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46話 試練からの帰還



 能力が宿る場所、それは『魂』の隣。

 能力が宿る数は限界があるだろうが、一つとは限らない。

 しかし能力から生み出す最高の出力方法である『神器』はその『能力』が生み出し、接続する一つのみ。

 もし、継承という形で『神器』が破壊神に継承されているのなら、その一つで最高の出力方法としてなり得るのなら、生み出さなくても良くなるはずだ。


『神器』とは最高の出力方法であるがゆえに一つしか存在しない。


 それはレジナイン、いや能力を持ち、熟練者なら自然と理解しているはずだ。


「なぜ、生み出そうとした?」


 レイムも分かっていたのなら、その質問は何かの糸口になるだろう。


 あれは頭では認識していたが、打倒するには武器がもう一つなければいけないと判断して自分の血液を用いて、能力を作成した。


「なんとなく……必死だったから――」


 曖昧な返答だったが、それが真実だ。

 自分が観測できる範囲で設定された法則外のことを成し遂げてしまったこと、何よりそれを可能とした目の前の存在に……。


 もしかしたら彼女は何か『特別』なのかもしれない、悪く言うなら一種の異常性が垣間見えたことにレジナインは内心、興味を示し、笑う。


 これは正に例外の案件だが、ひとまず最後の試練は終了した。

 詳しい話は、ということでレジナインから提案があり、レイムの城へと転移した。


「そ、ソージぃ!! 無事だったんだね!!」


 玉座の間に転移したレイムの視界に真っ先にソージが映り、ただ嬉しさのあまり立ち上がり、走り出してソージに飛びつく。

 しかも裸で……。

 当然、ソージは裸のレイムに抱き着かれて戸惑っているが、レイムの帰還を待っているものたちも当然、存在する。


「「レイム様、ご無事で何よりです!!」」


 最破の中で最速にジュウロウ・ハリアートとワーレスト・ゼロログは同時にそう述べ、深くお辞儀をする。レイン・レペレストはこの結果に深く安堵する。ビーヴァルド・レブロヴァールは自ら信じていたことと主の帰還に深く敬意を示す。ベルーナ・ジルミゾンはレインと同じくこの結果に深く安堵する。リツリ・リファーストは信じ切っていたため、いつも通りの心を示す。シール、ピール、リールは変わらず、はしゃぐ。ソージは鼓動が激しくなり、ソピアとサリアは試練が終えたことを安堵する。


 この空間には同盟者同士が揃っている。


 そしてレジナインは一つの提案をした。






「ふぅ~、流石、破壊神の城の設備は良いものだ!!」


 レジナインが破壊の城に転移して最初に提案したこと湯船に浸かることだった。疲労した肉体的、精神的に癒す方法と最後の試練が終わり、全ての試練を観測してきたレジナインは他の四人も転移へ巻き込み、最初の交流の場としてこれを選んだのだ。


「ぷはー、いいな、これ!!」


 大浴場、まさかの風呂ということで最古の魔王達は少し抵抗していたが、レジナインに完全に押されて入浴している。

 まず、完全な回復とために漆黒の湯へレイムは浸かる。

 流石の魔王でも、破壊神専用となると実際、レイムと戦ったリビルやエマでさえ、根性試しという用途でも入るのを拒否して他に入浴した。

 世界最強の一角である最古の魔王達は支配領域によっては世界の文明を認識しているようにも見えるが、自分自身を封印していたことで文明の利器については一番、疎いのだろう。


 最破達は入浴せずに浴槽に回りに整列している。


 この空間の中で一番、はしゃいでいるのはエマ・ラピリオンだ。

 今回の試練内容は強者同士の同盟としては乱暴なものだったようだが、最短で相手の事を知るためには戦いしかなかった。

 彼ら最古の魔王は一つの頂点として誕生してからずっと君臨してきた。

 その理由は強さが一番だから、相手と戦わず、自分達の納得できない方法で同盟の話を持って来られても同意なんてできないのだ。


 お互いのことは以前の世界大戦時に争ったことで概要以上の事は把握しているが、それは配下である最破のことだけであり、三千年前にレイムは存在していない。


 つまり今回の試練は新たな主であるレイム・レギレスに対しての試練だったようは言うまでもなく、その主に相応しい実力なのか、どんな理想を持っているのか。

 双方の事情を知った上でレジナインは最適な方法を提案した。

 最終的に最古の魔王のリーダーである大魔王エマ・ラピリオンは納得した。


「ちょっと、いつまでそんなところに入っている!! こっちに来い、同盟者!!」


 エマはしびれを切らしたかのように声を上げ、レイムはエマ達が入浴している浴槽へ移動する。

 同盟者、外見はレイムより歳下のものだが、自分の決議はちゃんとする。

 改めて自分の視界にエマの身体を映す。衣類を脱ぎ捨てた事でレイムが同性を気にする点は一つ、普段なら気にすることはないが、目の当たりしてしまえば、その方向に思考が引っ張られる。


 つまり普段は気にしないことでも、自分に関連するもの、同性であり、肉体年齢が近いという共通点が目の前に存在した場合、自分が少しでも気にしていても、逆に気にしていなくても、目の前のことに影響されてしまう。不確定であっても、影響され、不安になってしまい、気にしてしまう。


 一目見て、自分より以下、限りなくゼロだ。

 そもそも肉体年齢的に十二歳のレイムより二つ下の十歳くらいの肉体は未成熟であり、成長以前であるため、比べるまでもないということを理解し、湯船で精神を落ち着かせる。


「お姉ちゃんはどうだったの?」


「え、ん~、まぁ封印が解けた直後だったし、あれで勝利してもらわないと期待以下だったよ」


「勝ったんだ。良かった……」


 レイムは別の湯船に浸かるソージを気にしている。

 大魔王に次ぐ最古の魔王“序列二位・氷結の魔王”レミナス・グラシアスとソージ達が戦って勝利したなんて自分の功績ではないけど、つい嬉しくなってしまう。


「私とレイムの戦いも凄かったよ。期待以上だったよ!!」


「へぇ~よかったねぇ」


 エマの隣にいるレミナスは心の底からその話を称賛した。レミナスにとって妹だからか、即答レベルなほどに反応が早い。

 盲目的、というか一方的ではあるが、エマ・ラピリオンを信じているのだろうとレイムは理解する。


 そこから試練の話になった。


「やっぱり破壊神の力は凄まじかった――」


 そういえば、最古の魔王の中で唯一性別が違う、リビル・リグレウスは何も違和感なく、四人の中の湯船にいた。


「ん、あぁ、気にするか? すまないな。俺としては何も思わなかったんだが」


 レイムの目線を向けられてリビルは真っ先に抱いている内容を突く。


「やっぱり家族だからだよね」


「まあな。それより俺と戦った時だが――」


 すぐに会話の内容は試練に戻り、レイムとリビルの戦闘の迫力は言葉でも伝わるほどでマリテアやレミナス、エマでもその話に食いついている。


「私と勇者の戦闘は――」


 レミナスからソージ達の戦闘の出来事を細かく説明されて、ソージ達の功績を明確に理解した。

 三人は人間社会の中で孤立していた環境で役目として鍛錬を続けて、戦う際に発揮する連携という強さが際立ち、確かに封印解除直後であったレミナスを打倒した。


「へぇ~……」


 無意識に上を向き、湯船とは別の暖かな感情に浸る。


「分かりやすいな。でも、実際、そこまでじゃないんだろう?」


 レイムの左側にいるレジナインはレイムとソージの雰囲気からお互い好意を向けているが、好きだとは言っていないことを言葉数少なく言い当てる。


「うん。まぁね……それより試練は終わったけど、これから……」


「ん、あぁ、だけどまずは改めて同盟を宣言しようか――」


 そう、遂に試練が完了してお互いが同じ方向へ進む。


 その目的はレイム・レギレスの善いことをしたいという目的から……。




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