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42話 破壊神レイム VS 大魔王エマ④



“世界系”はその能力に備わっている性能を最大限に発揮することが出来る最大の権能。


 だからこその切り札であり、発動すれば、最大限の力を発揮できるが、その後は能力の出力が一時的に低下する。


「出し尽くす――〈破壊の世界〉」


 そう、レイムは呟いた。


 その瞬間、“自分の世界”が現れる。

 それは見方的な表現であり、現実的な表現でもある。能力の性質を用いた最大限の性能を発揮する権能。

 その現象が成立してしまえば、太刀打ちは難しいだろう。

 攻撃特化型、身体強化型、領域環境型、化身具現型などが存在するが、その全てに共通するのが『自分』=『能力』を周囲に定着させ、既存の法則を塗り替える。


 その世界系の範囲内であれば、理不尽なくらい自分の事象を行使し、互角であるならば相手を凌駕することが出来るため、その現象、光景を“自分の世界”と設定されたのだ。


 そしてレイム・レギレスの世界は攻撃特化型である。身体の背面から無数に外界へのパス、魔力路の管が際限なく伸びる形は木の枝のようにパスは分かれ、それは樹木のように、全体像は翼のようにも見える。


 まだ隙間だらけだが、そこに花が咲き誇るように無数の魔法陣が展開される。

 その管に膨大な魔力が流れ、糸ほどだった太さは樹の幹ほどに膨れ、各魔法陣に黒い光が灯る。


「クソ……ん、なるほど……」


 突発的であったが混乱はなく、納得できる状況だ。


「世界には世界で――〈紅蓮の世界〉」


 そう唱えた瞬間、既存の魔力が全方位に広がり、エマの周辺は静寂と化した。闘技場はおろか、浮遊島は力の余波により消滅している。


 そしてエマを中心とした巨大な真紅の魔法陣が展開される。広大であるそれは巨大な魔力路であり、瞬く間に炎が立ち昇る。

 これこそが領域環境型の世界系である。

 自身の法則で満たされた範囲内であれば、相手より優位に立つ性能が代表的であり、踏み入った相手には相手の法則を強制させられる。攻撃特化型であるレイムに対して何かの特化ではないが、その世界を用いれば、攻撃と防御など疑似的な万能さを誇るため、防御に徹して対処することも可能だ。


「世界、解放――」


 無数の魔法陣に十分に充填された魔力が所有者の掛け声に応じて解放される。

 その威力は世界に匹敵するもの、世界系でなければエマであろうと良くて瀕死の状態で済むことが出来るだろう。

 世界系以外でも防御なんて無意味も同然、遍くように上空に打ち上げられた無数の黒い光弾は対象者に降り注ぐだろう。攻撃特化型の脅威はもちろん攻撃の威力であり、それが連続ではなく、ずっと、永遠に続く。

 一時的な防御であろうと対象が朽ち果てるまでか、レイムの魔力が尽きるまで光は射出し続けるだろう。


「太陽を示せ――」


 次の瞬間、エマの頭上に炎が集約されて極小の恒星、極小の太陽が顕現する。太陽から溢れる淡い光が天蓋のように幕を下ろした。


 そして激突する。

 標的であるエマに向かって無数の黒い光弾、脅威が飛来する。一撃一撃が地面を抉り、一時間も経たずに世界の大半を更地することは可能なほどの破壊力が降り注ぐ。

 極小の太陽から幕を下ろした防御壁は一時的であるが、レイムの〈破壊の世界〉と拮抗するが、耐久力の源である極小の太陽は突っつかれたようにボコボコと内部から空気が抜け始める。


「チッ……タイプ違いでこんなにも……でも、防御に徹して、耐えれば――」


 当然の如くエマには作戦が存在している。内側は熱で満たされ、他の生物が踏み入れば、発火する環境となっている。

 極小の太陽が燃料であるため、エマも自身の魔力が尽きるまで防御壁の耐久は続く。


 そのためこの拮抗は完全な消耗戦になる。

 どちらの魔力か、維持が切れた瞬間、この状況は変貌するだろう。

 それまでお互いの身体から膨大な魔力が流れ続けているため、如何に大魔王であろうと世界系を披露した回数は片手で数えるほどだろうし、レイムはまだ二回目なため、維持すること自体が困難だろう。


「――最初の一手」


 エマは太陽剣を強く握り、身体の方へ引く。


「消耗戦なんて私は望まない――」


 レイムは武器を持ち替える。


 そう、二人は消耗戦なんていう華のない戦いなんて望まないのだ。

 それはレイムとエマの共通点である。二人は自分の世界の内側で神器にも意識を集中させ、其れを解放する。


「紅蓮、そして真紅の究極、虚空に浮かぶただ一つ光――その炎を持って生命を促し、また死を運ぶ――それは象徴であり、循環であり、源である――それはどの恒星にも劣らず、それは輝き続けるだろう――」


 そして刀身に激しく光と炎が灯る。

 その光は他の領域からでも観測できるほどの煌めきが聖剣、いや《太陽剣ソルリウス》から発生する。


「ぐッ、なに――」


 一番、近くにいるであろうレイムは思わず、目を閉じて手を前にかざす。

 だが、魔力感知でエマの頭上の極小の太陽と同等の魔力量がエマの地点から発生していることは知覚したため、レイムも神器を解放する。


「その道を示せ、我が力――」


 そして全ての事象は帰結する。


「――――《金色に輝く帰結を齎(インテンスノヴァ・)す至高の星剣(ソルリウス)》ッ!!!」


 上に掲げ、そしてレイムの方へ振り下ろす。

 黄金の刀身に限界まで内包された光熱が斬撃となった自身の防御壁を破り、上空へ奔流の如く流れる。

 ゴゴゴゴッと高密度の光熱は空間を裂く。


 それと同時にレイムは虚空を蹴り、前に進み、その手に握る漆黒の槍を解放する。


「貫け、槍よ――――《万物を貫く行動(シヴシュラウト)の行動の神槍(・ルークラガ)》ッ!!!」


 少女は槍を投擲した。

 だが、それは驚異的なものであり、レイムの手から離れた槍は瞬時に加速し、レイムに太陽剣の斬撃が届く前にエマとの距離を詰め、両者の攻撃は同時に両者に直撃した。


「ッ――――」


 声が出ない、いや出る前に痛み、というか異変を感じた。

 黒い何かが見えた瞬間、自分の右胸が押されていとも簡単に貫かれた。


 それを認識した時にやっと激しい痛みが脳に伝わって視界と意識が歪む。

 な、なんだろう……なぜか、急に……。

 レイムが放った《破神槍ルークラガ》は標的を必ず貫く性質を有していたため、ただの防御では概念的行動を防ぐことはできない。


 そのことに気付くが、もう遅かった。




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