83話 今宵の月
『脳、頭部を貫通――』
『同じ破壊神の力が込められたもの――』
レイネルからの途切れ途切れの状況説明が入る。
そう、銃弾。
しかも同じ【破壊】という力が込められたものであり、それを打ち出す装置も銃という兵器に寄せたのだろうが、中身は全く別の技術が使われているのだろう。
そして何より頭部を狙ったこと……まぁ、敵を仕留める、生命を殺すには心臓か、頭部が通説だ。
まぁ、身体のどこを売っても身動きが取れずになんて方法もあるが、一撃で仕留めるなら心臓か、頭部の二か所だろう。
そして奴等は心臓ではなく、頭部、もっと言えば、脳を狙ってきた。人型の中でも心臓と同等の重要性を持つ器官、戦闘という殺し合いでは一番狙うところだ。
大抵の存在は頭部を潰せば、終わるが、レイムのようなレベルに至った存在は頭部を潰しても再生し、生き返ることができる。
だが、それでもメリットはある。
『ヤバい、思考が――』
電子機器が逝かれると同じように突如としてレイネルの声が途絶え、それと同時にレイムも意識を手放して地面に倒れた。
そう、頭部を潰されれば、思考することを不可能にすることができ、それは大きな隙となる。
もちろん『生きる』という意思があるなら、何もしなければ能力、魂が自動的に働くだろうが、はたして……。
「対象の狙撃完了。無力化に成功」
「よくやった!! ほら、さっさと拘束具をつけて、第三基地の地下に運べ!!」
ロアはすぐさま部下に命令し、冷静に対処を進める。
「さて、領域も完全形態になったことだし、殲滅戦と行こうか!!」
完全に『無限の星』を手玉に取り、領域の端へと追いやり、この作戦のフェーズワンは遂行した。
領域の中心から大地は揺れ動き、その範囲を拡大し、侵略者である『無限の星』の全員が外側へと強制移動に襲われた。
この領域、特徴として発見が困難だということだ。
これは考案し、大元の製作をした悪の組織の重鎮の力に所以しており、これは世界侵略に大いに貢献している。
そんな兵器を使って敗れるなんてことはあってはならない。
「ふぅ……」
領域の権限により敵陣営の者達は容易に転移門で移動でき、一度、基地へと集合する。
ここは領域の中心、真夜中の風景である領域だが、その中心は昼間のように明るい。円周型の基地、その窓から見える内側が領域の中心であり、この領域を成立させている要因だ。
「お、隊長。生きていたんだ? あいつが相手ならどうなるかと心配していたんだよね~」
隊長と呼ばれた女性、赤紫色の長髪に和服を着こむルリ・ギウナが戻ったのと同時に声をかけたのは白髪の少年だ。
「お前こそ、魔王はどうだったのよ?」
「いけるいける。ちょーよゆーだから心配すんなよ!!」
隊長であるルリに軽々しい態度、例え目上の人間であっても全てを下に見る彼の性格は部隊内で嫌われている理由には十分だろう。
「要注意となる存在の事前情報くらいは知っておくのが決まり、文句を垂れるな。さて、シュラン。領域は正常?」
「え~はい、問題ないです。壁も展開しており、領域の効果も十分ですし、エネミーも発生しています」
と桃色の三つ編みの女性が答える。
そして最後にロアが到着する。
「お待たせ~」
ここはもう既に自分達で戦場と化したはずだが、この女は常にお気楽な態度をしている。
この計画で最重要人物であるレイム・レギレスの捕獲を命じられたが、それを余裕の態度でやってしまったことに全員が内心で驚いているだろう。
だが、その態度でも文句のない実力者であり、そのために最重要人物の相手にも指名されたのだ。
「揃ったな。では我々、悪の組織『混沌神殿・対真善殲滅機構』の最高戦力、精鋭部隊の一角、十番隊『暗黒満月』……最終段階に入る。各員配置につき、各対象を殲滅する。全ては崇高なる邪悪のために――」
「「「全ては崇高なる邪悪のために――」」」
隊長ルリ・ギウナの後に全員がそのフレーズを口にする。
十番隊、総勢十名は最終段階へと取り掛かる。
そう、全ては崇高なる邪悪のために――
真夜中、満ちた月が天井のライトのように街並みという異界を照らしている。
それ以外に光など一切ない場所で戦いが起こるだろう。最重要人物レイム・レギレスの対処が終わったことで後の工程は純粋な力勝負だけとなった。
問答無用で地面が動き、まるで高速で突っ込んできた物体に衝突し、吹っ飛ばされたようなことが起き、ソージも含め意識を手放した者も少なくはないだろう。
「うぅ……ッ!!」
軽い脳震盪だったのか、すぐに状況を理解して起き上がる。辺りを見渡すが、さっきの山奥ではなく、ビルの隙間に寝ころんでいたようだ。
目の前にあった非常階段を駆け上る。
さっきの少年との戦い、大地が蠢いた寸前で戦いの姿勢を止めたことを思い出す。
今までの経験から導き出そうとするが、あまり予想はつかないが、地面が動くことを知っていたのなら、その前に自分を片付ける……いや、それはない。
つまり事前戦闘、相手の手の内を少しでも知っておきたい、ということだった。
今、どこにいるか分からないが、人気のない不気味な雰囲気からまだ領域内であることは確実だ。
「はぁ、はぁ……あれは?」
屋上へと辿り着き、領域の端を目にした。領域の端は透明な壁、街はそこで消えているが、その反対側には壁があった。
屋上から見える景色、遠近の見方からこの世界は円形ではないかと予想する。
長い商店街くらいの距離に三階建てが五つほど重なっている高さの壁、登ることは頑張れば可能だろう。
だが、この領域の性質からあまり力の発揮に期待できないが、体内で魔力を回すことで領域による弱体化の効果を対処することができる。
仲間は一向に見当たらないが、合流することは大事だが、進むのなら前へ進んだ方が良い、大方の予想だが、皆もそうするだろうという考えからソージは壁へと進むことを決意する。
別の地点ではワーレストとレジナインが通信を成功させていた。
「この領域の特徴はレジナインが挙げたようなものです。今の目的は仲間達との合流が最優先でしょう」
『そうだな。だが、しかし合流は難しいだろう。あの壁の向こうがこの領域の先であることは間違いないが、必ず刺客が迫ってくるだろう。向こうも私達を合流させまいと思っているだろうからな。今は同じ方向に進んで行く方がいいだろう。もし、仲間と合流したら、良いが……これほどまでに計画性があるなら、敵である我々の動きは読まれていると思った方がいいだろう。敵はかなりの規模だ。レオン・レギレスを手助けした存在、組織が本格的に出張ってきた、ということだ――』
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