75話 激戦の後日
第三章を開始します。
毎日投稿は自信はないですが、投降期間が二日か三日くらいのペースで進めていきます。
後日、謎の『塔』は完全に崩壊し、それぞれの領域、各種族の権力者たちが神と話し合い、世界の環境は戻りつつある。
だが、それ以上に気になることがある。
最前線で戦った『無限の星』でもレオン・レギレスに手を貸したであろう存在すら分からず、この事態を引き起こした張本人レオン・レギレスすら取り逃がしてしまった。
この世界で最強戦力を保有する破壊神の勢力と神々に敵対する最古の魔王達が同盟を組んだ『無限の星』としては失態もいいところだ。
「んん……」
レオンとの死闘の後、体力の限界から気絶してしまったレイムは自分のベッドで目覚める。
「レイム様、おはようございます」
「ん、あれ? リリス」
いつもは使用人筆頭であるリツリが主であるレイムの身の回りの世話を担当するはずだが、今回は使用人七番リリス・リセブンスが傍らにいた。
破壊神に仕える使用人は一番から七番まで存在し、下がるごとに肉体年齢も下がっていき、年齢的にはレイムより二つ上であるが、身長差はレイムが背伸びをすれば、越せるほど大差はない、紫色の長髪の少女こそが七番目の使用人だ。
普段は雑用を担当している。
だが、リツリの話しによると七人全員が使用人として生み出されたが、別に雑務だけではなくリツリ同様に戦闘要員を熟すことができるが、リリスは戦闘特化型という話を聞いた。
会話をすることがあるが、リリスがいる場所に普段レイムは足を運ばないため、生活の中で関わりがあるのは使用人筆頭のリツリ、施設管理が仕事な使用人二番のルカル、料理担当の使用人三番のアリアくらいだ。
「リツリはどうしたの?」
「リツリは他の最破様とともに『塔』の残骸の解体を行い、世界の被害から神々の接触を二日前から受けています」
「ふ、二日前?」
「はい。レイム様が目覚めた今日はあの戦いから二日後のことです。ですが、決してただ寝かせていたわけではなく、ワ―レストとレジナインが徹底的に身体検査を行い、自然回復を待った結果であり――」
「そんなことは分かってる。二日か……確かに少し身体が硬いかも……はぁ~」
「ため息、気分が優れませんか?」
「うん……勝つことは出来たはずなのに……」
あの戦いを思い出したら、悔しさが溢れてくる。
戦闘能力は互角か、自分が上回っていたはずだが、存在以外に兵器の性能が飛び抜けていたことだ。
二代目破壊神レオン・レギレスを支援した組織は強大であることは間違いない。
「それはそうでしょうが、レイム様。過去を気にするよりも今や未来の方が重要ですよ」
「うん。そうだね……」
「では、身支度の後、玉座に向かいましょう」
神たるレイムに身支度など本当は必要ないが、生物として必要なことはやっていくという方針がある。
レイムも魔力で何とか出来るが、使用人の存在意義のために素直にドレッサーの前にある椅子に腰を下ろし、洗顔と髪型の直しをリリスが行う。
使用人全てが使用人としての技能を身に着けているため、誰が不在であろうと主に対する通常業務を行うことが出来るのだ。
そして身支度も整い、リリスに案内されて玉座の間へと訪れる。
ギィィッといつも通りに大きな扉が重そうに開き、玉座の間へと入る。
「あ、レイム様!!」
「れ、レイムッ!!」
玉座の間にはシール、ピール、リールの三姉妹とソージ、ソピア、サリアの六人が居り、他の六人はいない状況だ。レペレスト三姉妹が、すぐさま駆け寄ってきて主であるレイムが目覚めたことを喜んでいる。
「ごめん、心配かけて……私は大丈夫だから」
三姉妹をかき分けて前へ進み、ソージ達も心配で近寄ってくる。
「無事に起きたんだな。レイム……」
「うん、心配しないで。先へ進もう!!」
立ち止まっているわけにはいかない。
敵は逃げたが、まだ存在している限り……。
お互いが決心した表情を浮かべてレイムは玉座に腰を下ろす。
「さて、ジュウロウ達はどうしたの?」
「はい。外で神々の軍勢と交渉中です。主に『塔』のことについてのようです」
リリスがそう述べると同時に玉座の間の扉が開き、ジュウロウ、ワーレスト、レイン、ビー、ベルーナ、リツリが入ってきた。
最破全員が集まったがエマ達、最古の魔王達は自領の様子見と後片付けをしているようだ。
破壊神レイム・レギレスが筆頭の破壊神軍と最古の魔王達の同盟によって生まれた『無限の星』はまだ継続している。
神々の裏切り者という立場を受け継いでいる破壊神の勢力と神々と敵対する魔王達の同盟は関係者以外、誰にも知られていない。
そのため、姿を隠すという理由でも一度、離れている。
あの世界規模の災害、いや天災を引き起こした力である【障害】という概念を用いた大災害。
今、思えば、『塔』の配置……【障害】という今までに体験したことのない力で攻めてきた。
あれが正しいいのが分からないが、一度や二度……いや、慣れてしまうほどに世界を襲撃するということを続けている。
あの装置……外見はともかく対象の世界各地に配置して起動することでそれぞれが共鳴し、効果範囲と効力を上げていた。
まずは情報の整理ということでワーレストが話し出す。
「レジナインとともに『塔』の残骸を調べました――」
ワーレストの調査報告はレイムが感じたことと似ていた。
あの兵器は世界に匹敵する規模の兵器だからこそ、いくら世界最強と謳われているレイムやエマですら、苦労を強いられる。
意思の力などなく、ただ機構の力で世界に匹敵するほどの技術力を持っていることは確定した。
人員だけではなく、兵器などで戦力を構成している。
そして敵が仕向けてきた『塔』について大体の報告が終わった。
結果が良いものではないため、空気は一瞬、暗いものとなるが、レイムは感想を呟く。
「なんだろう……慣れていたよね? レオンが一緒だったからっていうものあるだろうけど」
「そうですね。レオン・レギレスにあの兵器を与えて……戦いでは【障害】と思われる力すら使役していました……」
「不確定なことはありますが、敵はレオンの後ろに存在する。その敵がレオンの願いを聞き入れたことで今回の規模となり、私達は彼を逃がすこととなってしまった……」
ワーレストはただ事実を述べる。
レオンとの戦いまで敵はレオン単体だと思っていたが、違った。
「四代目破壊神アレン・レギレスの話しで分かったレオンの変化……遠い昔にレオンと接触して、世界大戦を……そして今回の争いを……彼の目的は……」
「同族……でしょうか?」
あの世界大戦を経験した者ならわかるだろう。
レオンは別に世界を支配しようとはしていなかった。
裏切りの神と言われたことで勃発した世界大戦は、まずその娘である三代目破壊神レシア・レギレスとそれに与した闇の神の二人と他の四神同盟軍による戦いだったが、その戦いに最古の魔王の勢力の三つ巴となったが、最後に現れたのがレオンだった。
「今、思えば……奴の行動は一貫して同族、破壊神に対して力を入れていた。外の悪……もし、目的がレイム様、一個体なら世界規模という大がかりの方法を取るということは……」
「――レイムがどれほど重要な存在なのか、それを実質、証明していることになります」
と、ジュウロウの言葉に誰かが口を挟む。
少女の声色であるが、少し主であるレイムとは少し違う。
そんな声が玉座の方面から聞こえた瞬間、全員が目を向けるとレイム・レギレスの横、小柄な少女では座る面積が丁度一人分余っていたところに座っている。
そう、元のレイムとは反転した色を持った瓜二つの少女が……。
「あ、あなたは――」
「改めて初めまして、私はレイムの補助装置であり、第二の人格であり、もう一人のレイムであるレイネルです。以後、お見知りおきを」
主と全く同じ雰囲気で玉座から立ち上がり、白いレイムであるレイネルは礼儀正しくお辞儀をした。
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