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178話 隊長会議②

 白色を基調とした会議室の温度が確かに上がっていく。

 現状の憤りから燃え盛る感情をため込んでいる第九部隊『焔烈特攻隊』の隊長“焔烈神将”アルド・レルブレムが立ち上がり、目の前にある机に足を上げて、卓上に乗る。

 彼の能力が、感情の起伏に応じて起動し、異様な熱を放つ。

 もう冷静さの一歩手前だろうか、不満を爆発させ、怒りに満ちた状態で自分の癇に障った存在がいる時点で……。


 そしてもう一人、第七部隊『暗衣交善隊』の隊長“暗衣神将”テルシャ・オーリウスも同時に立ち上がり、卓上で武器を顕現させて撃ち合う――が、それはアルドの熱気に対抗してか、冷気が一瞬にして会議室を支配し、席を立ち上がったアルドとテルシャの『動き』を凍らせた。


「ちょっとちょっと……少し、落ち着きなよ。こんなこと時間の無駄だよ」


 二人を止めたのは第六部隊『水景抜刀隊』の隊長“水景神将”スウレン・アスタレウスは左手で水色の刀を抜刀し、構えるのではなく、ただ上に向けている。

 その氷のような刀から冷気がアルドとテルシャの二人に漂っている。抜刀のみで同じ隊長の動きを止めたスウレンの実力高さを物語っている。


「二人共、頭を冷やしなさい。ここで大人しく席に座らないなら、僕が直々に追い出すけど……更に忠告するなら、重要な役割を持つ最高戦力の『実力部隊』の隊長であり、個人で最高位の戦闘能力を保有する者の証である精鋭称号『神威神将しんいしんしょう』を与えられた人材だからって、謹慎処分を受けないと高を括っているわけじゃないよね?」


 第六部隊・隊長スウレンからの優しさは消え去り、冷酷さだけが声にはあった。

 どんな優しい彼でも部下ならともかく高い地位である隊長に君臨する人物が二度目で言うことを聞かなければ、組織の首脳部に次ぐ権限を持つ者として相応しくなくなってしまう。

 彼ら、十人の隊長は最高戦力『実力部隊』の顔であり、年齢や加入時期によって先輩後輩はあるが、『実力部隊』の隊長は全員が同僚であるため、部下より同僚である隊長に厳しいのは全員がそうだろう。


「『邪悪』との戦闘、最前線で戦う十の部隊が欠けることは基本的に許されない。が、隊長当人の態度次第では首脳部に申請し、処分が下されるだろう。それが良いのなら、スウレンの静止を振り切ればいいさ」


 またしても冷たく状況を悪化するような諭し方だが、これは第五部隊・隊長サティア・ルヴァンクスなりの忠告だ。

 だが、それでもアルドの熱は冷えることはない。


「よし、なら――こちらが状況を変えよう。いいね、レイルン?」


「あぁ、そうだな。早く状況を進めよう」


 そう言い、第一部隊・隊長と第二部隊・隊長が揃って会議室の入り口に目をやる。

 その目線に釣られて、全員が会議室の入り口、大きな二枚扉の方を見つめる。


 そして無言の合図か、タイミング良く、会議室の扉が開かれた。

 第一部隊『全軍統括隊』所属の第二席“時間神将”クロノス・アイギスを先頭に三人が代表して会議室に入室する。


 その人物の中で一人の存在に全員が釘付けになる。

 見た目もそうだが、能力が神冠クラスに達しているからこそ、その存在の『魂』の価値を、格を、正確ではないだろうが、垣間見るだろう。


「先日、第十部隊が『邪悪』を観測した地点に出動しまして、そこで邂逅した勢力『無限の星』と出会って――」


 そう言うクロノスを差し置いて、自己紹介という話を聞いていたレイムは一歩、前に出て大きく息を吸って――


「――私はレイム・レギレスです。新人として頑張ります!!!」


 レイム・レギレスが好む表現、それは至ってシンプルに、単純に。

 良い側面も悪い側面もありながら、彼女の意思を伝えるのに完璧に近い形こそが、シンプルイズベストなのだ。

 正にその伝達方法で会議室にいた皆の意識が一瞬、固まってしまう彼らは自分達の目の前にいる存在に――ただただ驚愕していた。


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