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56話 降臨したもの⑤



 レイムとエマは軽々と【破壊】の豪雨を突破して塔の内部に侵入することに成功した。


「くら……」


 漆黒の外郭、塔の内部は暗黒に包まれているが、エマの炎で照らされる。構造はいたってシンプルだ。

 塔という筒、上から莫大なエネルギーが通過する道。

 レイムが魔法陣を展開する際に用いる白い線のパス、魔力路として用いられ、半壊した下部には広範囲に影響を及ぼすための何かが施されていたのだろう。


「上にあがろう」


 幸いなことに壁に隣接した階段を上がり、二人は塔を昇る。ペタペタとお互い裸足であるため、カツカツとした靴の音が響かない。

 未だに塔全体に魔力が伝っており、塔の外郭から【破壊】を射出する攻撃はまだ続いていることがわかる。

 どこまで続くか分からないが、エマの光で照らされた目の前と少し高い場所だけが見える。


「どこかに魔力の発生する場所があるかも!!」


「そうだな。ってか、長くないか?」


 それは決して二人の歩行速度が遅いわけではなく、ただひたすらに階段を上っている。

 流石に長い、どうゆうことなのかと思い、レイムとエマは立ち止まる。


「おかしい。エマ、もっと上を照らせる?」


「うん、任せて!!」


 太陽剣を上空へ掲げて、剣先に炎球を作り、射出する。

 何も抵抗なく、極小の太陽と思える明かりは塔の内部を照らしながら、上昇する。明かしは上へ、上へと昇り、同じ景色が続き、遂に肉眼では捉えることが不可能な高さまで昇ってしまう。


「感覚で言うと……地上から空まで?」


 明かりを動かしているエマから感覚的な距離を告げる。


「地上から空……そもそも城から塔の全体を見てない」


 思い返せばそうだ。

 暗雲から突き出した塔の一部分からそう大きくはないと錯覚していたが、そもそも半壊しただろうと思わせながら、攻撃が続いている理由がこれだろう。

 錯覚していたからこそ、徒歩で登れると思っていた。


「半壊したって思っていたけど、本当は一部分未満だった?」


「魔力は流れているからにはそうなのかも……飛んだ方がいいかも」


「うん。予想外だ……考えが甘かったみたい……」


 自分が衝動的に軽はずみに行動した結果がレイムと追ってきたエマ、二人の現状に至った。

 今になって落ち込み、後悔する。

 こんなことになるとは思わなかった……予想することが出来なかったからこうなってしまった。

 塔の規模がこれほど大きかったなら何か皆で対策を……。


 そんなことを考えていると落ち込んでいるレイムの肩をエマが少し強く叩く。


「確かに甘い、甘すぎたな。これで私達の全力の攻撃で木っ端微塵にならなかった理由が理解できた。大きすぎたことと、攻撃に対して対策がゼロじゃなかったってこと。敵はあの時、予想していたより大きい。それに私達の攻撃は確かに当たっていたけど、半分は反らされていたんだ……」


「え……?」


 能力の最高出力手段である『神器』を解放することで魔力路はその存在にとって最大限に拡張し、最大の攻撃を放つ。


 そのため二人にとってその後が余裕の状態であっても、全力と呼べる攻撃だ。

 その二人の攻撃をまともに食らっていたが、敵の障壁が攻撃を逸らすように展開されていたのだ。


「なんで分かったのか、というと!! 手ごたえだよ。剣から伝わる振動から相手が砕けたのか、どうかを……さっきは見える部分において半壊したっていう光景だったから通用したのか、と思っていたけど、手ごたえは自信なかった」


「でも半壊したってことは?」


「逸らすための役割としての障壁が粉砕され、塔の下の部分が破壊したってことだな」


「じゃあ、この塔でさっきの力を振るえば……?」


「今度こそ余裕で木っ端微塵に出来る!」


 あの塔自体の観測も『障害』によって妨害されていたため、破壊した後の塔しか明確なものはないため、気付くのが遅れてしまった。


「どうする、レイム?」


「決まってる!! もう一度――」






 豪雨のように飛来する【破壊】をビーの暴風とレインの魔法で迎撃しながら、上昇していく。


「も、もう的がデカいよ!!」


「おいざけんな!!」


 巨竜の名の通りに的はデカいが例え【破壊】であってもビーの耐久力は発揮でき、更に上昇力も高い。

 レインは全方位に魔法陣を展開して正確に迎撃し、サリアも弓を用いて迎撃を手伝う。

 漆黒の豪雨を色彩豊かなあらゆる属性を用いたレインの特殊な魔法を射出する。


「何の変哲もないような塔だな……」


 ジュウロウは真っ直ぐと塔を見て、対象を観察する。

 あの半壊した塔だが、ワーレストの情報を照らし合わせると一部分だけ壊して停止した他の塔と違う要素だが、外観だけを見ると特別な何かとは思えない。

 その違和感という感覚が、疑問だ。

 何故、あの二人の全力の攻撃をまともに受けて半壊なのか、あの時、完全に消滅すると思ったが……そんなことはなかった。


「ジュウロウ、どうかした?」


 最破の一員として敬意を表す口調は禁止としたためソージはそう言い、ジュウロウの様子を伺う。


「ッ……いや、何もない。順調のようだな。気を抜くなよ」


「あぁ、分かってる――」


 その瞬間、向かっている塔が轟き、塔の外郭に亀裂が発生する。

 その亀裂から黒と赤が噴き出し、見えている塔が完全に崩壊し、瓦礫が地上へ落ちていった。

 突如として変化した光景だが、内部から二人が攻撃したことは全員がすぐに理解するだろうが、まだまだだ。

 レイムとエマは敵が壮大であると分かった。だから徹底的に内部でも攻撃を発動した。


「あぁ、ならば少し試練を受けてもらおう――」




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