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48話 異変到来



『――破壊神と魔王の戦い、これは大戦の前兆か?』


 闇の神が世界の情報を認識し、他の五人に問い掛ける。


『――あぁ、それは確実だろう』


 風の神が最初に返答する。


『――裏切り者はまだ生存している』


 炎の神がそれを切り出す。


『――あぁ、それが糸を引いている可能性がある』


 水の神が話しを深める。


『――まずは、手に届く破壊神の殲滅だろう』


 光の神が決定を下す。


 そんな『議論』が行われているのは天界に存在する天使の域より上の神界より、更に上の星域の天井とも呼べる場所に浮遊している宮殿だ。

 三千年前、同胞である二代目破壊神レオン・レギレスの『裏切り』を判断した五人。

 この世界の創造神である初代、その後継機である二代目という存在は神々の中の神々であり、最高権力者として王家レギレス共々、崇められている。物理的な距離が遠いため、意思疎通は二代目からの一方通行な伝達で行われ、世界の運命案件なら、三代目たちは判断を仰ぐ。


 それは善と悪のみを天秤に掛けて判断する。

 だが、それは『善』に偏り、この世界に『悪』が存在するならば、すぐに排除を決定する。

 それらを見た生命は“彼ら”を生物的ではなく、機械的だと思うだろう。

 実際、その通りだ。初代から生まれた後継機、二代目という存在“彼ら”は生命ではなく、機構である。

 初代は何かを思い、後継者ではなく、後継機を容易した。生命が生命を統治するのではなく、正確な判断し、神々に、生命に、助言を下す程度なものだと……。


 そしてそれは到来する。

 絶対に、ないと思っていたのか? それとも油断していたのか? 考慮なんてする価値もないと、お前達はそう言うのか……?


「一つ、異論がある――」


 既に無き同胞が声を発し、五人の後継機たちは一斉にその方を向く。宮殿の中心部、会議を行う無駄に巨大な円卓が存在する静寂な空間に音も立てずに侵入した漆黒の影は議題内容について異論を呈した。


『貴様……』


 光は隙を突かれたように声を出す。


『嘘、だろ……』


 水の場合はあり得ない状況のようだ。


『何しに来た!!』


 炎が怒号を発する。


『過ちを謝りに来たか?』


 風は独自の解釈を望む。


『未来永劫、この世界から消えていればよかったものを』


 光は明らかな嫌悪を表す。


 ただその反応は感情ではない、その様に見えたとしても“彼ら”は“彼”と違う。

 かつて同胞であったが、“彼”はもう自分達とは違う事実に、異なるが故に激しく嫌悪する要するに拒絶反応を示している。


「お前等は要らない。俺だけで十分だ――」


 同様に“彼”も激しい怒りを心の底に秘めている。


 全ては“裏切り者”と同胞達に呼ばれるようになった時――初代から授けられた書物、自分に対応する知識が記されている破壊神典を“二代目破壊神”は考えなしに薄っぺらい思考に基づき、本棚から破壊神典を取り出し、開いた。


 そう、タイミングで二代目破壊神レオン・レギレスに異変が起きた。


『――自分を自覚しろ、私がそこへ引き上げる――』


 それは外界から、高次元からの接触だった。

 何故、レオン・レギレスに接触したのか、ちゃんとした理由が存在し、接触した存在は仮初であった『魂』を本物へと昇華した。


 それは明らかなに上位存在だった。


『――新たな可能性、それに橋を架けられるか――』


『――私、いや我に従い、レギレスの語源“■■■■■■”を超えられるか。生みの親を殺し、親より優れた存在に――』


『――根源に抗い、殺し、自分を見つけるがいい――』


 その上位存在は瞬時に“彼”の状況を理解し、名前を教えた。

 レオン・レギレス――既に初代から後継機として名前を与えられていたが、機械的であった自分はそれすら認識することはなかった。


 その時、俺は生命以下の存在だったと理解し、怒りが込み上げる。何を以って、何を考えて、生み出したのか……それを正したところで俺は報われないだろう。

 ならば、俺は創造主を超え、優れた存在であると……自分自身の存在を証明しよう。


『おい、なnなn、なんとk――』


 機械的存在である“彼ら”はレオンの前において返答する資格がないことすら認識できずにバチバチと音を立てて、消滅していく。

 仮初の魂、それは人の像を生み出し、議論するだけの支援装置である。

 初代の後継機、二代目の神々達の消滅は実に呆気なかった。バチバチ、バチバチと微量な電気を発生させて薄っぺらい人像は消えていった。

 目障りな同胞は消え、遂にレオンは本計画に移行する。


「破壊神……特別な概念、存在から生まれた力。俺はそれらを蒐集し、オリジナルを超えてやろう。待っていろ、俺と同じオリジナルの創造物――」


 自分以外、誰もいなくなった宮殿の中でレオンは自分の使命を囁く。


 宮殿の外、島の崖っぷちに立つ人影。

 その人物は大首領ではなく、それに近い存在であり、レオンの動向を監視している。


「これが最初の償いか……は、お笑い種だな。世界一つを滅ぼしたのなら、世界一つを生み出せば、天秤が釣り合うと……未熟ながら変な等価交換を考える奴だったのか」


 黒髪の美男子であり、美青年。

 幼く大人びている人物、レイム、破壊神のように共通している黒い髪、黒い瞳を持っているが、その性別、性格、本質は全く異なり、共通しているのは色合いだけだ。

 主のように邪悪を尊び、邪悪として振舞う。


「さあ、お手並み拝見といこうか――」


 遂に邪悪はこの世界に到来した。






 翌日、祝杯で倒れるように眠りについたレイムと……は最奥の寝室へ寝かされた。


「んん~……」


 綿が詰まったモフモフ感がある布団が首までかけられていることを自覚すると頭まで覆い、眠気に自ら向かっていく。

 だが、いつもとは違う感じを懐き、入り口から見て左側を向いていたレイムは後ろへ身体を回転させて振り向いた。


「エマ……」


 祝杯の中でそれぞれの呼び方を決めた。

 主神と副王という役職の関係であるが、それを取っ払った関係はエマは相棒と評し、お互いを“レイム”“エマ”と名前で呼ぶことを決めた。

 即ち、友達だ。

 それは唯一ではないが、比較的で新しい関係だ。


「何で、エマが……」


 祝杯の中、精神疲労が所以して一気に眠気が襲ってきたのと思い出した。

 小さな吐息、大魔王として世界最強の一角を一人で担っていた存在とは思えないほどの寝顔だ。少女の中身が神々も恐れる紅蓮の炎が宿っていることを知っているレイムでも可愛げのある外見を見ていると疑ってしまうほどに……。

 天蓋付きのキングサイズのベッド。破壊神の寝室であるため城の中でも一番、価値のある外観をしている。

 黒色、灰色、白色、金色のみで寝室は成り立っており、黒と灰色を多用しているため、カーテンを閉め、光を消すと黒さが増し、寝室としてはピッタリの色の構成だ。


 すると扉の外から慌ただしい足音が聞こえてレイムは起き上がる。


「レイム様――」


 報告担当、最破筆頭のジュウロウ・ハリアートと防衛担当のワーレスト・ゼロログ、そして使用人筆頭リツリ・リファーストの三人が入室し、部屋に明かりが灯る。


「ど、どうしたの……?」


 この慌ただしさは領域外の周辺に何かが現れたなど領域内外に異変があった時の空気感である。


「はい。光の領域エレクシアの中心部にして世界最大国家、光神国エレクシアが天空からの謎の攻撃によって光神城から南西の区画の一部が消失しました――」


 そう、遂に邪悪はこの世界に到来し、その片鱗を表すだろう。




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