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77話 世界と世界



 世界と世界を渡る。

 その行為は文明レベルが一定に達していなければ、当然不可能な御業だ。高位の存在なら、単独で世界を渡ることも出来るが、可能なものは本当に限られている。

 それを技術で到達した文明も限られている。

 レイム達の世界にはそんなものはなかった、というわけではなくレジナインやワーレストが到達できる可能性があった。


 だが、到達できたとしても自分の世界の先に何かあるかなんてわかるわけがない。

 最初は不安にかられるだろうが、そんなものは些細なものだ。探求する者は未知の領域は畏怖するものではなく、憧れである。


 そしてレイム達は世界の境界を超えた。






 青い星『地球』――来訪から二十二日目。


「んん~……」


 高層マンションの一室を借りて拠点にした。

 その一室の中の一部屋に昼前まで寝ていた少女はやっと目を覚ました。

 空間歪曲でマンションの一室は拡張され、二階構成となり、二階の一室に主神と副王の寝室がある。


 いつも規則正しい生活を送っているレイムだが、前日からゲームをしていたことが寝坊の要因だ。

 前日の疲労が溜まっているのか、気だるそうに起き上がる。

 隣ではエマが寝ているのが見える。

 二人が寝ているのは当然、キングサイズベッドであり、その周りには壁にかけられた薄型テレビ、下に一人暮らし用のテレビ画面が二つ、ゲームのソフト、本が積み重なっている。


 この世界でハマったものはゲームや物語だ。

 あらゆるジャンヌに手を出し、見る者全てが金銀財宝以上に魅了された。

 レイムの好みはRPG、対戦ゲー、何より死にゲーというジャンルが好きになった。死にゲーの『ファイナルソウル』やサイバーパンクの世界観でタイムスリップものの『クロックワールド』などクリアからやり込み要素までプレイしているが、流石にワーレストからストップをかけられ、読書を増やしている。

 音を立てないようにレイムは扉の方へ歩き、静かに開けると太陽の光が目に入る。


 一階は元となった空間の配置を利用しているが、敵に悟られないようにあまりに拡張し過ぎない程度である。


「レイム様、おはようございます」


 部屋を出た瞬間、ずっとそこにいたのかとリツリ・リファーストが真横にいた。


「あ、リツリ。おはよう」


「今日のご予定は?」


「ん~?」


「私のおすすめ、散歩はいかがでしょう?」


「さんぽ?」


「この世界に来て、二十二日目。収穫は正直、皆無。話し合いでは三十日まで続行すると言われました。やる気がなくなるのも無理はありませんが、気分転換に外に出ることも良いのでは?」


「そうだね」


 世界を渡ったのはいいが、敵がいると思われていたが、ワーレストとレジナインを筆頭に偵察を行い、奇妙な座標は調べ尽くした。

 各国の首都からその周り、果ては全世界を……。

 だが、全て調べ終えたわけではない、人のいない領域を調べている。

 レジナインはポータルを組み立ててただ起動しただけで座標の指定などは行っていないため、自動的に道は開かれたはずだ。


 ここに来て、“あのポータルが本当に偶然なのではないか?”という疑問も出てきたが、まだ決定するには早すぎるとのことだ。

 幸い、ポータルを解析したため、自分達の世界に帰還することは出来る。

 その経路で自分達の世界にもワーレストの仲間達が異変などないと報告しているため、ポータルは囮ではなかった。


 レイムとリツリは一階へ降りると使用人しかいない。配下の役割の主が捜索をしており、数名で各地に飛ばされて捜索をしている。

 捜索のやり方として自分達の力、魔力を追うか、この世界では異常な現象を観測するかなど方法は試しているが、収穫はなし。


 そのままレイムとリツリはバスルームへ移動し、レイムはいつもの黒い服を脱ぎ、既に用意されている湯船に身体を沈める。

 リツリもメイド服を脱ぎ、


「はぁ~……ここにはいないのかな?」


「いるはずです。油断を誘っているのかもしれません」


「……いるはずのない存在を探すなんて」


「れ、レイム様……」


 ゲームに没頭し始めたのは首都を中心として捜索を行ったが、収穫皆無であったため、レイム自身も不満になっていた。

 一生懸命探して成果がないなんて、誰もがいないのではないかと思ってしまう。

 その気持ちは当然だが、レイムは自分より仲間達のことを心配している。成果も皆無なため、仲間の空気感は少し悪くなったこともあった。


 だからこそ、レイムは憂いていた。

 リツリはレイムの身体を洗い、髪を洗う。


「ふぅ~……」


 寝起きの洗浄が終わり、パンツを履く。


 この世界でレイムが着るのはサイズが合わないブカブカのシャツか、パーカーだ。


「これで良いですか?」


「うん……じゃあ行ってくるね。はい、護衛はお任せください!!」


 最破の殆どが敵の探知に専念しており、主であるレイムが外出する際にはリツリとリリスの二人が姿を消して見守る護衛スタイルである。

 サイズ違いの服の上にパーカーを着て、十二歳の少女レイム・レギレスは気分転換に外に出る。

 最初は新しい世界ということで敵の探知と並行に観光も行っていたが、今では成果が皆無であるため、そんな気にもなれない。


「歩く、か……」


 レジナインが考案したトラブル避けのための人払いのアイテムを持参しているからレイムは一人で考える。


 今の状況を……。


 ―――――


 ――――


 ―――


 ――


 ―


 虚空はそれ以外に広がっている。掌握することはなく、ただ無銘の領域として万物の狭間に存在している。


『……報告、計画の流れは良好。次へ以降する。十番隊、作戦を開始しろ』


 悪の組織のトップである“悪の大首領”か、首脳部から最高戦力である精鋭部隊の一角、十番隊に連絡が入る。

 悪の組織の精鋭部隊と言えば、認知している他の組織が警戒し、恐怖するほどの戦力を持っている。


 そもそもあの“悪の大首領”の配下という点で物凄い箔がついているが、選ばれたからには一筋縄ではいかない。


『……通達、目標以外は全て排除、目標の保存可能状態にせよ』


 悪の組織は情報漏洩対策として計画の詳細は会話で、文明は単刀直入な短文で済ませる。構成員が裏切り行為を働けば、上層部の判断により多くは始末される。

 悪の目的はこの宇宙を悪で染めること……。

 上層部は組織の管理を徹底しており、抜かりないため、敵対組織及び他の組織からは恐れられている。


 そんな悪の組織が目標を定めて動き出した。




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