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27話 天使四騎士②



「ぐおッ――」


 閃光のアルゲリオン、残光のヴァルセ、明星のシリーデの三人を相手にジュウロウは標的を定めた。

 最初に狙ったのは残光のヴァルセであり、隙など与えない剣撃により押し、崩れたところを足蹴りで地面に倒し、その腹部を踏む。

 種族の中でも頑丈であるから大丈夫だと何となく、だがその蹴りでヴァルセは液体を口から噴射して動かなくなった。


 ビクビクと動いていることから気絶である。安心したもの束の間であり、上空から光線が降るが、それを避け、剣で防ぐ。


「この戦況だと……」


 その瞬間、ドコォォォンッと後方で衝撃が走る。

 一瞬、目を向けるとレイムが【破壊】を放っていたが、その瞬間、天使四騎士の陽烈のヴァージンの攻撃によって宮殿の方へ吹っ飛んだ。


「ッ!!」


 身体が反射で助けようとするが、レイムの強さを考えたら、大丈夫だと信じる。

 だがすぐに駆けつけるために、後の二人に尽力する。

 閃光のアルゲリオンと明星のシリーデは連携でジュウロウを仕留めようとしているため、自分の刀が届くアルゲリオンを先に、と思ったが、遠距離が嫌に正確性があるためシリーデに標的を変更する。


「ふッ――」


 ジュウロウの猛攻を耐えて確実に体力が減っているアルゲリオンだが、まだジュウロウに立ち向かう。

 本人の感情も表れているのか、分からないが不撓不屈の精神は同じく戦う者として評価に値する。


「だが、それが敵になると面倒に変わるな!!」


 アルゲリオンの剣撃を受け流し、蹴りを入れた。

 森林へと吹っ飛んだ隙に明星のシリーデに斬撃を飛ばす。


「何ッ――」


 ただの斬撃ではないのは明白だ。

 その真っ白な色合いから魔力感知で気づいた時には斬られているほどの驚異的な速度がジュウロウの力の一端だ。

 天才の域に到達した我流の剣技、戦闘において天武の才。

 標的の一刀両断を避け、明星のシリーデの片翼が断ち切られる。


「ぐッ……あああ!!」


 一瞬にして地へと落ちるが、杖をジュウロウに向けて光弾を放つ。

 それらを容易に交わし、シリーデを刀身の棟で気絶させる。


「嘘、だろ……」


 閃光のアルゲリオンは呟いた。

 明星のシリーデは遠距離を得意とする騎士であり、光魔法を用いたそれは天使最高の魔法威力を誇るが、そんな実力を持つ彼女を一瞬で戦闘不能にした。


 しかもジュウロウの実力を表すように闇討ちなどではなく、正面から突撃してこの結果となっている。


「さあ、最後はお前だ!!」


「ふん、いいぜ。やってやるよ!!!」


 多分、負けるだろうがアルゲリオンは問答無用でジュウロウに立ち向かった。






 なにか……熱い。なにか……痛い。

 ズキンッズキンッと頭に響いている。


「いたッ……」


 まるで自分の形を思い出すように……麻痺している身体の感覚を徐々に取り戻していく。


「あの一撃でこれか……」


 陽烈のヴァージンは本気の一撃をレイムに与えたが、ここまで通用するとは本人は思っていなかったようだ。陽烈のヴァージンの力は光であるが、激しく燃え上がる炎の性質を兼ね備えている【陽烈】を宿している。


「ううッ……」


 そしてレイムの意識が浮上した。

 頭が痛くて熱い。

 陽烈のヴァージンの一撃で宮殿にまで突っ込み、数枚の壁を貫通して瓦礫に埋もれてしまった。


 そしてレイムは起き上がる。

 瓦礫がゴロゴロと落ち、身体の状態を確認しながら、立ち上がる。手足は何ともなく、血が流れているのは頭部のみ、擦り傷はあるが、どれも軽傷だ。


「それにしては……マジか」


 もし、あの攻撃を受けたのが天使なら、死んでいただろう。

 だが、相手は『神』だ。存在の階位が違うからか、神である少女に切り傷しか負わないということはそれだけの実力差が存在する。

 さっきの攻撃は初見だったから、そうゆう理由で納得できる。

 恐らくあの特性を事前にレイムが理解していたのなら、今のレイム・レギレスなら対処できただろう。


 自分の頭が熱いため、手を触れる。


 その掌には赤いものがべったりとついている。

 自分がダメージを負った、痛みを感じたことで戦いを、自分が生きていることを改めて実感する。

 その手を握り、床に転がった《破壊剣ルークレム》を手に取った。


「さぁ、来い……もう、分かったから」


 その瞬間、少女から魔力が放出されて再度〈破壊の翼〉を展開した。痛みと意識の不安定さから乱暴で野性的な側面が表に出ている。

 言ってしまえば、素だ。

 破壊神としての基礎、基盤とも言える不変的なものであるが、レイム・レギレスという構成要素としては全体の割合は薄く、戦いの中で力押しという乱暴なものに引っ張られて出てくるのだ。


 少女が受けた傷は瞬く間に傷を治していく。


 そして少女の身体に内包している膨大な魔力量を最大出力で一瞬ながら放出したが、それでも少女の外見の印象が粉砕されるほどの魔力量の圧がヴァージンに圧し掛かる。


「ッ――――」


 規格外とはこのことだろう。

 通常の魔力は肉眼で捉えられず魔力感知で捉える力の流れ、魔法や能力を通して炎、氷などの現象に変換する力の源。


 だがレイム・レギレスが内包している魔力量は歴代の神々を優に超え、一時的な最大出力で放出された魔力量は力の塊と化し、巨大な質量となる。

 その色は黒一色であり、ただの魔力量だけで影響を与え、余波だけでも致命傷になる。

 その脅威は魔力で抑えることも可能だが、その場合は技量より力押しが勝敗を決める。

 圧倒的な魔力量に対処するには同じように圧倒的な魔力量で対抗するか、範囲外まで逃亡するか。


「狂え、破壊の黒――」


 レイムを中心にして渦巻いている魔力に【破壊】が接続され、黒かったそれがドス黒くなり、次の瞬間、宮殿がいとも簡単に粉砕した。


「ぐおッあああああああああッ――――」


 陽烈のヴァージンは吹っ飛ばされて瓦礫とともに渦へと飲み込まれる。


 それは間接的に崩壊を招く。

 少女の感情に呼応してその激しさは増していき、呆気なく宮殿が跡形もなく崩壊し、浮遊島にも激震が及び、亀裂が入る。


 その漆黒の渦は浮遊島を囲む天使たちの目に刻まれ、それらは強い恐怖を抱き、改めて破壊神の強さを思い知ったが、状況は悪化することとなった。




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