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71話 破壊と再生のプリンセス⑤



 レイムは《破壊剣ルークレム》と《再生剣レクイエム》を自ら展開した防御壁に触れて壊し、レオンの攻撃と相対する。

 少女は覚醒を果たしたが、それでもレオンを圧倒できる技量などはない。

 それは能力を向上させたであろうレオンは近接戦闘で押されていたように戦闘経験が乏しいレイムでは力が覚醒したとしても油断など一瞬たりとも許されない。


 だが、同時に焦ることも命取りだから、レイムは慎重に能力を解放する。


「――『破壊神冠シヴァナーダ』――『再生神冠レナトゥス』――!!!」


 その瞬間、確かな真実がそこに現れる。

 黒と白を同時に保有する少女の背中から漆黒の右翼と純白の左翼が顕現し、羽ばたき、レイムは前に進む。


「ぬおッ――」


 レオンが放出している力が強く押されている。

 これに関しては筋力では左右されず、少女から放出されている膨大な魔力を精密に操っている故の所業だ。

 二人の性能において戦闘経験はレオンの方が上だが、魔力量に関してはレイムが勝っている。

 長期戦になれば、確実にレオンが劣勢になるが、周囲の障害を用いれば、魔力の補填は出来てしまうが、それを操れるかどうかは分からない。


「行くぞ――」


 その言葉は明らかな本気の声色、少女は恐れることはなく前へ進む。

 今のレイムは黒の【破壊】と白の【再生】を同時に展開しており、この状態であればレオンが用いている三つの力と拮抗する。

 レイムは後で魔法陣を展開し、魔弾を溜める。


「あああああぁぁぁぁぁッ――――!!!」


 自分の喉から精一杯の声を出し、全身に力を流して一歩一歩と足を踏み出す。普通に重いが、二つの剣を前に突き出してレオンへ辿り着こうとしている。


「クソ、何故だ!!!」


 必死で無様な声をレオンは吐く。

 さっきまでは計画通りだったのだろうが、レイム・レギレスが引き起こした予想外の中の予想外、イレギュラーによって破綻したと言っていいだろう。二つの力を行使しているという人生初の状況から身体はまだ慣れておらず、全身に巡る管が張りつめて痛みが生じている。


「ぐぅぅぅぅぅッ――――」


 お互いがレオンとレシア、レイムとレイネルという二つが一つになった状態で拮抗しているが、この状態が打破することは出来ない。

 どちらかの魔力量が減少し、威力が傾けば、この拮抗は崩れるだろうが、それがなければこの状態は続く。


 だが、レイムに……いや、この世界に余裕な時間なんてない。


「がぁああああああああああッ――――」


 自分が拮抗している間にレオンの側面を叩こうとしたが、少しレイムは方針を変えて全身に力を巡らせる。

 周囲に展開した魔法陣は少女の背面から伸びる黒いパスで確実に接続されて枝分かれの如く黒い魔法陣が増殖していく。


――〈破壊の世界〉


それは攻撃特化型の世界系であり、最大の攻撃にして切り札の一つ。

その威力は【破壊】の性質により驚異的なものであり、まともな隙を晒せば、無数の黒い光に襲われるだろう。


「あれは――」


 その魔力反応にレオンは気付くだろう。

 レイムの考えとして敵側に膨大な魔力反応を感知したら、それを回避するか、防御するために行動を取るだろう。

 どっちにしろ今の攻撃は止むはずであり、それが実現すれば、レイムは一気に距離を詰めることができる。


 さぁ、どっちだ――攻撃が止もうが、止まないがレイムの攻撃は圧倒的な数量によってレオンへと確実に届く。


「ッ――――」


 そしてレオンは身を引き、攻撃は止んだ。

 その時、自分の身体は嘘のように緩やかに駆け出す。考えて意識をして反射神経が最大限まで研ぎ澄まされたものだった。

レイムが駆け、それに展開された無数の魔法陣が引っ張られる。

 裏切りの神は床を蹴り、後方へ下がる。攻撃を止めたが、彼に纏う力は健在と言っていいほどに膨大である。

 黒と白の両翼を羽ばたかせて距離を詰める。


「穿てッ――」


 少女の声に呼応して全ての魔法陣から光が炸裂する。

 ドドドッと空気を裂き、目標として定められたレオン・レギレスに迫り、容赦なく無数の黒い光に穿たれる。

 自身の周囲を渦に変えて防御に徹するが、世界系の攻撃特化型の威力をそれで殺すことは不可能であり、軌道は影響されずに光速でレオンを貫く。

 世界系に対抗するには同じく世界系しか対抗策はない。


「がッ――」


 この時、レオン・レギレスは死の予感を感じた。

 自分の眼前、真隣、真後ろ、と全方位を包んでいる自分の死を……。

 そして後悔が零れた。

そう、自分は油断をしていたのだ。武装として世界を覆うための世界侵略兵器、そこから世界を利用しての魔力供給、そして自分の手腕で何とかなると思ったが、そんな浅はかなものだった。


 俺は復讐だけに集中していた。同族であり、同じ時に生まれたが、自分とは違う者となった五人を消滅させて、自分の半身である四代目を殺し、そして新世代の五代目を殺す。

 今の目的として破壊神という世界基準から見ても貴重であり、強大な存在である同族を自らの手で殺し、自分の中に取り込めば、レオン・レギレスという存在は更なる高み、世界の枠を抜けた上位の存在になることが出来る。


 そして初代を殺し、自分の意味を刻ませる。


 その前の段階では圧倒的な力で五代目破壊神レイム・レギレスを殺せると思っていたが、イレギュラーが発生して今の状況は自分では予想外のものとなった。

 ――クソ、こんなことには!! クソ……でも諦めるわけには!!

 ――俺は特別なんだ!! じゃなければ、考えることすらできなかった無機物が生きることなんて出来なかった!!!

 ――俺は捻じ伏せられる存在じゃなく、捻じ伏せる存在だ!!!

 ――破壊神として生まれたなら、この力を思い存分!!!

 ――だから、諦めるわけにはいかない。そうだ一つのイレギュラーだけで崩れるわけにはいかない!!!


「――機構、宮殿に集結。俺の支援に回せ!!!」


『了解。五つの塔を集結させ、最大の支援を――』


 漆黒の宮殿から命令が受諾され、光の領域エレクシア、風の領域シズゼリア、炎の領域ファイテンラスク、水の領域ソルレンテ、闇の領域ネルトシネアスに配置している漆黒の塔を本体である漆黒の宮殿へ空間移動を用いて一瞬で集結する。


「そうだ。俺に力を寄こせぇぇぇぇぇッ!!!」


 自分で崩壊させた宮殿が復元されていき、支援対象であるレオン・レギレスに出力が向けられ、レオンは障害の支援を受ける。




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