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26話 天使四騎士①



 神々が神界へ帰還し、ジュウロウは目の前の敵、天使四騎士の閃光のアルゲリオンと残光のヴァルセの二人を同時に相手取る。

 純白の剣撃が光速に届く勢いで二人に遍く。

 端的に言い表すなら、それは対等なものではなく、完全に手が出せずに一方的に押されるだけだった。


「ぐッ……こいつ、マジか――」


「おい、ヴァルセ!!」


 一方的に押されて態勢を立て直そうと反射的によそ見をしてしまった瞬間、その隙を疲れて腹に蹴りが炸裂する。

 ジュウロウは人間であるが、その身体能力は天使の最高戦力と互角か、それ以上に引き上がっている理由は無駄のない魔力操作もあるが、その技術は経験の賜物である。


「ふんッ!!」


 両手で刀を振り下ろす。

 大きな動作だが、隙のないものに残されたアルゲリオンも防御に徹することしかできずに吹っ飛ばされた。


「ふぅ~……まあああだな」


 この一方的な力押しで長い道の中間まで戻れただろうが、相変わらず兵士に囲まれている。

 それに増援が来た。


「あれは……」


 その全てが杖を持っているということは術師軍だ。

 空を飛べる天使にとっては近接戦闘より重要部隊であり、飛べない相手には一方的に絨毯爆撃を浴びせることで簡単に敵に勝利することができる。


 その筆頭にいるのは明星のシリーデと呼ばれる女だ。


「レイム様、殺しは?」


「ん~……ダメと言ったら?」


 殺傷してしまったら、破壊神がより一層悪い印象を持たれてしまうことを防いでいるが、この状況ではやむを得ないのかもしれない。


 そして殺傷なしという縛りをすれば、自身の力が攻撃特化であるレイムは攻撃が剣術のみになってしまい、流石に戦況は押されてしまう。


「流石に難しいかと……しょうがないのでは?」


「うん。でも殺しはなしで」


 ジュウロウはその提案を受け入れた瞬間、上空から爆撃を受けたが、咄嗟に反応したジュウロウの無の力によって無効化を施す。


「術師軍と遊撃部隊……なるほど、威勢が良いことは褒めてやろう」


「ジュウロウ、私もやる。飛んでいる奴は任せて」


 レイムは黒い魔法陣を複数、展開して術師軍に放つ。

 黒い光線を回避するが、魔法陣の方向を移動することで標的を撃墜させる。

 流石、遠距離の技術も成長していることにジュウロウは関心するが、その攻撃の中で猛スピードで【破壊】を回避してレイムに迫る。


「あれは……ッ――」


 それを対処しようとしたが、立ち上がったアルゲリオンに阻止された。


「レイム様――」


 それはレイムにも追えた。

 自分の武器《破壊剣ルークレム》を抜き、何かと衝突する。


「陽烈のヴァージンだ。覚悟しろ、破壊神!!」


 その姿は幼い少年、レイムと同じか少し歳上の容姿、とげとげな髪型、天使四騎士に共通している純白の鎧、槍を装備した天使にして最後の天使四騎士の一人。


「いいよ。相手になる――」


 天使の活動領域、その端であろうとすぐに増援が来たということは全員が『破壊神討伐』、正確にはレイム・レギレスを討伐することに賛同しているのだろう。


 この行動の速さだと他の領域、上層部の者にこの考えを持つ者がいれば、すぐにでも破壊の領域レイズレイドに軍勢が差し向けられるだろう。

 現に標的であるレイムに問答無用で攻撃を加えているということは政治的なもの戦力などは関係なしに行動しているということだ。

 相手がそうなら、レイム側が穏便に済ませようとしても無駄になる。


「ふッ――」


 自分の背中からパスを繋いだ魔法陣で近接遠隔ともに攻撃をするが、天使の種族的特徴である翼を用いた身体速度で回避されてしまう。

 流石の天使四騎士の一人、陽烈のヴァージンは正確に相手であるレイムを見定めているのか、閃光のアルゲリオンや残光のヴァルセのように突っ込んでくることはないため、遠距離に専念しているが当たることはない。


「なら――」


 なら、近づくしかないと〈破壊の翼〉を背中に顕現した。

 それにはヴァージンも表情を動かさずとも、その漆黒の両翼に凝視しているのをレイムは見逃さない。

 レイムという『神』を相手にしていることは分かっており、相手が相手、だからこその慎重さなのだろう。


 そんな様子を見ると完全な洗脳とは別の力を働いているようだ。

 レイムは剣を構え、標的を定める。

 自分で殺さないと言ったため、即死になるような場所である首、心臓部を避け、動けなくするのなら四肢の切断、と考えるが、まずは武器を握る両手に狙いを定めた。


 そして踏み出した。

 軽く地面を蹴り、身体を前に、その後は翼と魔力が後押しすることで一瞬にして間合いを詰める。


 だが天使という翼を用いた速度に慣れている者、天使四騎士の一人である陽烈のヴァージンはギリギリであったが、反応し、振り下ろされた剣を槍の柄で防ぐ。

 お互い身体の大きさに目が行ってしまうが、お互い魔力によって基礎能力を底上げしている。


「ふんッ!!」


 超近距離では槍のリーチの長さが仇となり、剣が有利に立つ。

 だからこそ、槍を活かせる距離を保つ必要があり、それを補助する術をヴァージンは持っていた。


「え、熱ッ――」


 突如としてヴァージンが持つ槍、いや身体さえも光、いや激しく燃え上がる光に包まれた。


「へぇ~、光の炎を纏って戦うの。しかも」


「そうさ。俺は何ともないが、相手には熱傷を与える。これが俺の二つ名の由来だ」


 恐らく、通常の炎と違う。

 赤い色ではなく黄色、激しく燃え上がるのは火力が高いのか、光の要素を備えているなら、余計に炎と思ってかかるのは危ない。


「なるほどね。でも、問題じゃない!!」


 左手を前に出し、重複した魔法陣を展開する。意味不明だが、当たれば終わりであろうと考えて高火力の正面に【破壊】を放つ。


 ドゴォォォッと空気、音が重く響く。


 だが、次の瞬間、想像した答えと違った。


 それこそが光速、と思えるような不可解な動きでレイムの視界に現れてその槍を突き出した。


「ッ――――」


 ザクリ、その音だけが自分の耳に届く音の中でなによりも大きかった。

 まるで景色に殴られたように意図もしない速さで身体は流れ、そして強い衝撃が何度も全身に走った。


 ヤバッ――


 思考なんて巡らせることが出来なかったが、たったそれだけを溢してレイムの意識は暗闇に落とされた。




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