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25話 討伐開戦



「では、閃光のアルゲリオン。神の意思に従い、『破壊神討伐』を決行します!!」


 その声を聞いた天使四騎士の一人、アルゲリオンが腰にある聖剣を抜刀する。


「ちょ、アルゲリオン!!」


「神の意思に従い、『破壊神討伐』を決行します!!」


 その瞬間、彼の姿が消えた。

 いや、そう見えるほどの速度で三代目光の神リリア・レギレスを通り過ぎ、すぐ後ろにいる標的を穿つ。


 ガンッと聖剣が弾かれ、その攻撃は一人の男によって阻止された。

 最破最強の男にして破壊神の右腕。


「おい、何をしている?」


 主の前に立つジュウロウはアルゲリオンに問い掛ける。


「邪魔だ。人間……」


「おい、神様に言われたことが守れねぇのか。まさかそうゆう奴か?」


「いいえ。アルゲリオンは四騎士の中でも真面目な人です。こんなことをするはずが――」


 と必死なリリアが答えるが、どう見てもその言葉と反対の行動を取っているのは明らかだ。

 そんなジュウロウの考えはアルゲリオンの攻撃によって遮られる。

 ガンッガンッと古い宮殿内に響き、ジュウロウは普通に光の剣撃を受け流す。


「なら、この行動を見るに?」


「操られている。多分、あの声に……」


 レイムの推測は正しい。


「アルゲリオン、やめなさい!!」


 リリアが叫ぶが、それで剣撃が止むことはない。


「こいつ、レイム様だけを狙っているな!!」


 主であるレイムの前に立ちはだかるジュウロウが受け流している剣撃の向きが不自然なことからアルゲリオンは自分ではなく、レイムに向いているのだ。

 一見、不自然だが、標的の前に護衛などが立ちはだかった状況、適切な行動は“護衛を倒す”か“護衛を避ける”などがあり、アルゲリオンの行動は後者に当てはめれば、不自然ではないが、それでも自然ではない。


 まるで意思が消失したように感じられる。


「ど、どうしたら……」


「お前は神界に戻って状況を把握しろ。今、世界がどうなっているのか!!」


「それじゃあ、君達は!!」


「私達は大丈夫です。領域に戻ることが出来れば、安全だから」


「でも、それじゃあ!!」


「それでは本当に世界大戦が勃発するかもしれないです。領域に立てこもれば、武力無しでこちらの都合が悪くなります」


 神々やレイムの願いである良い印象を持つために『世界大戦』というものを再び、起こさないためには戦いの規模を大きくしたくはない。

 レイムの案である安全な領域に閉じこもれば、レイム当人は最高戦力に守られるが、異常な行動を起こす者達の襲撃を退け、殲滅しても世界の形が破壊神によって破壊されたという悪い印象しか残らない。


 なら、どうするべきか……。


「あの声、あの力……初めて見た。多分、世界全土に及んでいる」


「操られている奴等が世界各地にいる可能性も……」


「まず、ここを抜け出さないと天使が……」


「ですね。ここで囲まれたら、嫌でも武力行使が必要になってきます。まずは地上へ」


「レイムッ!!」


「おい、これは……」


 奥から騒ぎを聞いて奥からレイス、シゼルが現れる。


「レイス、シゼル。二人は各領域に移動して事態の収拾を!! 正確なことは不明だけど、あの声で皆が!!」


 リリア・レギレスの言葉とアルゲリオンの行動で何となく状況を理解した。


「分かりました。自分の役目を果たします!!」


「了解です」


 もう既に天使と天使四騎士の一人から攻められているが、戦力としては不安要素はないため、二人は即座に領域へ転移する。


「レイム、気を付けてね」


「うん。ありがとう、ママ」


 ただ分かっている。

 レイム・レギレスは自分の力で自身を守ることが出来るが、レイス・レギレスは母である以上、この言葉は不要であっても言わなければいけないもの。


 だからこそレイムとレイスはお互い安心できる。

 それこそ家族の絆なのだ。


「では、レイム様……我々はどうしますか?」


「地上に戻る。悪い状況になると思うけど、領域に戻る」


「了解です。まずは……」


 ジュウロウは命令を聞き入れ、目の前の敵、アルゲリオンに集中する。


 その時、ジュウロウは天使の兵士達の背後から空中に漂う光、いや影にジュウロウは気付き、アルゲリオンを力で押し、新たな光を弾く。


「おっとぉ?」


「我が主に触れられるとでも、思っているのか?」


「中々だな? 俺の残光を正確に見切るなんてな」


 荒い言動、その強さから天使四騎士の閃光、残光、明星、陽烈の中で一人と特徴が一致している。


「……ということは、お前が残光のヴァルセか」


 残光のヴァルセ。

 二つ名の由来として彼の斬撃が残光のようだからである。閃光のアルゲリオンのように剣撃、動作の速度が 光の速さに最も近い、速度特化と似ているが、残光のヴァルセはジュウロウから見たら、騙しか錯覚を用いた戦法だ。

 斬撃というものは刀身に魔力を乗せて剣を振った直後に放たれるものだが、ヴァルセのものは先出しと言った方がいいだろう。

 文字通り、斬撃の道を淡い光で示し、そこにヴァルセが斬撃を入れる。


 何故、そんな戦い方をするのか。


「初見殺しのつもりなのだろうか、自分を凄腕と自負する奴なら、すぐに見破る手品、いや手品以下だ」


「チッ、お前がジュウロウ・ハリアートか。人間のくせして人間最強とか歌っていやがる奴は」


「俺は別にそのように名乗ったつもりはないんだが……ただお前等より強いことは確かだ」


「は、天使四騎士の二人を相手にして、何を――」


「――なら、早くやろうか。主が通る道に邪魔なんだよ」


 その鋭い目、眼圧で全てに通用するだろう純白の瞳は本気を表していた。




 あの声は世界中に轟いた。

 世界に対する権能、それは世界の声と呼称されるものだ。


「今の声……報告を」


『敵兵、領域内外ともに目視、魔力感知に反応なし』


「じゃあ……これは」


 外で指揮官のワーレスト、レイン、ビーがもしもの時に備えて待機している。


「大権能……って言った方がいいか。世界そのものに干渉したんだろう。それが出来るのは考えて最高位に近い存在だろうね。二代目か……レオン・レギレスか」


 世界の異常を察知したレジナインが即座に現れた。


「『破壊神討伐』と聞いて私や君達が何ともないことを考えると、『破壊神討伐』に賛同する者達は、あの言葉に強制感化を受けたのだろう。他の神々の忠誠を誓い、本当のことを知らない者達が含まれるからその数は断然、こちらを上回るだろう」


「じゃあ、レイム様は!!」


「神界より下だが、そこは天使の活動範囲……戦力はたったの二人だが、あのジュウロウ・ハリアートが敗北するなんてことはあり得ないだろう」


「それはそうだな。それでも心配だ」


「今は無事に帰ってくるのを待つしかないだろう。一つ言えるのは、何かが、始まったことだ」




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