186話 万星通貨オールスター
分厚い扉、檻の入り口が開かれた。
その内部は空虚の部屋、無駄に広いドーム状の空間、中心に日の光に似た明かりが差し込む、禍々しい色と力を発する鎖で手足、胴体、首を繋がれているのはレイムと同じような少女だった。
「やあほお、珍しいお客さんだね?」
激戦の末に投獄されたからか、服の大半は破けて、汚れた肌が露わになっている。
銀色の長髪、褐色の肌、右目は金色、左目が紫色のオッドアイ、黒の紫の混ざった鋭い角が額から二本。食事は与えられていないのか、細身の少女は更に痩せている。
「彼女がアステール・フロムウェルです」
「食事とかは、ないよね?」
「はい。レイム様もお分かりかと思いますが、SSSランクともなると食事が絶たれようと魔力のみで生き永らえますので、ここはいわば、無間地獄ですね」
「ふぅん、で、通貨について教えてくれる?」
「ふふん、正式名称は万星通貨オールスターっていう星型、今はキューブ型とか、カード型もあるっけ? 億とか兆を保有するために軽量化っていう奴がされているの」
「ほんと?」
まさか囚人の言ったことを素直に信じるレイムではないため、クロノスに振り向き、事実確認を行う。
「はい。今のところ事実です。ちゃんと説明責任を果たしてください。詳細まで」
「分かってるってぇ。確か製作者は宇宙研究組織『ジーニアライネンス』の一人で、確かぁ、ゲル、ゲルン…………?」
「“万物詩人”ゲルン・ロールザルク。彼は科学者でありながら、芸術や美学を重視している人物ですね。既に存在する万物から芸術を表し、宇宙の構造を絵と論理で提唱し、万星通貨を創造した人物ですね」
「そうそうそれそれ。その万星通貨オールスターはね、五芒星を立体にしたもので万物に宿る純粋なエネルギーを詰めた結晶なんだよ。価値としては大きさ、内包するエネルギー密度で変わってきて、突き詰めると黄金と遜色ないの。一桁だと小石サイズなんだけど、掌サイズになると五桁、その一回り大きくて黄金になると九桁とか。カード型って言ってもそこにエネルギーがあるわけじゃなくて、大元の保管するに適している巨大なキューブと繋がっているから、でもそれを手に入れれば、大元に辿り着くから」
とペラペラと説明する。
見かけによらず、それか治安の悪い世界で大暴れしていたから、トレジャーハンターという職業柄か、お金の事については詳しいようだ。
「持ち運びなら九桁が限界かな? それ以上になると物理的にも動かすのは大変になるけど、国家とかならそんなことは気にしないよね~」
世間話が続くが、ジュウロウが口を挟む。
「純粋なエネルギーか……偽造の可能は?」
「それは現状ではあり得ないです」
「ん、その理由は?」
「はい。単純に万星通貨オールスターの内部構造を模倣することが不可能だからです」
「そうそう!! 九桁の通貨、高いほどの実物を見ればわかるけど、創造者ゲルン・ロールザルクが考案した黄金比を重ねた形によって複製は不可能だし、たしか実際にやった奴がいたけど、諦めたって聞いたな」
「まぁ、そうゆう話もありますね。それにそもそも純粋なエネルギーを結晶内に込める方法は『上位存在』ならまだしもその工程を実行できても」
「万星通貨のようにはならない、か……なるほどな。知れた通貨でありながら、その実物そのものは未知という価値もあるのか」
クロノスは捕捉し、ジュウロウは納得する。
「はい。それと万星通貨の起源はゲルン・ロールザルク当人が平和連邦に新たな一般通貨を提案したことが始まりですが、連邦でも製造方法は知りません」
「そうそう。製造方法は本人しか知らないけど、製造場所は『ジーニアライネンス』の本拠地だろうけど……私はお金そのものに興味はないからね。確かに純粋なエネルギーの価値はあるけど、私が求めるのはお宝、珍しいものだからね」
「そうゆう意味では万星通貨オールスターは未知の部分はあるが、一般に出回っている状態だから、興味はないか」
その通貨は砕けば、霧散する。
この宇宙に満ちるエネルギーの中でも『純粋』なエネルギーを詰め込み、誰にも偽造することは不可能な形に仕上げた通貨。
今では一般的な価値の測りは万星通貨で行われ、未知でありながら、星海のように人々の手に渡っている。
創造者である天才の一人“万物詩人”ゲルン・ロールザルクはこの結果を予想して万星通貨オールスターと名付けたのだろう。
「そうそう!! だから物流の情報を手に入れては奪ってきたのに~。あぁ、過去を思い出すと悔しさが溢れてくる……あぁ、そういえば、私にかかっていた懸賞金約100億は有意義に使っているの?」
そう、アステールは俯いていた顔を上げてクロノスに問う。
「正確には懸賞金188億は懸賞金の中でも最大限、その理由はあなたが平和連邦に与えた被害が過去最大だから、そんなあなたを捕縛したことで連邦が掲示していた指名手配書はなくなり、文字通り、悩みの種が減ったわけ、そこであの膨大な金を貰うほどレイルンは人間が出来ていない、つまり貰ってはいません」
「……はぁ、そうですか。そんなところだと思ったぁ。戦闘でもつまらないなら、そうだよね~」
アステールは胡坐をかき、膝に肘を置き、頬杖をつく。
「それではレイム様、事情聴取を始めましょう。まずは事実確認から、私が質問をしますので、事実を能力で引き出してください」
「うん。お安い御用だよ」
そして事情聴取が始まる。
「――あなたは、悪の組織の一員であり、首脳部の一人であると?」
「うん、その通りだよ」
【“面白い”と“先が気になる”と思ったら、『ブックマーク』や『☆☆☆☆☆の評価』や『感想』をしてくれるとモチベーションアップに繋がるので何卒よろしくお願いします!!!】




