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23話 氷結亡国



 神々の起源は世界を創造した六人の神が自分の領域と神々、種族を創造したことが該当する。

 なら、魔王の起源はなんなのか。

 歴史では常闇の大地から発生した、とされているが、事実は違った。六人とはまた違った存在である神が最古の魔王である五人を生み出した。


 その理由は生み出された最古の魔王でも分からない。

 いや、聞けるはずがない……最古の魔王であっても創造主である人物に逆らえるものではなかった。


 全てが冷たいものとなった大地。

 今は亡き、世界一まで栄えた大国が一瞬にして氷結に包まれ、氷塊と化した。中心にそびえ立つ国の象徴である城も、その周囲に広がる城下町、そもそも豊かな大地さえ、死の寸前まで追いつめた。


 正確に被害は氷結に包まれただけだったため、解凍すれば、まだ助かる命はあったと思うが、最古の魔王の一角にして元凶である第二位“氷結の魔王”レミナス・グラシアスはその大地を自分の支配領域としたのだ。

 強大な力を持つ存在が居座ったため、領域外の事は二の次であった神々も手を出せなかった。


 だが世界大戦である『レギリオン大戦』が終結した後、神々達は世界の脅威、自分達が治めた時代に起こった不始末を取り除こうとした。


 その一つである領域外の脅威として“氷結の魔王”レミナス・グラシアスを討伐することにし、その戦力として三代目光の神リリア・レギレスと炎の神ジルフィス・レギレスが主戦力としたものとなった。

 その戦いは流石、最古の魔王の中で第二位の実力者であるレミナスは三代目の中でも強者である光の神と炎の神を相手取り、討伐は厳しいものとなった。


「あれは、流石にな~」


 今や氷結の城となった中心の部屋を自室としており、自身がこの場に強制的に留まることとなった原因を思い返して、呟いた。

 それでもギリギリだったようだ。

 戦闘狂、レミナスも力押しを得意としているが長年の戦いで得た戦闘能力は神々と同等とされる。

 三代目のリーダー格である光の神リリア・レギレス、世界大戦以前に第一位“大魔王”が神界の侵略時に大魔王と戦い、退いた実績を持つ実力者、炎の神ジルフィス・レギレスと戦った。

 レミナスが警戒していたのはもちろん自身より格上である第一位“大魔王”と戦い、彼女の心臓を貫き、殺すことはなかったが結果的にあの大魔王を退けたジルフィスだ。

 大魔王が破れた原因として彼女の戦闘技術がジルフィスに対して劣っていたことと、そして大きな原因として二人の力が被っていた、ということが挙げられる。


 だが、完全に一致しているわけではなく、ジルフィスが宿した炎系統の能力【煉獄】は偶然にも魔王に対して特攻を有していた。

 更に炎系統の能力を有しているため、大魔王の炎に多少の耐性を有しており、技術で押し切ることに成功した。


 端的に言うなら、炎と水のような形ではなく炎と炎で相性が悪かった。分かりやすく捉えるなら、魔王に対しての勇者と表せば、分かりやすいだろう。


「さあ……始めようか!!」


 光と炎の封印は強力だった。

 だが、もうその効力は封印されたレミナスの魔力の抵抗によって崩れつつあり、もう封印としての効力は残っていない。


 だが、効力が発生した頃は力を一切、行使できなかったため封印の弱体を多少なりとも受けている。

 それを今から回復させる。

 キングサイズのベッド、素材は氷であるが布のような感触であるそこから立ち上がり、突き刺さっている槍、《氷結槍フリーゼン》を掴み、力を集中させる。


 そして自分の力の名を告げる。


「――『氷結神冠ギヴルニア』」


 その瞬間、この大陸に存在する【氷結】が振動する。

 ここに存在する【氷結】がレミナスから発生し、彼女が意識を通せば、意思があるように【氷結】は呼応する。


 これは一つのきっかけだ。

 今まで保存のつもりではなかったが、自身の脅威の見せしめとして維持していたただの氷塊となった大国を跡形もなく、手中に収める。

 その範囲は驚異的であり、最古の魔王の一人にして第二位“氷結の魔王”として脅威を再度、世界に知らしめる。

 超広域に自身の魔力を広げ、精密に操作する技量を持つ。


 ゴゴゴゴゴッ、と氷結の造形が奔流となって中心部へ吸い込まれていく。


「こ、これは……」


 その状況をソージ、ソピア、サリアは幻想のように捉えていた。

 今まで見てきた状況、これこそが世界最強の一角を担う存在の力、そして今から討伐に向かっている標的の力の一端。

 吹雪が止み、大気を染める冷気、氷塊が流れていく。


 これが最古の魔王、上位の力なのだろう。


「行こう!!」


 強大な魔力を感知して意外と近いことがわかってソージ達は走り出す。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


 ゴゴゴッ――


「あぁ、大丈夫だ。自分達のためにレイムのためにも」


 ゴゴゴッ――


「そうだな。負けられないな」


 ゴゴゴッ――


「……あぁ――」


 遠くから近づいてくる地鳴り、その正体が目の前で明かされて三人は疾走を止めた。

 巨大な氷の柱が出現している。


「これは……領域の主張か?」


 柱の役割は領域の境界を示すもので扱われる。

 或いは単なる目印のつもりかもしれないが、かの最古の魔王の一角がそんな用途で自身の力を行使するとは思えない。

 なら、もう氷結の魔王の領域の直前なのだろう。


 その事実が確かと言わんばかりに強い冷気が肌に触れる。


「生きて帰るぞ――」


 それに二人は頷き、氷結の領域へと勇者一行は足を踏み入れた。




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