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40話 破壊神レイム VS 大魔王エマ②



 レイムは吹っ飛ばされた意識を掴み取り、次の光星を剣で叩き、軌道を逸らす。

 次々と飛来する〈真紅の光星〉を迎撃する。内部に存在する魔力量の反応から魔力感知ですぐに捉えることはできるが、その感知で追いつけない飛行速度と数で正確さに必ずズレが生じてしまう。


「クソッ――」


 今のレイムに迎撃という対処法で攻略するのは不可能であり、この当たらない状況に少しイラつき始める。

 迎撃という対処法が無理なら、他の対策を考えるだけだ。

 必ず迫ってくるなら、ゼロ距離から対処すればいい。


「フンッ!!」


 構え、素手で光星に触れて僅かな亀裂から【破壊】を流し込み、粉砕させる。


「ぐあッ!!」


 その複数の光星によって畳み掛けられる。背丈以上の大きさ、質量なら巨岩に相当するものと魔王の魔力で強化された物理攻撃でレイムは傷を負い、血を流す。

 このままではいけない。

 対処法を……今までとは違う、画期的なものを……。


「あぁぁぁぁぁッ!!!」


 全方位に【破壊】を放出して複数の光星を巻き添えにして防壁を展開する。

 相手の魔力を利用したものだが、完全には利用できるわけじゃなく、相手の魔力を利用しているからこそ、逆の逆として利用される可能性が高い。


 レイムとエマはお互いを見合わせる。


 いずれにせよこのままでは埒が明かない。

 自分の魔力保有量、そしてエマの魔力保有量は完全に把握はしていないが、両者ともに規格外の域ではあるが、長期戦は不安要素だらけだ。

 短期決戦でも手札を全て見せていない状況で突っ込んで勝利を収めることが出来るのか、その手札を切らせないために、圧倒的な火力を用いて追い込む。


 後者はレイムの専売特許、いや力押しというそれしか持ち合わせていない戦法。


「どっちにしろ、ヤバい……」


 自分が危機であることには変わりはない。

 ふと、頭が痛む。

 ズキンズキンと自分が傷つけられる力を受け、流石に鈍痛が走っている。魔力が存在する限り、自然治癒はされているが、レイムは回復する方法を持ち合わせていないため、致命傷を受け、意識を失えばそこで終わりだ。


 自分より多い魔力出力、それを突破して本体に辿り着くには今の絨毯爆撃と合わせた突破力のある方法が……。


「槍……槍はどうか?」


 自分自身に問う。

 主武器である《破壊剣ルークレム》と同じように振るうことのできる武器種の中で『剣』の次に最も自分に合うものは『槍』じゃないだろうか。


「ベルーナが使うような大鎌もいいけど、やっぱり~……」


 レイムは自分の手に付着した血痕を見つめる。

 考えている時間も惜しい、後悔なんてしたくないし、もう答えは一つしかない。


「やるしか、ない――」


 レイムは意識を全身に集中させる。

 同時に体内から魔力を放出させ、防壁内を満たす。

 一時的に剣を宙に置き、自分の体内から流れ出でる血液を操り、象る。自分の血液を媒介、元として【破壊】で形を作る。

 神である少女が作る武器、それは紛れもない神器となる。


 それは全身の漆黒に染められた槍。

 それは命じられた行動に従い、敵を穿つとされる最強の神が持つに相応しい主武器に次ぐ代物だ。


 その名は主によって命名される。


「《破神槍はしんそうルークラガ》――」


 構築理念としては突破することに全振りしており、硬いものに苦戦しないようにするためのものだ。

 完成した《破神槍ルークラガ》を軽く振るい、片手で回す。

 自分で作成した武器だからか、最初の頃の《破壊剣ルークレム》の扱いよりすぐに慣れる。

 バチバチと雷撃のような性質も併せ持ち、主の手から離れ、浮遊する。


「行け――ルークラガッ!!」


 標的はエマ・ラピリオン。

 主より命令された漆黒の槍はレイムが張った防御壁を貫き、外へ飛び出す。

 その速度はレイムの瞬間火力やエマの〈真紅の光星〉等の速度を凌駕する脅威的な性能となっている。


「何ッ神器を容易く――」


 神器なんてものを神であろうとポンポン作れるものではない。

 もちろん、複数の神器を有することは絶対にないとは言わないが、神器というものは『能力』に由来している。

 正確に表すなら、能力と直結、その神器の起源が能力に由来している関係性なら、複数神器を持つことは難しい。

 その関係性である神器は能力の手腕と呼べる役割を担い、能力を出力する一つの器官。

 一言で表すなら、重要なものだ。


 だからこそ『神器』から通じる出力口も重要であるため、基本的に重要である『神器』の数は一つに限定される。

 それが能力の法則である。


「まさかの例外なんて――」


 流石のエマでも相手が破壊神であろうと能力の法則の例外要素をもっているなんて想定はしていなかった。

 例外なんて想定しても意味がないだろうと考えていたが、それが目の前で実現された今、エマの気分は高揚した。


「フハハハハハハッ!!! それでこそ我が敵だあああああッ!!!」


 強者だからこその喜び。

 長年、停滞していた感情が紅蓮のように燃え上がり、喜びに浸っている。


「――〈真紅の孵化〉」


 そして眼前に顕現した手に卵型の炎体を手に取り、握り潰す。

 エマが持つ【紅蓮】の最大の特徴が、瞬間火力に特化している点だろうか。魔力と爆発の特徴を持つ【紅蓮】を利用することで少ない魔力で威力を跳ね上げている。

 レイムのような工程は一手間であり、ただ手で握り、投げるような域となっているが、敢えて溜め込んだ力に対して爆発力を起こす。


 それは一種の権能として仕切られた攻撃。

 その瞬間、大爆発が発生した。

 無論、それを成した魔力は膨大であり、闘技場、浮遊島、その空域、レイムの場所まで到達する。


 これこそが溜め技、それは卵の孵化を表し、産声のような大爆発が広域の存在を消し飛ばす広域殲滅攻撃。

 更に一点からの起爆ではなく、最初の一点の回りには他に五点の起爆となる魔力の塊が存在し、最初の爆発で広がり、それが一秒も経たずに連鎖的に爆発を起こすことで遠くに離れた存在であろうと軽傷じゃすまない。


 それはレイムであっても例外ではなく、動く暇も与えない大爆発に巻き込まれた。


 やっぱり戦闘経験の差が物を言うようだ。


 だが、それを覆そうとレイムは突き進むという選択を取った。




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