン、という音の後、頭が焼けるような感覚に襲われる。


「ぐッ……これは……」


 透かさず自分の手で頭に触れる。

 熱い……い、痛い。


「これは、血……」


 足下に鱗が転がっている。


 まさか、この鱗を突破されたのか?

 いや、さっきの攻撃だって諸に食らったが、突破されることはなかった……なのにさっきの攻撃は特別だった?


 痛みを力で抑えて傷を回復させながら冷静に敵を分析する。


「なんだ……なんだ……」


 光、剣、聖剣……。

 さっきと攻撃力が上がっていることは確か……なら、時間が経つほどに威力が上がっていくという性質なのか?


「厄介だな」


 少年は冷たく呟いた。


 だが、解決策を思いつく。

 あぁ、竜の鱗は突破されたが、自分の頭蓋骨、頭部を両断することは出来なかった――なら――こっちも力を高め、凌駕するだけだ。


 傷を治し、竜の鱗で頭部を覆い隠し、ソージの方へと向く。


「簡単にはやられるわけがないだろ、俺は強者だから、な――」


 地に足を突いていた重さ、子供だが、何かを理解している。


 それは――紛れもない『地獄』だ。




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