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7話 親睦会



「分かっていますよ。認めるしかない……」


 レイムが泣きじゃくる声は抑えられているほどに分厚い扉の前。悔しい表情を浮かべるジュウロウにワーレストが近づく。

 そう、全員が知っている。

 分かっているが、それを埋めることが不可能だということも知っている。


「良かったじゃない?」


「あぁ、あれほど苦しんでいたんだ。本当に申し訳ないと思うよ……」


「一歩ずつ、進んで行きましょう。レイム様と……」


「そうだな。そしていつか――」


 ジュウロウが望む『■■■』へと……。


「ジュウロウ、机を持って来たぞ」


 全てを察しているため小声で話し、空気は読める三姉妹は椅子を運んできた。


「さて、私は料理を見てきます。あの状態だとあと数分で気持ちが落ち着くから物音を立てて、扉を開けて」


 ワーレストからアドバイスをもらう。


「まさか、ラエルって奴はこれを狙って?」


 ビーがジュウロウに訪ねる。


「さぁ、どうかな。逆に境遇が似ているというだけで送ってきたのなら、一撃でも入れてもいいんだが、“結果良ければすべてよし”って言うしな」


「ふ~ん、それは人間の言葉か?」


「そうだ。それをいちいち確認するな。うざい」


 ジュウロウはビーを突っ撥ねる。


「気になるんだ。しょうがないだろ」


「いい大人が察することもできないのか?」


「俺は人間じゃないし、社会性に疎いんだ」


「まぁ、社会性が疎くて吐き出すことしか能がない蜥蜴なのは理解しているが……」


 ウザいビーに煽りを入れる。


「あ、何だ?」


「お前が先に煽って来たんだろ? やり返して何が悪い?」


「それこそ社会性がなってないな?」


「社会性に疎いお前に社会性がどうとか言われたくねぇんだが? 弱肉強食なら、強い奴が上なのは自明の理だろ?」


 お互い唸りながら顔を近づける。

 三姉妹がレイムに対するスキンシップが定番ならば、ジュウロウとビーの小競り合いも定番中の定番である。

 相性が少しずれているのは確かだが、戦場の時は頼りになることは間違いない。

 千年単位で同じ場所で戦い続けて戦友と呼べる仲だが、口喧嘩、小競り合いから模擬戦闘にまで発展する。


「ジュウロウ、もういいんじゃない?」


 シールの声で我に返る。


「あぁ、そうだな。もういいな」


 ワーレストのアドバイス、数分が経過して玉座の間からレイムの泣き叫ぶ声が聞こえないことを確認したジュウロウは扉を開く。

 気持ちを切り替えて玉座の扉をくぐる。

 時間が経てば、皆が戻ってくることは分かっていたレイムは立ち上がり、涙を拭いて、スッキリとした笑顔を見せた。

 ジュウロウとビー、三姉妹が机をセッティングして料理が運ばれてくる。

 一応、戦闘の後ということでほぼ全員が飲食を必要としているため、皆の腹は減っている。


 この植物など生えていない土地だが、機人種たちの協力によって作物を採取できている。

 長机の上には豪華すぎる食事が並べられて、最後に全員がグラスを持ち、開始の合図はレイムに一任される。


「じゃあ、みんな……新人、ソージ、ソピア、サリアの加入とこれからに乾杯~!!!」


 これは確かに祝杯だ。

 親睦会もそうだが、魔王の接触によって協力関係という提案、上手く行けばレオン・レギレスとの対峙は叶うだろう。

 叶う軌跡に踏み出せることに彼らは祝杯を挙げた。


 お互いの自己紹介も交わし、身の回りの話から会話上手だらけの皆に囲まれながら親睦会は盛り上がった。


 そして――






「うぅ~、飲み過ぎた……」


「お酒じゃなくてもあのような暴飲をすれば、そうなります」


 城内の脱衣所。

 あれから数時間が経過して親睦会は恙なく終わり、夕方を過ぎている。

 レイムの生活習慣は十二歳の子供と変わらない。昼間に訓練などがあり、言ってしまえばやることはそれしかない。

 訓練などで疲労すれば、夜が近づくと眠気が襲う。


「うぅ~」


「久しぶりだったからですか?」


 レイムから服を脱がして使用人筆頭のリツリもレイムの身の回りの世話するのが役目であるため、すぐに脱衣する。

 少しくらくらしているレイムは横でメイド服を脱ぐリツリを見て、彼女の存在について思い返す。

 リツリを含む使用人という存在はこの城が創造されたと同時に使用人の役割として誕生したため、最破が結成される前から存在しており、破壊神に仕える者達の中でもトップクラスの年齢である。

 使用人であるため、戦闘能力は持たない存在だったが、リツリを含む最初の七人は長年生きていることから同じ能力を発現したため、最破が結成された際にジュウロウから加入推薦を受けたが、創造された目的は使用人であるため最初は拒否をしたが、主のためという名目から拒否の気持ちが多く全員が加入することは無理とされ、リツリが代表で第六席の座についたという理由だ。


 この話を知った時は初代破壊神の事を聞いたが、覚えていない、いやそもそも知らないと答えられた。


「さぁ、行きましょう」


 二枚扉を開けると瞬く間に蒸気に包まれる。

 城内の大きな仕組みとして個室が多く存在し、生活に必要なもの衣食である料理室や衣類などを管理している部屋、使用人の部屋などが集中している。

 その上は宿泊施設のように多くの個室が無駄に用意され、中間的な場所には最破達が結成された時に作られた大自然の空間が存在する。

 今では最破達が個々に住む場所があり、レイムの訓練場であるジュウロウとビーが提案した闘技場が一番の目立つ建物となっている。城内にある空間と比べるとその規模は一番大きいものとなっている。


 そしてその上には娯楽施設が存在する。

 料理担当、使用人三番アリア・リサードが仕事後に運営しているバー、使用人四番アザルト・リフォースが管理を務める大自然の空間に次ぐ広さを持つ図書館、そして温泉の三つが存在している。


 そしてその上に城内も無論、神聖だが、その中心とされる玉座の間が存在する階層は宿泊施設のような内装からガラリと城の壁が剥き出しになっている天井の高い空間であり、広さは玉座が本命であるため、中間くらいだ。


「レイム様、お待ちしておりました」


 リツリと似た落ち着いた声。

 眠気に襲われているレイムには少し迷惑なものだ。


「ルカル、ありがとう」


 とりあえず、お礼を言う。




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