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189話 邪悪襲撃②

 レイム達は振動する『奈落監獄アビス・プリズン』へ走る。監獄の要である封印の結界が壊れたことで不具合が起き、物理的な揺れが発生している。


「この監獄の要……結界もそうですが、最下層にある『奈落玉座』は結界を成立させている核。恐らくですが、結界が破壊された際に本体にも影響が――」


「なるほどな……」


 それは納得できるものだった。

 そもそも結界とはどの世界であろうとその原理や意味は同じもの。その効果は守護や隠蔽、領域を確立させることと様々だが、展開された結界は展開した者でなければ、安全に解除ができる。

 しかし展開した者以外が結界を攻略するなら、それは『破壊』しか方法はない。結界を壊せば、展開した者か、結界を保っていた物に反動が来る。

 それを理解しているなら、それ事、破壊するか、狂わせるかは破壊する際に引き起こすことができるだろう。


「なら、その本体を正常に戻せば結界は再び展開するのか?」


「はい。もし、破られたなら、とミレイヴァム様が記したマニュアルには記載されていますので。ですが……」


「それを知らない、なんてことはあり得ないか。そもそも『上位存在』が壊せる結界を壊した時点でそれを念頭に置いていないわけがないか……それでもレイム様の意向に従って囚人たちの対処をする」


「うん。みんな行こう!!」


 現状の状況は不利でしかないが、六人で固まれば生存確率は高まる。そもそも囚人が溢れ、善の勢力が少ない以上、手分けなんてことは愚かな考えはしない。

 だが、その愚かな考えに至らずとも、その結果になることを『悪』は望み、そう仕掛ける。

 彼らの行動は全て『計画』によって従っている。

 それが全て正しいと信じ、異常が発生しようと『計画』に従い、粛々と対処するのみ。

 言いなりと言ってしまえば、そうだ。

 しかしその方法で悪の組織『混沌神殿カオス・システム』は敵対組織たちに尻尾を掴ませず、目にするのは彼らの痕跡か、影しか手がかりは掴ませない。

 邪魔する余地、介入する余地があり得るのはそゆう内容の『計悪』の時だ。


 その全ては――宇宙を『悪』で染めるためなのだ。


 ガシャンッ――――!!!


「ん……?」


 大きな門だった境目を跨ごうとした瞬間、監獄の蓋の役割をしている城の上の壁がレイムの前に落ちた。

 さっきの揺れはただの地層の動きで生じたものではなく、監獄を成り立たせている効果が崩壊する音でもあった。

 その結果、城下町、表面上の入り口である大きな門の全てが崩れ落ち、そびえ立つものは崩れかかった城以外はない。

 この状況で城の壁が落ちてくることは何の不思議もないが、レイムと城の距離は随分と離れているはずだが、まるで小さな石を蹴り飛ばしたように城の壁がこちらまで飛んできた事実は誰が見ても不思議だろう。


 ここまで飛んできた城壁の石材は砕け、ステンドグラスの窓は色とりどりの破片となってレイムの前で散らばる。

 それを見て、飛んできた方向をレイムは目を移す。

 気のせいなんかじゃない、殺意とは違うが、強い視線が自分に向けられていることを自覚し、倒壊した城壁の穴から一人の少女が身を乗り出しているのを視界に入れる。


 監獄の結界は破壊され、封印の効果は絶たれた時――第五層『終焉渓谷・レベルX』の独房の中に鎖で繋がれていた褐色の少女は封印の効果が消えたことを認識し、立ち上がる。

 この独房はどのような存在であろうと首、胴体、四肢に該当する部分を拘束され、鎖に繋がれるため行動範囲としては立ち上がることのみでアステールはただ空間の中心に鎮座するだけだった。


 だが、直立したアステールは一歩、踏み出した。

 次の瞬間、少女に繋がれていた六本の鎖が粉々に砕け散り、SSSランク惑星級の存在であるアステール・フロムウェルは歩き出す。

 それと同時に忌々しい扉が消し去り、彼女に似た褐色の少年と対峙する。


「姉貴、大丈夫?」


彼はジステール・フロムウェル、アステールの実弟である。


「うん、何にも……。確かに封印に関してはいいものだったよ、ミレイヴァム。まぁ、もうどうでもいいし、全て計画通りだ――」


 自分の独房前で独り言を残したアステールは地面を蹴り、禍々しい魔力を纏った流星のように層を突き破り、上空に浮上する。

 監獄の蓋、城の上へと上がり、内装を見て回る。

 半分、興味があったが、どうでもいいことがすぐに勝ってしまうもので落胆する。


「まぁ、住む場所じゃないから当然か……はぁ~、で、私は何をするの?」


 強引な移動方法だったが、弟であるジステールは遅れることなく姉の後ろをついて歩いている。


「最重要人物であるレイム・レギレスの同時進行計画完了時間まで足止めすることだ」


「ふぅん、つまりは殺さなければいいってことね」


「うん。そうゆうことだな。俺達はレイム・レギレス以外の足止めだ」


「了解。こっちに来ないでよ?」


「あぁ、踏み入ったら死にそうになるからな」


 そう言い、二人は別れる。

 姉弟が離れていた期間は決して長いものではなく、数年前の出来事だが投獄されたアステールの時間認識は事実より長く感じていたが、その感情は抑えている。


「ふふ……まぁ、出ることなんて決まっていたけど、本当に退屈だったわ」


 背伸びをしながら、ステンドグラスの窓から外を見て、標的を視界に入れた瞬間、力という力が自分の奥底から溢れてきた。

 今まで封印されていたいたからか、意外と監獄が退屈だったからか、何でもいいが、力と同じく『喜び』が湧き出てくる。


「くふふ……さて、暴れるかあッ!!!」


 今まで我慢していたことを解禁した喜び、閉じ込められていた自分の存在を曝け出し、目の前の壁を蹴り、戦いの火蓋を自分で切り落とす。


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