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20話 天へ上る



 レイムと付き添い役のジュウロウが城を出る。


「貴様が五代目破壊神レイム・レギレスか……」


 そう、レイムに言葉をぶつけたのは天使四騎士の一人、閃光のアルゲリオンだった。


「おい、舐めた口を叩くんじゃねぇ」


 即座にジュウロウが強く注意するが、彼らからしたらレイム・レギレス、破壊神は裏切りの神と呼ばれているため、他の神のような敬意など示さないのだろう。

 だが破壊神に仕えるジュウロウからしたら、納得は出来ない。


「いいよ、別に……」


「そうですか……」


 状況が状況なため、ジュウロウはすぐに身を引く。


 しかしラエルが送り届けた後にすぐに往復してきたのだろうか。

 恐らく、手間はかかるが光の神と破壊神が共に移送するのは絵面的な問題があるのだろう。裏切りの神と仲良くなんて自分の種族か勘違いするし、何より自分らの神と裏切りの神を共に移送なんてできないのだろう。


「ふん、お前は知っているぞ。ジュウロウ・ハリアート、だな。人間にしては武力に優れているようだが……」


「……あぁ、そうだな――」


 沸点が低い、短気がジュウロウの悪い点だが、冷静に物事を見極める能力、戦闘での頼りがいは配下の中でも随一であり、最破筆頭にして最破最強の男であることは間違いない。


 そして今の状況、レイム側が挑発すれば、印象が悪くなってくるのは明白だ。


「で、何だ? 斬ってほしいなら、潔く言ってくれれば、俺は喜んで刀を抜くが、そうじゃないんだったら、さっさとしろ。あまりレイム様を待たせるんじゃねぇよ」


 それを再確認するジュウロウは怒りを飲み込み、冷静に自分を保つが言い返さないとは言っていない。


「ぐッ……はぁ、雑魚は相変わらずだな。さぁ、こっちだ」


 だがあちらも無暗に手を出せないのだろうか、完璧な煽りで冷静からすぐに感情が揺さぶられたアルゲリオンは腰の剣に手を伸ばす。

 が、すぐに冷静を取り戻して事を進める。


「……」


 レイムは喋らず、周りを見る。

 初めて天使を見たが、人間と殆ど異なる点などなく、背中から生える白い翼のみだったことに少し残念に思う。

 ただ彼らが住まう天空国ヘブンは実は楽しみだ。

 天空は天使がいるため、登ったことはなく、本の情報では空に浮かぶ島に文明を築いているという話だ。


 だから緊張や不安は確かに存在するが、それを誤魔化すため冷静になるために楽しみも心に乗せて天使の移送用の乗り物に案内された。

 白を基調とした小さな船のようだが、それを上へと引っ張るヘブンピックがいる乗り物に二人は乗る。


「はぁ……空気が張りつめてる」


「そうですね。まぁ、いざとなれば、お任せください。ですが問題は……移送先の事態」


「うん。啓示の内容は破壊神討伐なら、破壊神が有利であろう領域から遠ざける案なのかもしれないし、どっちにしろ。死ぬわけにはいかない――」


 今の不安要素は沢山あるが、ただそれだけを心に刻んで天使の軍勢に身を任せた。

 天空に住まう天使だからか、移動は素早いものだった。

 漆黒の大地からすぐに雲の高さまで登り、それを超えて青空へと飛び込んだ。


「確か、天空に浮かぶ島に住んでいるんだよね?」


「そうです。天空に住まうことから神に最も近い種族とされ、あの高貴な種族であるエルフ以上に高貴であると謳っている奴等です。人間と同じく光の神によって創造されたみたいですが、似たところは二本足で歩くくらいでしょうか」


「まぁ、ムカつくのは分からなくはないよ」


「申し訳ありません。はぁ、少し頭を冷やします」


「ううん。私のために怒ってくれているんでしょ。でも歴史を見れば、私の力を恐れることはしょうがないのかもしれないけど……」


「二代目という神々は器が広いとは思いましたが、勘違いだったのでしょうか」


「……かも、しれない」


 歴史を見れば、破壊神の印象は地に落ちている。

 事実、世界大戦が終結した本当の理由を知る者は王家レギレスの中でも当時を知っている者だけだ。

 故、破壊神討伐に反対するものは総合的に少ないのは確かだし、反対するのは王家の関係者くらいだ。


 もし、争いに発展する場合、レイム達の戦力なら勝敗の問題はないが、レイムの願いである良い印象をする、という行いとは正反対な状況になってしまう。

 だからこの事態を少しはマシな方向に直すことが今のレイムの役目だ。


 そして二人を乗せた天使の軍勢は天空へ到達し、巨大な浮遊島へと到着した。良い印象を持たせるためにも、ただ黙ってレイムとジュウロウは従う。

 外に出て、二人は無意識に息を吸うと地上とは違うものであることに驚きつつ促される方向へ歩く。


 浮遊島。

 天空に漂う魔力によって浮いているとされ、そこには翼を持つ種族だけが住まい、地上と同様に自然に溢れている。

 古い石畳、またそれがどれだけの歴史なのかを物語っている。

 破壊神の移送ということは天使の兵士達は知らされているのだろうか、左右の端には兵士達が並んでいる。


 レイムとジュウロウは並んで歩き、顔を見合わせる。


「見たところここは居住区じゃないみたいだな?」


 まぁ、破壊神を民が住む場所へのうのうと連れてくるなんてことはしないだろう。天使は生存圏内の手入れするのか、知らないがあまり使われていないと推測する。

 石畳と左右に古びた白柱。

 あの乗り物の小さな窓から全貌は見えなかったが、天使の人口は人間と同じであるため生存圏の規模は首都エレクシア以上の規模だろう。

 周囲にも居住区のようなものがないとするとここはそれとは離れている場所だろう。


 予想するなら、破壊神討伐のために神が有利となる領域から離し、多くの範囲に種族が生きるスペースである地上ではなく、上空へ移り、自分達にも危険が及ばないような場所へと移送した。


 そして天空、浮遊島に移動して初めての建物が目に入る。

 それは古き宮殿、という外観だ。

 案の定、使われていなさそうな感じに古びている。入り口の二枚扉を開かれるとあっという間に埃の匂いに包まれた。

 その内観は埃などなかったが、それでも匂いは消えていないところを推察すると使われていない場所を使用したのだろう。


 だがその建物が残っているということは天使にとって重要な場所ではないか、と考えたがただ取り壊すことをしなかっただけかもしれない。

 神々に近い種族であるからか、装飾品は偽物ではなさそうだ。


 そして奥の扉が開かれた。


「え……」


 奥のそこは広い空間、中心には円卓があり、そこに座る人物は意外な存在達だった。

 金色の長髪の女性、この場の中で一番の美貌を持つ人物。存在の雰囲気からして中身は相当の時間を生きていることから三代目光の神であると確信する。


 そう、円卓を奥の半分を囲む者達は二代目に次ぐ権力を持つ三代目光の神、炎の神が二人、風の神、水の神、闇の神の六人。残りに四代目の六人を合わせた十一人が参加している。


 この時点で話し合いであることが確定した。


「来ましたね。さあ、座りなさい。レイム・レギレス――」


 そして神々だけの会議が始まる。




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